アウディ

いま乗るならアナタならどちら? エンジンか? モーターか? 番外編:アウディe-tron GT×BMW M760Li×ベントレー ベンテイガハイブリッド

いまはさまざまなハイパワーユニットが選べる時代 クルマはパワーこそすべてか!?

クルマ好きはEVやハイブリッド車を敬遠しがち。だけど、パワーユニットに関わらずハイパワーで楽しいモデルならクルマ好きも納得するはず。ここではBEV、ガソリン、ハイブリッドのハイパワー車を集めそれぞれの実力を検証してみる。

アウディ・e-tron GT:感動的に快適なのに圧倒的な速さが楽しめる

本誌主催の「EV:LIFE」は、東京と神戸で開催している展示提案イベントだ。多くの集客があり、EVに対する関心は確実に高くなっている。ただ、課題はある。急速充電設備を増やすとか、普通充電を集合住宅で可能にするとか。もちろん、電力そのものの安定供給も重要課題だ。一方で、EVは話題に事欠かない。続々と最新モデルが投入され、軽自動車のサクラとekクロスEVは好調な受注実績を重ねている。しかも、欧州のEVは高性能化と走行距離で激戦を展開中だ。

アウディe-tronGTは、まさに激戦真っ只中のモデルだ。前後のモーターはシステム出力530psを発揮し、走行距離はフル充電で534km(WLTCモード)に達する。だが、EVとしての高性能ぶりを強調しないあたりがいかにもアウディらしい。試乗車はオプションのe-tronスポーツサウンドを装備していたので走行モードがダイナミックなら加速時に電子音が生成されるが、コンフォートなら電子音は控えめ、エフィシェンシーでは生成されない。ところが、それぞれの違いはわずかだ。ダイナミックの電子音はエンジン音と明らかに異なるが、EVならではの新たな世界観を確立するまでには至っていない。

むしろ、あえてそうしているのだろう。エンジン車に乗り続けてきたとしても、違和感なしに受け入れられるはずだ。それでいて、数値上の性能がそのまま速さとして実感できる。ローンチコントロールを作動させない限り、モーターが瞬時に最大トルクを発揮することが可能でもそれがカタマリで飛び出したりはしない。リアのモーターには2速ミッションが組み合わされるので、過激にならない範囲で鋭い出足と伸びのある加速を両立させている。

【写真27枚】「体感としてはエンジン車の高性能モデルを走らせているよう」 

EVらしさといえば、静粛性の高さも特長。走行モードがエフィシェンシーなら、モーターは音を発することがない。空力性能を重視するアウディらしく、高速域を含め風切り音は最小限となる。ただ、タイヤが発するビョーッという感じの空洞共鳴音(タイヤ内の空気振動)が気になることもある。

さらに、低重心化により基本性能が向上することもEVならではといえる。だが、体感としてはエンジン車の高性能モデルを走らせているようだ。走行モードがダイナミックなら、ダンパーの減衰力が高めの領域で維持され適度に引き締まった設定となる。ステアリング操作に対する応答性にダイレクト感があり、ボディの姿勢変化が抑え込まれている。

e-tronGTの走りはエンジン車とは異なる。だが、EVの特徴を最大限に活用しているかといえばそうでもない。エンジン車の価値も巧みに受け継いでいる。

◆AUDI e-tron GT QUATTRO SPECIFICATION
■全長×全幅×全高=4,990×1,965×1,415mm

■ホイールベース=2,900mm

■車両重量=2,280kg

■モーター最高出力=530ps(390kW)

■ モーター最大トルク=640Nm(65.3kg-m)

■トランスミッション=1速固定式

■サスペンション(F:R)=ウイッシュボーン:ウイッシュボーン

■ブレーキ(F:R)=ディスク:ディスク

■タイヤサイズ(F:R)=225/55R19:275/45R19

■車両本体価格(税込)=13,990,000円

■問い合わせ先=アウディジャパン 0120-598-106

ANOTHER CHOICE:最新モデルはシステム出力1020ps「テスラ・モデルS」
テスラのモデルSは2012年のデビューから現在まで絶え間ない進化を続け取材が追いつかないほどだ。最新モデルはフェイスリフトを実施しインテリアも一新。装備は上部がカットされたヨークステアリングと2種のモニターが目立つだけで。高性能版のラピッドはシステム出力1,020psを発揮する世界最速EVだ。

