ポルシェ、史上最強1156psを誇る「カイエン エレクトリック」の生産を開始 自社製バッテリー技術で電動化を加速
2026年2月2日、ポルシェは新型「カイエン エレクトリック」の生産を開始したと発表した。2025年11月中旬にワールドプレミアを迎えたこの新型SUVは、スロバキアのブラチスラバ工場にて、内燃エンジンモデルやハイブリッドモデルと同一のラインで混流生産される。注目すべきは、ポルシェ量産車史上最強となる1156psという圧倒的なスペックと、近隣の自社拠点で製造されるバッテリーモジュールの採用だ。電動化時代の新たなフラッグシップSUVが、ついにラインオフを迎えた。
【画像17枚】ブラチスラバ工場でついにラインオフ。生産がスタートした新型「カイエン エレクトリック」の製造風景
柔軟な生産体制と史上最強のスペック
ポルシェは市場の需要変動に迅速に対応するため、ブラチスラバ工場において柔軟な生産体制を敷いている。ここではカイエン エレクトリックが、従来の内燃エンジンモデルやハイブリッドモデルと同じ生産ラインを流れる。ポルシェAGの生産およびロジスティクス担当取締役であるアルブレヒト・ライモルト氏は、この体制について、ポルシェのDNAを未来へと確実に継承するものであり、最高レベルの製造品質と、あらゆる市場の顧客要件を満たす柔軟性を提供するものだと語っている。
生産が開始された新型カイエン エレクトリックは、多くの面でこれまでの限界を打ち破るモデルとなっている。特に最上位モデルとなる「カイエン ターボ」は、最高出力850kW(1156ps)を発生し、ポルシェの量産モデルとして史上最も強力な一台となった。インテリアにおいても新世代の技術が投入されており、ポルシェ史上最大のスクリーン面積を誇るディスプレイや、高い応答速度を持つポルシェ・コミュニケーション・マネジメント(PCM)が採用されているほか、カスタマイズの幅もかつてないほど広がっている。
世界初の冷却技術と800V急速充電
圧倒的なパフォーマンスを支えるのは、高度なバッテリー技術である。総電力量113kWhを誇る高電圧バッテリーは、高いエネルギー密度と大型のパウチセルを採用し、機能統合型として設計された。これにより、600kmを超える航続距離を実現するとともに、800Vでの急速充電もサポートしている。
特筆すべきは、世界初となる「両面冷却」技術の採用だ。バッテリーには2枚の冷却プレートが備わり、必要に応じて高電圧バッテリーを上下両面から冷却、あるいは加熱することが可能となっている。この機構により、バッテリーにとって最適な温度ウィンドウをより効果的に維持することができ、安定した性能発揮に寄与する。
バッテリー生産の自社内製化を強化
ポルシェはカイエン エレクトリックの生産にあたり、バッテリーに関する専門技術を戦略的に強化している。ブラチスラバから北東に約100km離れたホルナ・ストレダには、ポルシェ・ヴェルクツォイクバウGmbH(Porsche Werkzeugbau GmbH)と共同で「ポルシェ・スマート・バッテリー・ショップ」が設立された。
ここでは、次世代のバッテリーモジュールが製造されている。プロトタイプ生産で培われたノウハウを量産へシームレスに移行させるため、ポルシェのツール製作部門との緊密な連携が行われた。製造プロセスは精密に制御されており、セルの準備からスタッキング、レーザー溶接、発泡充填、冷却プレートの統合、そして最終検査に至るまで、徹底した品質管理の下でモジュールが生み出されている。
ポルシェ・ヴェルクツォイクバウGmbH取締役会長のマルクス・クロイテル氏は、このスマート・バッテリー・ショップによって数十年の工業化経験と最先端バッテリー技術が統合されたとし、この統合が品質、精度、拡張性の管理を可能にし、ポルシェの未来を形作る重要な要素になると述べている。
フォルクスワーゲングループ工場での緻密な連携
車両の組み立てが行われるブラチスラバのデヴィンスカ・ノヴァ・ヴェス地区にあるフォルクスワーゲン・グループの工場も、電動SUVの生産に向けて大幅に拡張された。改修の核心部分は新しいプラットフォームホールであり、ここでカイエン エレクトリックのスケートボード型シャシーが組み立てられる。その後、サイドウォール、ルーフ、ドア、ボンネット、テールゲートといったボディパーツが取り付けられるが、これらは欧州で最も近代的なプレス工場のひとつである、ほぼ完全自動化されたプレスラインから供給される。
また、新型車の立ち上げというダイナミックな環境において迅速な連携を図るため、ポルシェは「レジデントモデル」と呼ばれる体制を採用した。これは、ポルシェAGの少数の従業員グループがブラチスラバ工場に常駐するというもので、彼らは現場で発生する課題に直接取り組み、ポルシェの組織内へ即座にフィードバックを行う役割を担う。こうした人的・技術的なリソースの集中投下により、カイエン エレクトリックは極めて高い品質基準のもとで送り出されることになる。
【ル・ボラン編集部より】
1156psを誇る新型カイエン エレクトリック。一見すると大艦巨砲主義的だが、ポルシェの真価はその先にある。これまでの内燃機関モデル同様、巨躯を感じさせないしなやかな身のこなしと、雑味がない濃密なステアリングフィールが本作にも宿るはずだ。両面冷却技術など高度な熱管理は、アウトバーンでの連続高負荷走行に耐えるポルシェの流儀である。正直なところ大容量バッテリーの重量増は懸念されるが、それを圧倒的パワーでねじ伏せる世界観は、新時代を求める層にとって最適解となるだろう。これはスポーツSUVの再定義であり、名門の系譜を継ぐ一台である。
【画像17枚】ブラチスラバ工場でついにラインオフ。生産がスタートした新型「カイエン エレクトリック」の製造風景




















