とある有名な自動車評論家がスカイラインを評して放った名言に、「コートを着てラグビーをしているような感じ」というものがあるが、そうした何か倒錯したまでの硬派なイメージは1981年にデビューした 6代目となるR30スカイラインで定着したものではないかという気がする。もちろんそれ以前にも、GT-BやGT-Rといった筋金入りの硬派なモデルが存在はしたが、車種全体のイメージがそれに左右されるほどではなかったのではないか。それだけ、ホットモデル不在の期間を経てRSがデビューした時のインパクトは大きかったのだろう。ターボ追加、鉄仮面へデザイン変更、そしてインタークーラーターボもと、GT-Rの時にはなかった時間差アップデート攻撃も効果的であった。だからこそ、ハイソカー路線へと転じた7thへの拒否反応はあれだけ強いものになったのだろう。
LSのボディにバンダイのシャシーを組んだ2ドアRS
そんなR30スカイラインは模型業界でも人気の的となり、数多くのプラモメーカーがキットをリリースした。ただし当時は、1/24でエンジンまで再現したものはアオシマの後期型を除くと存在しなかった。1/20スケールに目を転じると、バンダイが4ドアのRSをリリースしており、これが前期RSのエンジン再現キットとしては唯一(NA、ターボの2種あるが)である。この頃は1/20スケールの乗用車キットは終焉に向かいつつあり、同スケールでのキット化は他にLSの2ドア(前期/後期あり。のち金型を引き継いだアリイから発売)のみであった。
バンダイ1/20についてはボディがシャープさに欠けるので、同スケールのLSのボディと組み合わせ、幅広感を解消すれば最高の2ドアRSが作れるのではないか! という訳で完成したのが、ご覧の1/20スケール2ドアRSのフル再現モデルである。前期型RSのターボ、2ドアHTという全く同じモデルが、奇しくも(?)異なるスケールで揃い踏みとなった。手前が1/24スケールだが、こうして並べると、1/20スケールの迫力、豊かさが感じ取れることだろう。バンダイのセダンRSからシャシー丸ごと移植したおかげで、エンジンルームもご覧の通りの仕上がり。バンダイ1/20モデルは末期にはその再現度も簡素なものとなっていたが、R30はその例外で、省略されがちな補器までしっかりパーツ化されている。
ちなみに、フロントバンバーの鏡文字「TURBO」ステッカーが涙物だが、これはルームミラー越しに後続車を見た時に、「TURBO」の文字が正しく見えるから採用されたのだとか。元々、ヨーロッパの高性能車に採用されたもので、その理由としては高性能車に道を譲らせる目的があったとのこと。
上は制作過程の一部。制作にあたっては、カタログや雑誌など資料本を用意、掲載の図面や写真などを1/20スケールに換算して拡大コピーすることからスタートする。ボディ幅の比較。バンダイはサイドモールが別付けなのでドアラインでボディ幅を測ると82mm、同様LSを計ると85mm。同じ1/20スケールだが、LSは3mmも幅が広いため、中央を切断して詰めることにする。バンダイとLSのパーツ混成となったインテリア。メーターパネルはバンダイのキットに付属のデカールを使用した。LSのキットはインテリアについてはなかなかのリアル志向で、後席内張り下部のベンチレーターや、後席から開けるためのドア開閉レバーなどもしっかりモールドされている。LSボディ(白)にバンダイのシャシー(赤)を合わせるため、シャシー先端のツメを切り取り逆さに向けて接着。リア後端はボディ側に角材を接着しハメ合わせ、前車軸を少し前方にずらしてホイールベースを調整。前輪トレッドはホイール軸受け部側を1mm削って、ギリギリ収めた。ディテールについてはギャラリーをご覧いただきたい。