BMW・M760Li xDrive:エンジン車と言ってもV型12気筒は別モノだ。

すでに、7代目の新型7シリーズが発表されている。国内でも、オンラインストア上で限定モデルの先行販売を開始。ただ、納車は’22年の第4四半期が予定されているので現行型の販売も継続中だ。本来なら、現行型の注目度が急降下しかねない。だが、新型はいまのところマイルドハイブリッド化した3L 直列6気筒ターボを積む740iとディーゼルターボの740dが投入されるだけ。4.4LV型8気筒ツインターボ搭載モデルや6.6LV型12気筒ツインターボ搭載モデルの発表はない。本国の資料でも直列6気筒ターボが基本で、モーターの組み合わせにより性能を上乗せするプラグインハイブリッドになりそうだ。

ということは、7シリーズで走行機能の電動化をしていないエンジン車は現行型が最後ということになりそうだ。特に、6.6LのV型12気筒ツインターボを積むM760LixDriveはそもそも希少なモデルだけになおさらだ。やはり、エンジン車と一言でくくってもV型12気筒モデルは別モノだった。最高出力は609ps、最大トルクは’19年に実施したマイナーチェンジを経て50Nmが上乗せされ850Nmを発揮する。

V型12気筒といっても、1気筒あたりの排気量は550ccとなり、直列4気筒と6気筒の500ccと大差はない。つまり、爆発エネルギーの大きさも同様ということ。そのため、アクセルを踏み込んだ瞬間から爆発エネルギーの威力を知らしめる鼓動音が聞こえてくる。だが、ほかのシリンダー形式と決定的に異なるのは爆発間隔だ。V型12気筒はクランクシャフトが60度回転するごとに爆発が繰り返される。直列6気筒は120度ごと、直列4気筒は180度ごとになる。V型12気筒は、爆発間隔が短いので低回転域でも鼓動音の密度が高くなるのだ。

【写真27枚】アクセルを踏み込んだ瞬間から聞こえる爆発エネルギーの鼓動音 

だからといって、アクセルを踏み続けた時に鼓動音が連続して高回転域で単調になることはない。鼓動音が連続しタコメーターの針が6,000rpmから始まるゼブラゾーンを切り裂いても、爆発を繰り返している感覚は維持される。モーターではこうした力強さを際立たせるリアルな音による臨場感は表現できない。モーターでも電子音によりむしろ表現は自由自在になるが、たとえEVの世界観として刺激的であってもエンジン音のリアルさは望みようがない。なおかつ、エンジンはシリンダー形式ごとに鼓動音が異なるので自分の好みで選択する楽しさもある。

さらに、フラッグシップだけありアクセルを一定に保っていれば静粛性はEVと同レベル。xDriveにより強大なエンジン性能は4輪に最適配分されるので、サスペンションを余計に引き締める必要がなくハイエンドサルーンにふさわしい乗り心地も実現される。

◆BMW M760Li xDrive SPECIFICATION
■全長×全幅×全高=5,265×1,900×1,485mm

■ホイールベース=3,210mm

■車両重量=2,320kg

■エンジン種類/排気量=V12DOHC48V+ターボ/6,591cc

■最高出力=609ps(448kW)/5,500rpm

■ 最大トルク=850Nm(86.7kg-m)/1,550-5,000rpm

■トランスミッション=8速AT

■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:インテグラルリンク

■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク

■タイヤサイズ(F:R)=245/40R20:275/35R20

■車両本体価格(税込)=26,650,000円

■問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437

ANOTHER CHOICE:最大トルクはM760用に50Nm上乗せ「ロールス・ロイス・ファントム」
2030年までにロールスロイスは全モデルをEV化すると発表。2023年には初のEVとしてスペクターが投入される。だが2022年にマイナーチェンジを実施したフラッグシップサルーンのファントムは6.75LのV型12気筒ツインターボエンジンを搭載。M760用と同系だがブランドにふさわしいトルクを重視した仕様となる。

