国内試乗

ホンダ・クラリティPHEV【国内試乗】いま、もっともEVに近いPHVに

ホンダが「3in1コンセプト」と呼ぶ手法で開発したクラリティの新種、プラグイン・ハイブリッドのPHEVがいよいよ日本でも発売となった。燃料電池車とは異なり、リースではなく普通に買えるこのクルマ。クラリティの中では、一番普通に扱えることも魅力といえる存在だ。

ミドル級セダンとしての出来映えもハイレベル

量産FCV(燃料電池車)としてはトヨタ・ミライのライバルにあたるホンダ・クラリティの強みは、汎用性の高い基本骨格が採用されていること。FCV専用に作られたミライに対し、クラリティは最初からPHV(プラグイン・ハイブリッド)やEV(電気自動車)への展開が織り込み済みで、すでにアメリカではこの3タイプが揃って発売されている。

今回、改めて日本デビューとなったPHV版は総電力量17kWhのリチウムイオン電池に1.5リッターガソリンエンジンと電気モーター、それに外部充電システムを組み合わせているのだが、最大の特長は「PHEV」の名前通りEV走行可能な距離が長いことだ。JC08モードが114.6km、WLTCモードでも101kmという数値は既存のPHVと比較して断トツ。昨年、この値で最長の座を獲得したプリウスPHVがJC08モードで68.2kmだから、実に1.5倍以上の〝アシの長さ〞を実現していることになる。

リチウムイオンバッテリーと12VのDC-DCコンバーター、バッテリー制御用のECUで構成されるIPU(インテリジェントパワーユニット)は床下にレイアウト。水冷冷却システムの採用などで、小型軽量化も実現。

また、エンジンと電気モーターの主従関係は欧州勢のPHVあたりとは完全に真逆。クラリティのPHV版が搭載する電気モーターのパワー&トルクは、184psと315Nm。エンジンの105ps&134Nmを大幅に上回るばかりか、FCV版のそれ(177ps&300Nm)すら凌ぐスペックが与えられている。

エンジンはアトキンソンサイクルの1.5Lガソリン。その最大熱効率は、世界トップレベルという40.5%を達成している。

実際、満充電の状態で走らせるとエンジンの出番は事実上皆無で、なおかつその必要性も感じない。今回は発売前ということで限られた環境での試乗となったが、長い上り坂が続く場面でも加速性能は必要にして十分。車重がFCV版より40kg軽く仕上がっているとあって、アクセル開度が多少大きくなる程度までなら電気モーターらしい滑らかで静粛な走りに終始する。3種類設定された走行モード切り替えで「スポーツ」を選ぶとレスポンス重視になるが、それでもエンジンが始動する機会は最小限。意図的な操作でもしない限り、その振る舞いはピュアEVとまったく変わらなかった。

また、短時間の試乗で確認した限りではエンジン始動後の静粛性も上々な模様。現実の使用環境だと発電がおもな任務になりそうなエンジンは、さすがに高回転だと相応の音を発する上に吹け上がりの質感もあと一歩。しかし、元々の遮音対策が入念なだけに日常的な環境なら存在を意識させないはず。その意味では、PHVである以前にミドル級セダンとしても静粛性のポイントは高い。

運転席のドア下部には給油と急速充電、普通充電のリッドを開閉するスイッチがズラリと並びメーターも専用デザインとなるが、基本的な仕立てはFCV版と変わらない。トヨタ・ミライほど個性的ではないが、落ち着いた仕立てだ。

FCV版も同様だが、その長い前後オーバーハングから想像される以上に操縦性もハイレベルだ。PHV版は前後タイヤ間に重量がかさむバッテリーを搭載する恩恵か、いかにも低重心なクルマらしい腰が据わった安定感が味わえる上にエンジンを搭載するフロントの重さも意識させない。足回りも、このサイズのセダンらしく穏やかな味付け。ストロークが深くなると途中からストッパーがかかったようにロールが止まる点だけは気になったが、少し飛ばす程度までならしなやかで上質な乗り心地を披露してくれた。

荷室は512Lの大容量(VDA法)で、後席にはトランクスルーも備わる。ちなみにアメリカ仕様でクラリティの3モデルを比較するとFCVが11.8cu.ft( 約334L)でPHVが15.5cu.ft( 約439L)。EVは14. 3cu.ft(約405L)。

そして、PHVのクラリティはセダンとしての機能もFCV版を上回る。床下に重量物を収めながらも、室内はFCV版と同等の広さを確保。乗車定員も5名で変わらない。その一方、荷室はFCV版より格段に広く、後席には分割可倒の機能も備わる。充電や充填の不安がない、という本来の美点まで考慮すればクラリティの中ではこのPHV版が一番手堅い選択肢なのは間違いない。唯一、日本仕様で気になる点を挙げるとすれば、それは現状だと補助金を駆使したFCV版より高価になってしまうことだろうか。

フロントグリル内の吸気口がFCVより小さくなっているが、外観のデザインに大きな変更点はない。

左フロントフェンダーに普通充電用のポートを新設。

Specification
ホンダ・クラリティPHEV EX
車両本体価格(税込):5,880,600円
全長/全幅/全高[mm]:4915/1875/1480
ホイールベース[mm]:2750
トレッド(前/後)[mm]:1580/1585
車両重量[kg]:1850
最小回転半径[m]:5.7
乗車定員[名]:5
エンジン型式/種類:LEB/直4DOHC16V
内径×行程[mm]:73.0×89.4
総排気量[cc]:1496
圧縮比:13.5
最高出力ps(kW)/rpm:105(77)/5500
最大トルクNm(kg-m)/rpm:134(13.7)/5000
燃料タンク容量[L]:26(レギュラー)
モーター型式/種類:H4/交流同期電動機
モーター最高出力ps(kW)/rpm:184(135)/5000-6000
モーター最大トルクNm(kg-m)/rpm:315(32.1)/0-2000
バッテリー種類/総電力量[kWh]:リチウムイオン/17
燃費(WLTC/JC08)[km/L]:24.2/28.0
EV走行換算距離(WLTC/JC08)[km]:101.0/114.6
電費(WLTC/JC08)[km/kWh]:6.76/7.67
減速比(第1:第2):2.454(モーター)0.805(エンジン):3.421
サスペンション形式:前 ストラット/コイル、後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前/後:Vディスク/ディスク
タイヤ(ホイール):前235/45R18(8J)、後235/45R18(8J)

フォト:宮門秀行

フォト:宮門秀行/ル・ボラン2018年9月号より転載
小野泰治

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