
今季ニュル24時間のBMWは?
ル・マンとスパと共にヨーロッパ三大24時間レースとして根強い人気の「ニュルブルクリンク24時間レース」。世界最大の草レースと称されていたのは遥か遠い昔。昨今は特にFIA GT3マシンでSP9クラスに参戦するドイツ・プレミアム勢は、このレースに社運を賭けていると言っていい程に情熱を注ぎ続けている。
それはBMWはもちろんのこと、アウディやメルセデスAMG、ポルシェら各ブランド自慢のスポーツカーをはじめ、すべてのモデルをこのノルドシュライフェに持ち込んで過酷なテストを重ね、世界中のオーナーへと届けているからなのだ。

DTMドライバーのアウグスト・ファーファスはシェルカラーのM6をドライブ、ニュルの総合優勝経験者でもある彼は、妥協を許さないチームリーダー的存在。実はシェルのニュル24時間プロジェクトは急遽決まったという。タイヤはヨコハマを装着。
さて今年のBMWモータースポーツの体制だが、SP9に2台のM6 GT3を送り出したローヴェレーシングには、WEC(世界耐久選手権)やアメリカIMSAシリーズ、ル・マンにも参戦するマルティン・トムチックを筆頭に、DTMからフォーミュラEへ移ったトム・ブロムクヴィストらインターナショナルで活躍するドライバーをラインナップ。また、シェルカラーのM6にはDTMドライバーのアウグスト・ファーフスやベテランのマルクス・パルタラらが乗り込んだ。
BMWが力を注ぐ若手育成プログラムでは、3名のジュニアドライバー達とWTCR(FIA世界ツーリングカー・カップ)で有名なトム・コロネルがタッグを組んでM4 GT4でフィニッシュを目指す。一方、VLN(ニュル耐久シリーズ戦)でも大活躍中のM235レーシングは15台もエントリー。またニュルの定番となっている、チームが独自に改造したM2をはじめ、3シリーズ、M3 CSL、M3 GTR、懐かしいE36の318i等、新旧さまざまなBMWファミリーが勢揃い。数多くのアマチュアドライバーがクラス別に熱戦を繰り広げる。
最多勝利&最多出場を誇るBMW
実はBMWのカスタマースポーツの歴史はとても長い。BMWを愛する顧客がもっと気軽にレースに参加できるようにと、1972年のBMWモータースポーツの誕生から間もなく開始されたシステムで、自らのワークスチームと並行して顧客チームのサポートに力を注いでおり、そのスタイルは時代を超えていまも大切に受け継がれている。

ヨギーの愛称で親しまれ、昨年までBMW Team Studieで荒聖治選手と共に日本のSUPER GT選手権で活躍したヨルグ・ミュラーが友人らと共にZ4 GT3をドライブ。BMWワークスドライバーではなくなったものの長年のファンから強く支持されていた。
そんな長い実績からニュル24時間史上ではBMWが最多の19回の総合優勝を獲得、クラス優勝が182回、しかも大会スタート当初から2017年までに1622台ものBMWが参戦するなど、他メーカーに比べても群を抜いている。ファンのみならず、これほどにも参加者からも強く愛されるブランドがあるだろうか? ドレスアップしたご自慢のBMWでレースを観戦しにやって来るファンの多さに頷ける。こうした一体感もまたニュルの楽しみでもあるのだ。
今年からル・マン24時間レースのように斜めの整列方式となり、ポールポジションから147台ものマシンが並ぶと、とても最後尾まで見渡せぬほどの長い列となった。満席のグランドスタンドとコース脇でテントを張るファンら21万人以上のスペクテイターらの大歓声のもと、ニュル24時間レースは華々しくスタートした。
昨今ではパッケージツアーなどで日本からも多くのファンが応援に駆けつけるニュル24時間。水曜の夕方からニュル近郊の町、アーデナウで行われる「レーシングデイ」ではパレードやドライバーのサイン会、トークショーでレースウィークが幕を開け、日頃は閑静な街もお祭りムード満載。もちろん参加は無料! 木曜日からは本格的に練習走行や予選がスタートするほか、WTCRやクラシックレースも開催されるなど、プログラムは深夜までぎっしり。またル・マンウィナーやDTMドライバー、ワークスチームなど、世界的に有名なドライバーも数多く参戦しており、パドックで気さくにサインや撮影に応じてくれるのもニュルならでは。
今年は晴天でスタートしたものの深夜から明け方にかけて大雨に見舞われ、繰り返す強い雨と濃霧に翻弄されレースはて一時赤旗中断するなど、『グリーンヘル』ならではの波乱万丈で濃密な24時間があった。残念ながらBMW勢はトラブルが多発し、無念のリタイヤが続出。今年スポーツカーの生産が70周年を迎えるポルシェが、メルセデスAMGとの激しいバトルを制してポルシェ史に新たな1ページを刻んだ。そう、46回目のフラッグが振られたと同時に、もう47回目へのカウントダウンは始まっている。