衝撃の軽量化:あえて「初代」に迫る580kg
昨今の自動車業界では、安全装備の充実や電動化に伴う「車両重量の増加」と「価格の高騰」が常識となりつつある。そうした中、スズキが現在開発を進めているとされる次期「アルト」のコンセプトは、その潮流に真っ向から挑む衝撃的なものだ。1979年の初代発売以来、軽自動車の歴史を牽引してきた同車は、スズキの企業理念「小・少・軽・短・美」を体現すべく、原点回帰とも言える徹底的な軽量化を目指している。
【画像5枚】昨今の車両価格高騰と重量増に真っ向から挑む次期スズキ「アルト」の凄さ
社長が明言した「マイナス100kg」の衝撃
まず確実な情報として挙げられるのが、スズキのトップが示した開発目標である。鈴木俊宏社長は次期型開発において、現行型と比較して「100kgの軽量化」を目指すと公言している。これは単なる努力目標ではなく、企業の根幹をなす理念に基づいた具体的な数値目標である。
現行アルトの最軽量モデルが680kgであることから、目標達成時の車両重量は「580kg」という驚異的な数値となる。これは歴代最軽量を誇る初代モデルの545kgに迫る水準であり、高度な安全性能や環境対応が不可欠な現代の自動車において、この数値を目指すこと自体が技術的な挑戦と言える。この大幅な軽量化を実現するための手段として、最新世代のプラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」の採用が有力視されている。
価格維持と燃費性能への期待
ここからは、軽量化がもたらす恩恵と市場戦略に関する予想である。軽量化は走行性能のみならず、コストパフォーマンスにも直結する要素だ。モデルチェンジに際しては10万円から20万円程度の価格上昇が一般的だが、次期アルトでは軽量化による材料費の削減効果を活かし、値上げ幅を数万円程度に留めると見込まれている。ホンダ「N-ONE」や三菱「eKワゴン」といったライバル勢に対し、圧倒的なコスト競争力で優位に立つ戦略が推測される。
また、燃費性能についても飛躍的な向上が期待されている。開発の目安として、現行マイルドハイブリッド車の28.2km/Lを大きく上回る「32km/L以上」という数値が挙がっている。「値上げ時代」へのアンチテーゼとして、経済性と環境性能の両立が図られる見通しだ。
刷新されるデザインとパッケージング情報
エクステリアやボディサイズに関して、独自に入手した情報に基づいて予想すると、デザインは軽量化を意識しつつも力強さを感じさせるものへと進化し、サイドにはエッジの効いたキャラクターラインが採用されるようだ。フロントマスクには、ダンベル型の個性的なデザインに加え、楕円型の大型ヘッドライトが装備されるという。また、スカート部にアンダーバーを配置するなど、スポーティな演出も施される模様である。
ボディサイズについては、全長3400mm(現行比+5mm)、全幅1475mm(+0)、全高1515mm(+40mm)という具体的な数値情報がある。特に全高の拡大によって居住空間の向上が図られるとされるが、全幅の数値等を含め、最終的な市販モデルでどのようなパッケージングに着地するかは注視が必要だ。
登場時期とパワートレインの展望
最後に、気になる発売時期とパワートレインについて。当初は2026年の登場が噂されていたが、開発に遅れが生じている模様で、現在は「2027年9月」の発売が予想されている。実現すれば、第9世代が登場した2021年から6年ぶりのフルモデルチェンジとなる。
パワートレインは、660cc直列3気筒エンジンをベースに、「エネチャージ」搭載車および「同エンジン+マイルドハイブリッド」のラインナップが用意されると推測される。公式に宣言された「マイナス100kg」という高いハードルをスズキがいかにしてクリアし、どのような形で市場に投入してくるのか。2027年の登場に向け、その動向から目が離せない。
【ル・ボラン編集部より】
電動化と重厚長大化が常識となる現代において、スズキが投じた「マイナス100kg」の宣言は、自動車産業全体への痛快なアンチテーゼである。初代の志を継ぐこの徹底的な軽量化は、単なる回顧主義ではない。焦点は、HEARTECTの熟成により、物理的な軽さがもたらすキビキビとした挙動と、現代に求められる「しなやか」な乗り味をどう両立させるかだ。ここに一切の妥協がなければ、次期アルトは「安くて軽い実用車」という枠を超え、内燃機関車の到達点として、その真価を歴史に刻むことになるだろう。




