耐久マシンで証明済みの信頼性
ポルシェ・ミッションEで大いに注目すべきテクノロジーが、800Vという高電圧電装系の採用だ。これによってミッションEは、たったの15分で80%まで充電ができ、400kmの走行が可能になる。現行最速のテスラ・スーパーチャージャーの400Vシステムでも、同じ400km分の充電にざっと40分かかると考えると、これは強烈な速さだ。また、高電圧化は電流を減少させるため電線を細くでき、軽量化にも寄与する。すでに800V電装系は919ハイブリッドに使われ、十分な信頼性が証明済みである。
ただし、超高速充電には当然、充電インフラ側がそれに対応している必要がある。ポルシェはヨーロッパなどでポルシェターボチャージングと呼ばれる超急速充電器の設置を計画しており、またアメリカでも各ディーラーにこれを設置していく方向。もちろん、インフラ企業や他メーカーと組んで整備が進んでいる400Vの急速充電ネットワークも活用できるし、将来的には非接触充電にも対応する予定だ。 日本の状況には触れられなかったが、もちろん検討はしているはずだ。CHAdeMO規格も、2020年には現行の50kWに対して350kW対応まで見据えているが、それだけでもまたメリットをフルには享受できないだけに、大いに期待したい。
ワークショップの最後のQ&Aでは、こんな質問があった。「ミッションEのサウンドはどうするのか。何か電子音のようなものをプラスするのか」というものだ。それに対する回答は「ノー」。エンジンを模したサウンドなどが付加されることはないという。エンジン音と加速感が密接に結びついていた内燃エンジン時代とは、人々の感覚も変わってくるだろうというのがポルシェの見立てである。
「自動車産業は急速に変化していますが、それは我々にとってチャンスです。エクスクルーシヴでスポーティなモビリティのサプライヤーとして正しいポジショニングで準備を行なう必要があります。成功し続けるには、変化し続けなければならないのです」
急速に電動化を進めるポルシェは、タイプ992と呼ばれる次期型911で遂にトップパフォーマンスモデル、つまりおそらくは“ターボS E-ハイブリッド”としてプラグインハイブリッドの設定を検討していると、すでにブルーメ氏、そして911の開発責任者であるA.アハライトナー氏などにより公言されている。しかしながらイノベーティブであることこそ価値と位置づける彼らにとっては、それは変化ではなく、あくまで進化の道なのである。(Part.1/Part.2)
コンテンツ提供:Sustaina サステナ