遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという、かつて小社WEBサイトでひっそり!? 連載していた伝説の連載、その進化版がこの『ボクらのヤングタイマー列伝』です。今回はフランス車にしようと思いついた編集担当の大好物、MVSヴェンチュリが登場! しかもあの遠藤イヅルが初めて描いたという、今月もマニアック方面へフルスイングですヨ!!
ボクらのヤングタイマー列伝第26回『フォード・シエラ』の記事はコチラから
ボクらにずっと何十年も刷りこまれてきたMVSヴェンチュリの車名は全体の一部なのです。えー!
PRVのV6ターボエンジンをミッドシップに搭載した1980年代~1990年代のフランス製スポーツカー『MVSヴェンチュリ』。
豪華なインテリアを持つ快適なGTカー的な性格を有しつつも、ポルシェやフェラーリにも負けないスポーツカーを作らんとした意欲作でした。直線的なデザインは今見ても古さを感じさせず、ましてやデビューが1980年代半ばだったことは驚きです。本誌読者の皆さまならそういった大枠はご存知でしょうが、一方で多分に知られていないことも多いのではないか、とも思います。そこでひとまず、MVSヴェンチュリの概略から記しま……いややめます(笑)。とても誌幅に収まりそうにないので、意外と知られてなさそうなことを挙げますね。まず『MVS』というメーカー名が『Manufacture de Voitures de Sport』、つまり”スポーツカー製造会社”という素っ気ない意味だったこと、そしてその社名ものちに車名そのまんまの『ヴェンチュリ』になったため、ボクらにずっと何十年も刷りこまれてきたMVSヴェンチュリという車名を持つ個体は全体の一部でしかなかったのです。えー!
そしてヴェンチュリはバリエーションも豊富でしたが、開閉式の屋根を備えたオープンモデルが当初は『トランスコップ』という車名だったこと、生産台数が数十台しかないこと、屋根もソフトトップではなくスチールの格納式でいわゆる”CC”だったことなど、興味がつきません。クローズドのクーペにもノーマルの200ps仕様以外に260psにパワーアップした『260』というモデルがありました。ヴェンチュリの生涯で同じように見えるエクステリアも、実は途中で前後バンパーデザインが変更されていたりします。
そしてさらに1995年、外装を大変更して滑らかなデザインに。おまけに車名も『アトランティーク』に改称……えー! 最終的にはV6エンジンもPRVからPSAの3リッター24Vエンジンになって310psを得ています。
……と、ヴェンチュリというクルマについて”そうだったんだ!”という内容を書いて(描いて)来ました。調べれば調べるほど知らないことだらけ(涙)。生産台数がアトランティークを含めても20年間で700 台ほどしかないことなどは、ヴェンチュリが少なくともクルマファンの中ではメジャーな車種だっただけにちょっとビックリでした。ちなみに、同じフランスで希少車に分類されるアルピーヌA610でさえも約800台が生産されています。
そしてヴェンチュリはその後EVメーカーに転身して現在も盛業中。最近注目の新時代レース、フォーミュラE にもワークスチームとして参戦し、ヴェンチュリを生んだ会社の命脈は今なお生き続けているのでした。
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。