ベントレー・BENTAYGA HYBRID:PHEVは、充電設備があれば理想の選択である。

素質としての高い静粛性がEV走行時に際立ってくる
ベントレーといえば、プレミアム系を超えるラグジュアリー系ブランドの名門だ。また、’30年までに全モデルをEVにするという電動化戦略も発表済みだ。その戦略は、すでに動き始めている。SUVのベンテイガは、3LのV型6気筒ターボとモーターを組み合わせ外部電源による充電が可能なベントレー初のPHEVを追加。まさに、今回試乗したベンテイガハイブリッドがラインナップの最新モデルだ。フル充電なら、欧州基準のNECdモードで約50kmのEV走行が可能。そもそも、走行モードはEVドライブがデフォルトになる。

それだけに、見事なまでの静粛性が実現されている。ベントレーは、ベンテイガに限らずエンジン車でも静粛性が高い。たとえば、トンネル内ではタイヤが発するロードノイズやパターンノイズがボディを通じてではなく外部に放射されつつ反射し聞こえてくるもの。だが、ベンテイガにはそれがなくEVの特徴が最大限に発揮されるのだ。バッテリーの充電量が減ってくると走行モードはハイブリッドになるが、発進時はEVとしての機能が維持される。モニター上の充電量がゼロレベルでもハイブリッドとしての役割が保たれることは、他の多くのPHEVと同様だ。

【写真27枚】2030年までに全モデルをEVにするという、ベントレーの電動化戦略車 

しかも、発進後に30km/hあたりでエンジンが始動するもののタコメーターを見たから気づくだけ。静粛性が高いだけに、エンジン音は耳に届かない。当然、エンジンの始動を意識させる振動とも無縁でいられる。さらに、バッテリーの充電量が確保されていればアクセルを踏み込むとモーターがエンジンをアシストするブースターとして機能する。システム出力は449psに達し、4LのV型8気筒ツインターボを積むモデルが発揮する550psには及ばないが刺激的な速さを楽しめる。

エンジンそのものは、同じPHEVでもハイエンドサルーンのフライングスパーが積む2.9LのV型6気筒ツインターボとは異なるがフル加速すれば6,000rpmオーバーまで一気に吹け上がる。そんな場面でも、通常は滑らかに動くサスペンションがフラットな姿勢を維持する。直進時には、ステアリングが中立で自然に落ち着き安定性の高さが確かめられることも好印象だ。

EVとエンジン車の機能を兼ね備えるPHEVは、家庭や保管場所に充電設備があれば理想の選択といえる。EVほどバッテリー容量が大きくないだけに、ベンテイガの場合は200Vの普通充電で2時間半ほどで0〜100%に達する。市場の評価も高く、2021年の販売では5台に1台がハイブリッドだったという。

◆BENTLEY BENTAYGA HYBRID SPECIFICATION
■全長×全幅×全高=5,125×2,010×1,710mm

■ホイールベース=2,995mm

■車両重量=2,648kg

■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+ターボ+モーター/2,995cc

■最高出力=449ps(330kW)/-rpm

■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/-rpm

■モーター最高出力=128ps(94kW)/-rpm

■モーター最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/-rpm

■トランスミッション=8速AT

■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク

■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク

■タイヤサイズ(F:R)=285/45R21:285/45R21

■車両本体価格(税込)=22,800,000円

■問い合わせ先=ベントレーモーターズジャパン 0120-97-7797

ANOTHER CHOICE:素質が高い直列6気筒エンジンを搭載「ランドローバー・レンジローバーPHEV」
ランドローバーも電動化戦略を積極的に展開中だ。PHEVはイヴォークとディスカバリーに加え超フラッシュサーフェスなデザインの5代目となる新型レンジローバーにも投入。エンジンは自社開発となる3Lの直列6気筒ターボを搭載。モーターとの組み合わせによりシステム出力は440ps仕様と510ps仕様が用意される。

リポート=萩原秀輝 フォト=宮越孝政 report : H.Hagihara photo : T.Miyakoshi
LE VOLANT web編集部

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