ほとんど手作業! 昔ながらの製造ラインを眺めるのも楽しい
1948年のアムステルダム・モーターショーで発表され、同年に生産開始された原点「ランドローバー」の直系にあたる「ディフェンダー」が、ついに1月29日、68年におよぶその歴史に幕を下ろした。最後の1台となったのは「ディフェンダー90 ヘリテージ ソフトトップ」。そのラインオフを祝う記念式典には、およそ700人もの現役スタッフや退職者が招待されたとのことだ。
今でこそ高級SUVの代名詞であるランドローバーだが、そもそもは戦後の復興に向けた農作業用車両を提供すべく企画されたモデルだった。そのときに採用され、いまに引き継がれているアルミボディは、実は当時の深刻な鉄不足に端を発している。
当初の「シリーズ I」は「ランドローバー」が正式な車名で、価格は450ポンド(当時のレートで約45万5000円)。1958年からの「シリーズ II」でホイールベースの長さをインチで表した数字が加えられるようになり、1971年からの「シリーズ III」を経て1990年の変更を機にはじめて「ディフェンダー」の名称が与えられた。累計販売台数は200万台以上に達し、200万台目として2015年にワンオフ生産された「#2,000,000」は40万ポンド(同7600万円)で販売されたそうだ。
なお、ディフェンダーはここで潰えるわけではなく、ランドローバー社では新世代のディフェンダーを創造すべく開発を進めている。その一方で、旧来のディフェンダー愛好家にも道は残されている。英ソリハルのディフェンダー生産現場は今後、「ヘリテージ修復プログラム」に活用されるというのだ。これは、長年にわたり製造に携わってきたスタッフを含むエキスパートで構成されたチームが世界中から古いランドローバーシリーズを集めて再生、販売していくというプラン。蘇ったクルマは2016年7月に最初の1台が出荷される予定という。まるっきり新しいディフェンダーも楽しみだが、こうして伝統のモデルを未来に残していこうとする姿勢は英国らしく、嬉しい限りである。