
スペックは“途方もない”の一言。歴代最強のポルシェ、誕生
2024年春に改良されたポルシェのEVスポーツ「タイカン」に、歴代市販車最強のトップモデル「ターボGT」が追加された 。オーバーブースト機能で最大815kW(1108ps)という途方もない出力を誇り、0-100km/h加速は2.3秒を記録する。岡山国際サーキットで試乗したその走りは、凄まじい加速だけでなく、卓越した減速やコーナリング性能も両立。BEVの概念を覆すほどの衝撃的な実力に迫る。
【画像10枚】これが最強ポルシェの空力性能。「タイカン・ターボGT」の専用装備とディテールを写真で徹底チェック
0-200km/hは1.1秒も短縮。もはや異次元の加速性能
2024年春に行われたポルシェのフル電動スポーツセダン、「タイカン」のマイナーチェンジの際、実は新たなトップモデルが追加されている。それがタイカン・ターボGTである。
そのスペックは半端じゃない。前後2モーター合計の最高出力は通常時580kW(789ps)、最大トルクは1340Nm。それがステアリングホイール脇のスイッチ、もしくは右側パドルで起動するアタックモードでは、プッシュ・トゥ・パス機能により最大120kWのパワーブーストが追加され、最高出力700kW(952ps)に達する。
いや、それだけには留まらない。ローンチコントロールを使えば最高出力は760kW(1034ps)、オーバーブースト機能により2秒間だけ、最大815kW(1108ps)という途方もない出力に到達するのだ。文句なく、歴代のポルシェ市販車の中で、もっとも高出力なモデルということになる。
この大幅な出力アップによって、0-100km/h加速はタイカン・ターボSよりもコンマ1秒速い2.3秒まで短縮されている。さらに、0-200km/h加速を見ると、1.1秒速い6.6秒をマーク。つまり立ち上がり加速も速くなっているが、その先の速度の伸びはより以上に鋭くなっているわけである。車重2.2トンを超えるというのに……。
パワーだけではない。空力と軽量化への執念が宿る専用装備
ハード面でアップデートされたのは、リアアクスルに採用された、最大900Aの電流値を可能とするパルスコンバーター。ターボS用の600Aと較べて多くの電流を一気に流すことが可能になっているのだ。それに対応するかたちで、やはりリアアクスルに内蔵の2速トランスミッションも強化され、ギアリングも変更されている。
シャシーには、ポルシェアクティブライドサスペンションにスペシャルパフォーマンスサマータイヤ、21インチ軽量鍛造ホイールが組み合わされる。ブレーキはPCCBがベースで、今回2kg以上の軽量化を実現したという。専用のヴィクトリーゴールド塗装が、その証である。
外観上の違いは、そのホイールの他にエアロブレード付きフロントスポイラー、そしてリアのアダプティブスポイラーの後端に追加されたハイグロスカーボン織り仕上げのガーニーフラップ。さらに、各部がハイグロスブラック、あるいはマットブラックで仕立てられ、仕上げに専用の“ターボナイト”エンブレムで差別化されている。
ちなみに今回、同時に設定されたヴァイザッハパッケージは、後席を省くなどして75kgの軽量化を図り、専用エアロパーツを装着したトラック仕様で、出力は変わらないものの0-100km/h加速は2.3秒、0-200km/hは6.4秒と、さらに速さに磨きがかかっている。ニュルブルクリンク北コースのラップタイムは7分7秒55で、ターボSを26秒も上回るというのだから、あっけにとられるばかりである。
もはやワープ。量産車では未体験の“獰猛”なローンチ加速
今回、岡山国際サーキットで試乗したタイカン・ターボGT。最初の驚きは、すでに発進の時点でもたらされた。
Dレンジを選んで左足でブレーキを踏み込み、続いてアクセルを全開に。クルマが全身小刻みに震えてパワーが漲ってくるのが感じられる。ここで左足を一気に緩めると、タイカン・ターボGTはほぼホイールスピンなしに、4輪を強烈にグリップさせて、クルマを背後から思い切り蹴飛ばすかのように猛然と加速させた。身体がシートに一気に押し付けられ、思わず顎が上がる。こんな加速、量産車では今まで体験したことがない!

