
GTIの走りをエコに、エレクトリックに
「プラグインハイブリッド(PHV)」という言葉はそれなりに世の中に浸透してきた気がするけれど、まだ実際に走っている姿を見かけることはほとんどない。それはそうだろう。本格的に販売しているのはトヨタ・プリウスPHVとミツビシ・アウトランダーPHEVくらいなものだし、補助金やエコカー減税を差し引いても通常モデルとの価格差がありすぎる。「燃料代は安くなるんだろうけれど、長いこと走らなきゃ取り戻せそうにないし、ウチ帰っていちいちケーブル繋ぐのも面倒だし」というのがユーザー側の本音だろう。
だが、そんな中で奮闘しているのがドイツメーカーだ。すでにメルセデス・ベンツはCクラスとSクラス、BMWは2シリーズ、3シリーズ、X5、i3、i8、アウディはA3、フォルクスワーゲン(VW)はゴルフ、そしてポルシェはカイエンにパナメーラ……というように、ざっと挙げただけでも11車種が導入済み。これは長期的な世界戦略を見据え”EV先進国”の日本で実証実験を重ねておきたい思惑もあるのだろうが、それにしても絶対的な販売台数の少なさを考えればその努力は讃えられるべきだろう。そんな中に加わったのが、今回紹介するVWの「パサートGTE」である。
それでもやっぱり高い?
パサートはゴルフの兄貴分といえるフォーマルなセダン/ワゴン。ボディはふたまわりほど大きくなるがゴルフと同じ「MQBアーキテクチャー」で仕立てられているから、搭載するPHVシステムはほぼゴルフGTEのそれを流用していると考えていい。つまりエンジンは1.4リッター直列4気筒で、これにモーターと6速DCTが組み合わされる。さらにエンジンとモーターはもうひとつのクラッチで切り離せるようになっているので、ここを制御することでエンジンを回さないEV走行を実現。このハイブリッドシステムに外部充電機能をプラスしているから「プラグイン」というわけだ。
だが車格に応じたアップグレードはしっかりと図られていて、エンジンパワーはゴルフGTEの150馬力から156馬力に、モーター出力は109馬力から116馬力へと向上(最大トルクはエンジン/モーターともゴルフGTEと同じ)。さらにバッテリー容量も8.7kWhから9.9kWhにまで引き上げられた。これらの結果、JC08モードでのハイブリッド燃費は21.4km/Lに、EVモードでの最大航続距離は51.7kmを達成。でもここで気になるのは、1.4リッター直4ターボを搭載するノーマル版のパサートでもJC08モード燃費20.4km/Lを叩き出していること。となると+1km/Lの燃費に加え、PHVにもう100万円近くを支払う理由はどのあたりにあるのだろうか。このあたりを発見できるかが試乗のポイントになるはずだ。
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- Report : Naohide ICHIHARA (Editor in Chief) Photo:Yoshoto YANAGIDA