
新型CLAシューティングブレークの全貌。デザイン、実用性、性能から見る「選ぶべき理由」
2025年7月15日、メルセデス・ベンツは新型「CLAシューティングブレーク」を世界初公開した。これは今年3月に発表され、新世代コンパクトカーの幕開けを告げた新型「CLA」に続く、メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー(MMA)を採用した第2弾モデルであり、そして何より、メルセデス・ベンツブランドとして史上初となる、完全電動のシューティングブレーク(ステーションワゴン)の誕生となる。
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Bピラーからが真骨頂。CLA譲りの顔立ちと、シューティングブレークだけの優雅なリアビュー
新型CLAシューティングブレークのデザインは、一言で言えば「共有と深化」である。そのフロントマスクからBピラーにかけての造形は、先に登場したCLAと全く同一だ。低く構えたグリーンハウス、スポーティなシャークノーズデザイン、そして142個のクローム調LEDスターが個別に点灯するユニークなフロントパネルは、新世代ファミリーに共通する、一目でそれと分かる強烈なアイデンティティを放っている。
しかし、その真価はBピラーから後方にこそある。CLAの流麗なルーフラインに対し、シューティングブレークはより緩やかな傾斜を描きながら後方へと伸びていく。この伸びやかなルーフラインこそが、シューティングブレークならではのエレガントさと実用性を両立させる核心部分だ。先代モデルと比較すると、新型の全長は4723mm(+35mm)、全幅は1855mm(+25mm)、全高は1469mm(+27mm)、ホイールベースは2790mm(+61mm)へとそれぞれ拡大しており、より伸びやかで安定感のあるプロポーションを獲得している。
このエクステリアデザインにおける最大のハイライトは、フロントのウインドスクリーンからリアエンドまでシームレスに続く、一枚仕立てのパノラミックガラスルーフだ。さらに、このシューティングブレークには、セグメントの新たな基準を打ち立てるべく新たな機能がオプションで用意された。それは、ガラスの透明度をわずか10~20ミリ秒で透明から不透明(乳白色)へと切り替えられる機能だ。プライバシーの確保や日差しの眩しさを和らげるだけでなく、このガラスルーフはアンビエントライトと連動し、158個の星が選択したカラーで輝く「イルミネーション・スターリースカイ」へと変貌する。夜間、車内から見上げれば満点の星空が広がり、車外においてもその幻想的な光が唯一無二の存在感を放つ。この機能は、シューティングブレークの個性を際立たせる特別な装備と言える。
室内空間に目を向けると、伸びやかなルーフラインのおかげで、後席のヘッドルームはベースのCLAと比較して26mmも拡大されている。また、先代CLAシューティングブレークと比較しても7mm増加しており、快適性が大きく向上している。フロントのレッグルームも先代比で11mm拡大されるなど、全ての乗員がよりゆとりを感じられる空間が実現された。
実用性の要であるラゲッジスペースは、通常時で455L、40:20:40の分割可倒式リアシートを倒せば最大1290Lを確保。数値上、先代の通常時485L、最大時1350Lからは若干減少しているが、新型ではフロントボンネット下に101Lの「フランク(Frunk)」が追加されたことで、総合的な積載能力はむしろ向上したと言えるだろう。標準装備のEASY-PACKテールゲートやルーフレール、そしてこのクラスのEVとしては異例とも言える最大1800kg(4輪駆動モデル)の牽引能力も、このクルマの懐の深さを物語っている。
電動とハイブリッドを見据えたMMAプラットフォーム。効率性とダイナミズムを両立する心臓部
新型CLAシューティングブレークの心臓部であるパワートレインは、先にデビューしたCLAと基本的に共通のものが搭載される。これは、両モデルが電動駆動と内燃機関の両方に対応可能な、柔軟性に富んだ「メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー(MMA)」をベースとしているためだ。これにより、開発と生産におけるリソースが効率化され、高い次元での性能と品質が両立されている。
初期に導入される完全電動モデルは2種類。「CLA 250+ シューティングブレークwith EQ technology」は最高出力200kW(272ps)/最大トルク335Nmを発生する。そして、より高性能な「CLA 350 4MATIC シューティングブレークwith EQ technology」は、2つのモーターで4輪を駆動し、260kW(354ps)/515Nmを誇る。これらのスペックは、CLAと同一である。
両モデルに共通して搭載されるのは、容量85kWhの新世代リチウムイオンバッテリーだ。このバッテリーは、アノード(負極材)のグラファイトに酸化ケイ素を添加することでエネルギー密度を高めているのが特徴であり、800Vの高電圧アーキテクチャとの組み合わせにより、驚異的な充電性能を実現した。DC急速充電は最大320kWに対応し、例えば「CLA 250+」では、わずか10分間の充電で310kmもの航続距離を回復させることが可能だ。
航続距離においては、ボディ形状の違いによる空力特性の差がわずかに影響を与えているようで、CLA 250+ シューティングブレークの航続距離は最大761km、CLA 350 4MATICは最大730kmとされている。
走行性能においても、新開発の電動ドライブシステムがその真価を発揮する。リアアクスルに搭載された永久磁石同期モーター(PSM)と2速ギアボックスの組み合わせは、高い効率とダイナミックな走りを両立。1速ギアは発進からの鋭い加速を可能にし(CLA 250+の0-100km/h加速は6.8秒)、2速ギアは高速巡航時の電力消費を抑え、長距離走行での快適性と航続距離の伸長に貢献する。
また、この新世代プラットフォームは、完全電動モデルだけでなく、48Vテクノロジーとトランスミッション一体型電気モーターを組み合わせたハイブリッドモデルも、来年初頭に追加することを可能にしているとのこと。これは、世界各地の顧客の多様なニーズに応えながら、電動化への移行を進めるメルセデス・ベンツのしたたかな戦略の表れである。
美しさと実用性を高次元で両立。メルセデスが示す新時代のエステート像
新型CLAシューティングブレークは、CLAという優れたベースモデルと革新的なMMAプラットフォームを共有することで、極めて高いレベルの基本性能を実現した。その上で、シューティングブレークならではの伸びやかでエレガントなデザイン、イルミネーション・スターリースカイという遊び心あふれる専用装備、そして格段に向上した居住性と実用性を融合させている。先代モデルが切り拓いたスタイリッシュ・エステートというジャンルを、電動化という新たな次元へと昇華させたモデルと言えよう。
パワートレインや先進技術の多くを共有しながらも、デザインとパッケージングによって明確な個性と付加価値を与える。この巧みな戦略によって生み出された新型CLAシューティングブレークは、スポーティな走り、最先端のインテリジェンス、そしてライフスタイルを豊かにする空間を求める人々にとって、魅力的な選択肢となることは間違いない。欧州での市場導入は2026年3月が予定されており、その登場が今から待ち遠しい。
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