ポルシェ・タイカン・ターボGT:ポルシェは、エアロブレード付きフロントスポイラーをタイカンターボGT専用に開発。リアビューはアダプティブスポイラーが際立ち、そのティアオフエッジにはハイグロスカーボン織り仕上げのガーニーフラップが備わる。
実際、100km/h到達はあっという間。この日は路面がやや濡れていたこともあり、身を捩じらせるようにしながらワープするかのように加速していく。さらに100km/hを超えても、加速の勢いにはまったく衰える気配がない。それなのにアタックモードに入れたら、まるでエンジン車をシフトダウンさせたかのように、さらに加速が鋭さを増したのだ。まさに獰猛と言いたいほどの迫力。まだ余裕があったなんて……。
2本のストレートでは簡単に200km/hを突破した。念の為、相当早めにアクセルを緩めたものの、そのまま踏んでいればおそらく250km/hも容易だったはずだ。
“BEVはつまらない”――試す前にその言葉を口にしてはいけない理由
驚きは、決して加速だけではない。減速も、そしてコーナリングも、やはり大いに唸らされた。
まずブレーキは、とにかく良く止まり、またコントロール性も秀逸。速さも重さも意識させることなく意のままの減速を可能にする。しかも急制動を繰り返した後にもタッチがまるで変わらないのだ。これはもう、さすがポルシェである。
コーナリングは、まず切れ味が非常に鋭い。ブレーキングからターンインしていく際のノーズの入りの良さなど惚れ惚れするほどだ。しかもコントロール性もバツグンで、生々しく伝わる4輪のグリップ感に対して、ステアリングやアクセル、ブレーキで姿勢やラインを整えるのが、とてもやりやすい。

ポルシェ・タイカン・ターボGT:静止状態から100km/hまでの加速タイムは2.3秒、ヴァイザッハパッケージ装着車両の場合はわずか2.2秒で、タイカンターボSより0.1~0.2秒速い。静止状態から200km/hまでの加速は、タイカンターボGTが6.6秒、タイカンターボGTヴァイザッハパッケージが6.4秒で、タイカンターボSより最大1.3秒速くなり、その差はさらに大きくなる。
そして出口に向けて右足に力を込めれば、リアから強く蹴り出しつつもアンダーステアとは無縁のまま、再び獰猛な加速の渦に放り込まれるという具合だ。これらは、専用のエアロパーツに加えて、アンダーボディまで徹底された空力、そして忘れてはいけない、この日装着していたピレリのハイパフォーマンスタイヤの相乗効果だろう。
つい凄まじいパワーに目が向いてしまうが、タイカン・ターボGTは決して直線だけ速いタイカンではない。あらゆる場面でイージーに……と言うと語弊があるが、ともあれBEVの長所をフルに活かし、いつでもフールプルーフに凄まじい速さを引き出すことができるのが、このクルマである。BEVなんてつまらないって? 少なくともタイカン・ターボGTを試す前に、そんなことは口走るべきではないよと言っておこう。
【Specification】ポルシェ・タイカン・ターボGT
■車両本体価格(税込)=31,440,000円
■全長×全幅×全高=4970×2000×1380mm
■ホイールベース=2900mm
■車両重量=2300kg
■モーター最高出力=789ps(580kW)(ローンチコントロール時最大1034ps(760kW))
■モーター最大トルク=1240Nm(ローンチコントロール時最大)
■バッテリー容量=97.0kWh(総容量105.0kWh)
■一充電航続可能距離(WLTC)=638~677km
■サスペンション形式=前:ダブルウィッシュボーン/後:マルチリンク
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ=前/後:265/35ZR21/305/30ZR21
■問い合わせ先:ポルシェジャパン TEL 0120-846-911