ドイツプレミアムに選ばれる性能と品質
欧州プレミアムブランドのクルマを中心に、純正装着されるケースが増えている、YOKOHAMA“ADVAN Sport V105(アドバン・スポーツ・ブイイチマルゴ)”。
前回は、ADVAN Sport V105(以下、V105)がそうした欧州メーカーで高評価を得ている理由、V105の開発の狙いのようなものを、横浜ゴムのタイヤ海外直需営業推進室 海外直需課の川口周穂(かわぐちしゅうほ)課長、タイヤ第2設計部の大聖康次郎(だいしょうやすじろう)副部長という、V105に携わってきたおふたりに話をうかがった。今回は、メーカーに供給するV105を実際に開発するにあたっての、ドイツの自動車メーカーとの実際のやりとりにまつわる話題。とりわけジャーマンブランドに関心の高い人には、それぞれの自動車に対する開発アプローチのようなものも窺い知ることができて、興味深いと思う。引き続き川口さんと大聖さんにご登場いただこう。
──これまで、OE(純正採用)のV105開発のためにドイツの自動車メーカーそれぞれと作業をされてきてるわけですが、それぞれの開発部門はどのような雰囲気ですか?
【大聖】それぞれでキャラクターが違いますね。いずれも優れた開発陣であることは間違いないんですが、性格のようなものは違っています。タイヤの技術や性能へのリクエストは、スポーツモデルなどがいちばん細かいかも知れませんね。クルマづくりに対して技術部門の影響力がとても大きいのだと思います。
【川口】ポルシェに関しては、911や718ケイマン/ボクスター、カイエン、パナメーラなどにはすべてOEタイヤを納入してきています。ポルシェの中ではメインサプライヤーのようなところまで来ることができました。まあ……、ホントに大変なんですけどね(笑)。
──やはりポルシェは妥協を許してくれませんか?
【大聖】常に進化を求められますし、エンジニアからの要求にも一切の妥協がありません。これまでの長い付き合いの中で、開発はしたけれど製品化に至らなかったという製品もありますよ。
──BMWも性能面の要求が厳しいのでは? 特にBMW Mなどは……。
【川口】確かに厳しいです。まだOE納入歴が浅いこともあるのでしょうが、これまでのタイヤはすべて満足していただけてるようです。
──BMWへの納入は、2017年からでしたね。BMWは欧州でもとりわけ走行性能にこだわるブランドだと思いますが、アプローチに至った目的とかきっかけのようなものは、何かあったのですか?
【大聖】実は14~15年前から、BMWへのアプローチは続けていたんです。それまではポルシェやロータスといた特定のスポーツカーブランドに細々と納入していたのですが、もっと本格的に、特にドイツの主力メーカーのOEにも参入しようという機運が、その頃、社内で高まってきたのです。その当時からBMWにもコンタクトをとり続けていましたが、アウディやダイムラーなどとのビジネスが狙い通りに進む一方で、なぜかBMWとは商談のテーブルには着けても結実しなくて、なかなか開発をスタートするきっかけが掴めなかったのです。
【川口】ところが2013年末に、BMWサイドから複数モデルへのOEタイヤ開発のアプローチがありまして、SUVモデルのX3と高性能モデルのM5に着手することができるようになったのです。
──長年のアプローチが実を結んだ、というわけですね。BMWとのお付き合いがはじまって、皆さんのモチベーションに変化はありましたか?
【川口】なかったといったら嘘になりますね(笑)。OEの場合は、まずメーカー側からノミネートされないと、装着するクルマに合わせた製品の開発が進められません。そこから試作を繰り返しながら技術承認を取得して量産へと進んでいく、という流れです。もちろんノミネートされることそのものも嬉しいのですが、開発の流れの中で技術承認を取ることがひとつの大きなハードルで、それをクリアしていくことの方が喜びは大きいかも知れません。でも、BMW側の担当者によれば、「最初から新型SUVとほぼ同時にMモデルの純正タイヤにノミネートされたのは横浜ゴムが初めてだ」ということでした。