清水和夫のDST

シビック・タイプR vs VWゴルフGTE、タイプRである前にシビックであれ!?【清水和夫のDST】#68-4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 68:体躯は似ていても性格は正反対な2台が真っ向勝負!

フォルクスワーゲン・ゴルフGTE vs ホンダ・シビック・タイプR
TEST 03:ダブルレーンチェンジ

テストの「方法」と「狙い」

80km/hでコースに進入、障害物を回避してふたたびもとのレーンに戻るテスト。シャシーの総合性能、ESC(横滑り防止装置)など挙動安定化装置の能力をみる。そして、ドライバーが安心して操作できるかどうかも評価の対象となる。パニックに陥ったドライバーでも正確に操作できなくては、クルマが優れたシャシー性能を持っていても意味がないからだ。

 

完璧なダイナミクスのGTE。シビック・タイプRはESCとの連携にやや不安が残る結果に

VOLKSWAGEN Golf GTE
●操縦安定性:★★★★☆
●Wレーン通過タイム平均:3.34秒(2回平均)

重いバッテリーを積むゴルフGTEのダイナミクスを少し心配していたが、PHEVのハンディを感じさせることなく、普通のゴルフと同じように走ることができた。スポーツモードのような余計な制御もなく、急ハンドルを切ると、自然なステアリングフィールを感じながら、スムーズに隣のレーンに移動することができた。ESCの介入もごく自然で、速度コントロールもスムーズに行なえ、元のレーンに戻りやすかった。これは、ゴルフが伝統的に守ってきた美点といえるだろう。ホットハッチだろうがPHEVだろうが、誰が乗っても乗りやすい操縦性と安定性を持っている。余計なものもなく、足りないものもない。ダイナミクスの作り方に非凡さを感じた。

 

完璧なダイナミクスのGTE。シビック・タイプRはESCとの連携にやや不安が残る結果に

HONDA Civic Type R
●操縦安定性:★★★★
●Wレーン通過タイム平均:3.32秒(2回平均))

シビック・タイプRのダブルレーンチェンジには大いに期待していた。まるでミズスマシのようにスイスイとレーンチェンジする……のかと思ったら、結果的にはステアフィールに違和感があったり、ESCの介入が唐突なことが気になった。急ハンドルを切って隣のレーンに移動する際、舵の効きはシャープだが、ステアリングの手応えに急にトルクステアを感じたりする。元のレーンに戻る際には急にアンダーが発生し、その挙動が読みにくい。もっとESCを上手に使って速度コントロールする必要があるだろう。そもそもESCはもっと早期に自然に介入させるべきだ。タイプRである前にシビックとしての走り味を忘れないでほしかった。

ル・ボラン 2016年4月号より転載
LE VOLANT web編集部

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