ラグジャリーブランドのSUVとしては“初モノ”であったベントレー・ベンテイガ。今度はホイールベースの拡張によるリムジン化や、独自のウェルネス機能の装備で極上の快適性を手に入れたベンテイガEWB(エクステンデッド・ホイールベース)をリリース。ハイエンドSUVのプレゼンスは、さらなる高みへと昇華されたと言えるだろう。
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ハイエンドSUVの常識を再び塗り替えてみせる
ベンテイガEWBの写真を見て「おや?」と思われた読者も少なくないだろう。
EWBはエクステンデッド・ホイールベースの頭文字。つまりはロングホイールベースの英国流表現だが、ベンテイガEWBのサイドビューにはロングホイールベースモデル特有の「間延びした印象」がなく、これまで私たちが見慣れてきたスタンダード・ベンテイガと同じ、たくましさとある種の緊張感が感じられるように思う。
その秘密を、エクステリアデザイン担当のクリスピン・マーシュフィールドに訊ねたところ、こんな答えが返ってきた。
「開発当初は、ホイールベースを200mmほど伸ばす案も検討されましたが、それではプロポーションが崩れてしまう恐れがあるた延長分を180mmとすることが決まりました。また、EWBでは(リアフェンダー周辺に設けられた)ホーンチラインの位置と角度も見直しています。一般的なSUVとは異なり、ベンテイガはフロントウィンドーとテールゲートの傾斜が強いことも”間延び感”を防ぐうえでは役立っています」
それでもホイールベースを180mm延長した効果は絶大で、後席ではゆったりと足を伸ばして寛ぐことが可能になった。しかも、4シーターモデルにはエアライン・スペシフィケーションなる特別なオプションを設定。これはスイッチひとつでリアシートをリクラインさせたり、前席の背面に設けたフットレストを展開できるほか、各種センサーを用いてシートヒーターやベンチレーターを最適設定したり、より快適なシートポジションを自動的に探し出すなどの機能が盛り込まれている。
もっとも、後席が大きく倒れるといっても、その角度はシートバックがほどよく上半身を支える範囲に留められているので、コーナリング中に横Gがかかっても上半身に特に力を入れる必要はない。言い換えれば、寝るためのフルフラットシートではなく、クルマ移動に伴う疲労を最小限に留めるのが、このシートの目指すところなのである。
しかし、ベンテイガEWBで本当の意味で驚かされたのは、ホイールベース延長に伴うメリットはあっても、デメリットがひとつも見当たらなかったことにある。
たとえばボディが長くなっても剛性の低下はまるで感じられず、ステアリングの正確さはスタンダード仕様とまったく変わらなかった。この辺はベンテイガに初めて採用された4WSの効果もあったはず。同じ理由から、ターニングサークル(Uターンするのに必要な直径)は標準ボディの12.4mから11.8mへとむしろ小さくなったというのだから驚く。
乗り心地も明らかに改善されていた。とりわけ後席の快適性が大きく向上していたのが印象的で、おかげでスポーツモードを選んでもゴツゴツした感触はまったくといっていいほど伝わってこない。この辺は、ロングホイールベース化に伴ってサスペンションの入力地点が乗員からより離れたことも関係しているはず。また、コンフォートモードとBモードではダンパーの設定をよりソフトにしたり、アクティブ・アンチロールバーも低速側でより大きなロールを許す仕様にして快適性の向上を図ったようだ。
加えて、入念な遮音により静粛性をより高めたこともベンテイガEWBの特徴といえる。
エンジンはいまのところV8のみだが、動力性能にはまったく不満を覚えなかった。
つまりメリットばかりでデメリットがまるで見つからなかったベンテイガEWB。今後はEWBがベンテイガ全体の半分程度を占めるだろうと、ベントレーでは予想しているそうだ。
【Specification】ベントレー・ベンテイガEWBアズール
■全長×全幅×全高=5305×1998×1739mm
■ホイールベース=3175mm
■トレッド(F:R)=1689/1707mm
■車両重量=2514kg
■エンジン種類=V8DOHC32V+ツインターボ
■排気量=3996cc
■最高出力=550ps(404kW)/5750-6000rpm
■最大トルク=770Nm(78.5kg-m)/2000-4500rpm
■燃料タンク容量=85L(プレミアム)
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ダブルウィッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤ(F:R)=285/40ZR22:285/40ZR22
■車両本体価格(税込)=30,180,000円