
今季WRC世界ラリー選手権はどんな状況?
昨シーズン開幕当初は混戦模様を呈したチャンピオン争いだが、終わってみればMスポーツのセバスチャン・オジェが5年連続のチャンピオンを獲得。オジェは新規定2年目を迎えた今年も既に3勝を挙げ、チャンピオン候補の筆頭と言ってよいだろう。昨年、WRCに復帰したトヨタは、エストニア人の若手ドライバー、オット・タナックを新たに迎えた。モンテカルロ、ツール・ド・コルスで2位、アルゼンチンではトヨタ加入後、初勝利を挙げるなど、トヨタ陣営の中では一番の活躍をみせている。ヒュンダイのティエリー・ヌービルも好調なひとり。安定したパフォーマンスを見せるi20WRCを武器に、昨年もチャンピオン候補のひとりだったものの、安定感に欠きランキング2位に終わる。オジェ、ヌービル、タナックの3人が今年のチャンピオン争いの主役と言ってもいいだろう。
5月17日(木)にスタートしたWRC第6戦のポルトガルは、今年で52回目の開催となる歴史あるラリー。北部のポルト近郊が舞台のグラベルラリーで、スムースな路面と熱狂的な観客が詰め掛けることで有名。ポルトガル発祥の地、ギマランイス城をスタートしたラリーはラリークロスのサーキットであるロウサダサーキットでのスーパーSSがオープニングステージ。ここでトップに立ったのがトヨタのタナック。前戦アルゼンチンで完璧な勝利を挙げただけに、ポルトガルでも優勝候補筆頭と目されていたのだが、今年のポルトガルはいつもと違う路面にタナックを含めた各クルーが苦しめられることに……。
本命トヨタが立て続けにリタイア
明けて金曜日のデイ1。SS2でタナックはまさかのリタイア。路面に掻き出された大きな石にヒットした後、油温が上昇しマシンを止めることになってしまう。続くSS3では同じトヨタのラトバラもクラッシュ、リタイヤとなる。主催者がコース整備のために大量の砂を路面に投入したことによって路面が柔らかくなり例年よりも路面が荒れてしまったのだ。出走順1番手となったオジェは不利な砂利掃き役にも関わらずSS4で4位につけるもSS5でコースオフでリタイヤ。波乱続きの金曜日をトップで終えたのはヌービル。使い切ったタイヤがこの日の激しさを物語っていた。
デイ2は前日までと変わっていつも通りのスムースな路面となるも、午後からは一部で雨が降りタイヤ選択が難しい1日。この日も磐石の走りでヌービルがトップを守り、2位にエバンス、3位にスンニネンが続く。ヌービルとエバンスの差は39.8秒。デイ3は約51キロという短さ。ヌービルが圧倒的有利で最終日を迎えることになった。
数万人のギャラリーが押し寄せるビッグジャンプで有名なステージ「ファフェ」を含む約50キロを残すだけとなったデイ3。エバンスに大差を付けたヌービルが貫禄の走りでスウェーデン以来となる今季2勝目を挙げた。エバンスも終始安定した走りで2位。激しい3位争いは、WRカーでの参戦わずか6戦目のスンニネンが激しくプッシュし続け3位に入り、トップカテゴリーでの初表彰台に喜びを爆発させていた。
オジェがリタイアしたこともありヌービルがオジェに19ポイント差をつけ逆転、ランキングトップに立った。速さは見せるものの、安定感を欠くトヨタ。ポルトガル終了後、クラッシュ続きのクリス・ミークの参戦中止を発表したシトロエン。今後の動向を予想するにはいささか早計だが、Mスポーツフォードとヒュンダイが一歩抜きん出たように感じられた。