ニュース&トピックス

シトロエン「ELO」は4.1mで6人乗りの“動く隠れ家”。デカトロンと共創したEVが問う移動の再定義

2026年ブリュッセル・ショーで一般公開予定のコンセプトカー「ELO

シトロエンは2025年12月9日、ブランドの新たな章を切り拓くコンセプトカー「ELO」をフランス・ポワシーにて世界初公開した。2022年に発表されたコンセプトカー「OLI」の系譜を継ぐこのELOは、シトロエンが描く未来のモビリティを具現化した「アイデアの実験室」という位置づけである。全長4.10mというコンパクトなボディでありながら、革新的なパッケージングによって広大な室内空間を実現し、「Small is the new big(小さいことは、新たな大きさだ)」という理念を体現している。単なる移動手段にとどまらず、ユーザーの生活のあらゆる局面に寄り添うパートナーとして設計されたELOは、来る2026年1月9日のブリュッセル・モーターショーにて一般公開される予定だ。

【画像30枚】運転席は驚きの「ど真ん中」。ベッドやオフィスへ変幻自在なシトロエン「ELO」の独創的ディテールを見る

ë-C3と同等の4.10mに最大級の自由を。車輪の上の「タイニーハウス」という発想

ELOの最大の特徴は、そのパッケージングにある。全長は同社の「ë-C3」と同等の4.10mというコンパクトサイズに抑えられているが、その内部には最大6人が乗車可能な広大な空間が広がっている。これは、電気自動車専用のプラットフォームを採用し、モーターをリアアクスルに配置するというアーキテクチャの恩恵によるものだ。シトロエンはこの設計を「車輪のついたタイニーハウス」と表現しており、外観の小ささと内装の豊かさが鮮烈なコントラストを生み出している。

エクステリアデザインは、都市の景観に明るさをもたらす「エネルギーのバブル」をイメージしており、光の当たり方によってオレンジから赤、黄色へと変化する鮮やかなボディカラーが採用された。フロントおよびリアのバンパーには、軽量で復元力のある発泡ポリプロピレン素材が使用されており、これはデザインのアクセントであると同時に、軽い衝撃から車体を守る機能的な役割も果たしている。また、リアドアは半円形の形状でルーフまで回り込んでおり、4.5平方メートルにも及ぶ広大なガラスエリアがキャビンに溢れるほどの光を取り込む設計となっている。

視界180度のセンター・ドライビング・ポジション。伝統と革新が交錯するコクピット

ELOのインテリアは、従来の自動車の概念を根底から覆すレイアウトが採用されている。最も象徴的なのが、運転席を車体中央の最前列に配置した独自のドライビングポジションだ。これによりドライバーは左右180度に広がるパノラマ視界を確保できるだけでなく、両側のスペースが解放されることで車内での移動がスムーズになっている。ステアリングには、1955年に登場した名車「DS」へのオマージュとしてシングルスポークのデザインが3Dプリント技術で再解釈されて採用された。

さらに驚くべきは、その情報表示システムである。従来のダッシュボードは排除され、代わりにすべての情報はフロントガラス下部の透明スクリーンに投影される仕組みとなっている。これにより、ドライバーは視線を逸らすことなく必要な情報を得ることができ、視界を遮るもののない開放的な運転感覚を味わうことができる。

シートアレンジの自由度も極めて高い。2列目には同じ幅の3つのシートが並び、これらは取り外して屋外でチェアとして使用することも可能だ。さらに、通常は収納されている2つの補助シートを展開することで、必要に応じて6人乗車に対応する。運転席自体も360度回転可能であり、停車時には後席の乗員と対面して会話を楽しんだり、デスクワークを行ったりすることができる。

マットレスからモバイルオフィスまで。生活のあらゆる局面に変幻するモジュラリティ

車名の「ELO」は、それぞれ「REST(休息)」「PLAY(遊び)」「WORK(仕事)」という3つの概念を象徴しており、移動以外の時間も有効活用するための機能が満載されている。

「REST」モードでは、車内が快適な寝室やシアタールームへと変貌する。デカトロン(Decathlon)とのパートナーシップにより開発された専用マットレスは、パドルボードなどに使われる「ドロップステッチ」技術を採用しており、空気を入れるだけで高剛性のベッドが完成する。車内のプロジェクターとスクリーンを使えば、満天の星空の下で映画鑑賞を楽しむことも可能だ。

「PLAY」モードでは、ELOはアウトドアアクティビティのベースキャンプとなる。V2L(Vehicle to Load)技術により、電気バーベキューグリルやスピーカーへの給電が可能であるほか、4枚のドアすべてにフックが設けられており、オーニング(日よけ)を展開して居住空間を屋外へと拡張できる。

「WORK」モードでは、回転する運転席と展開式のテーブルを活用して、快適なモバイルオフィスを作り出すことができる。ビデオ会議のスケジュールや映像をフロントガラスのディスプレイに投影するなど、デジタルデバイスとの連携も考慮されている。

デカトロンの機能性とグッドイヤーの知性。異業種との共創が導くサステナブルな解答

ELOの開発において、シトロエンはスポーツ用品大手のデカトロン、そしてタイヤメーカーのグッドイヤー(Goodyear)という2つのパートナーと密接に協力した。デカトロンとの協業は、前述のマットレスだけでなく、スポーツウェアから着想を得た収納ポケットや、リサイクル素材を活用した内装材など、機能的かつ耐久性の高いマテリアル開発に活かされている。

一方、グッドイヤーとは、地形や天候を選ばないスマートタイヤ「Eagle Xplore」を開発した。このタイヤには空気圧や摩耗をリアルタイムで監視するセンサーが内蔵されており、ホイールに埋め込まれたLEDライトが空気圧の適正状態(緑)や不足(赤)を即座に知らせる機能を持つ。タイヤのサイドウォールには車体と同じオレンジ色のアクセントが施され、デザインの一体感を高めている。

シトロエンCEOのグザビエ・シャルドン氏は、「ELOは、シトロエンが100年以上にわたって培ってきたDNA——創造性、大胆さ、実用性、そしてウェルビーイングへの献身——を完璧に体現しています」と語る。このコンセプトカーは、単なる未来の車の提案にとどまらず、急速に変化するライフスタイルの中で、モビリティがいかにして人々に「自由な時間」と「喜び」を取り戻せるかという問いに対する、シトロエンからの鮮やかな回答であると言えるだろう。

【ル・ボラン編集部より】

2022年のコンセプト「OLI(オリ)」で提示された「軽さと合理性」の哲学は、この「ELO」においてより濃密な「生活の器」へと進化したようだ。4.1mという都市サイズに、往年のDSを偲ばせる一本スポーク、そしてデカトロンとの共創による「車輪の上のタイニーハウス」という概念を詰め込む。これらは単なる奇抜さではなく、移動と滞在の境界を溶解させるシトロエン流実用主義(プラグマティズム)の極致である。EVの重量化が進む中で、ミニマリズムの中に豊かさを宿すこの提案こそ、シトロエンの真価であり、現代のアヴァンギャルドと言えるだろう。

【画像30枚】運転席は驚きの「ど真ん中」。ベッドやオフィスへ変幻自在なシトロエン「ELO」の独創的ディテールを見る

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

AUTHOR

注目の記事
注目の記事

RANKING