
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 66
ポルシェ・マカン vs レクサスRX200t
SUV市場の真打ち対決!人気者同士の実力はいかに?
いまSUVが熱い。ベントレーやマセラティもこのセグメントに参戦するほどである。元祖SUVはサーフボードを荷台に乗せて走る アメリカのピックアップトラックがベースだったが、いまではポルシェやBMWなど欧州系プレミアムメーカーの稼ぎ頭となっている。今回テストするのはポルシェ・マカンとレクサスRX200t。スポーツカーメーカーと高級車メーカーの最新SUVの実力をチェックする。
これまでの弱点を克服し、進化し続ける両雄
スピンドルグリルがすっかりと定着して存在感を強める最新レクサスの中で、SUVの中心的存在となるのがRXだ。販売台数の約30%がRXなので稼ぎ頭であると同時に、保有ユーザーも多いので、あまり冒険できない、とチーフエンジニアの勝田隆之氏はいう。しかもアメリカでは、RXの半分以上が女性オーナーなのだ。
新型RXのボディサイズは先代モデルよりもひとまわり大きくなっているが、全幅は1900mmを切っているので、なんとか日本の都市部でも使えるサイズだ。ホイールベースは先代よりも50mm伸びているので、後席はゆったりとしている。だがダイナミクス的にはマカンのほうが短いホイールベースとワイドなトレッドを持つので、クイックな動きが試されるテストでは初めからRXが不利だった。
今回テストしたパワートレインはNXと同じ2.0Lガソリンターボ。V6ハイブリッドのRX450hも魅力的だが、ギア比を低くしてヘビーな重量に対応している。ボディは最近のトヨタの得意技であるレーザースクリュー溶接や接着技術などでしっかりと剛性を確保。エンジンはサブフレームに載せていたタイプから、エンジンの質量中心でマウントする方式に変更している。これが奏功して実際に高速周回路や往復の移動では、すべてがスムーズでマイルド、細かな振動をまったく感じさせない。まるでビロードの絨毯の上を走っているような感じだ。
新型RXはダイナミクスもポルシェと比較できるまで進化している。点数ではマカンに負けてしまったが、世界で戦うプレミアムSUVとしては魅力的だと思った。
ところで先代のRXは旋回ブレーキが苦手だった。いくら利くブレーキを持っていても、ABSという電子制御が絡むと、そのプログラムによってハードウェアの性能が支配されることがある。特に旋回ブレーキはブレーキとステアリングを同時に操作する。電子制御にはいろいろなセンサーが入力されるが、ステアリングをやや先行させると滑りやすい路面では誤判定しやすい課題は残っている。しかし、開発当初から狙ったRXのダイナミクスはポルシェまでは届かないが、充分満足のゆく結果になった。ラグジャリーなRXでもマカンの背中は見え始めた。
対するマカンは2.0Lターボのベースモデルだが、ハードウェアの性能だけでなく、PDKやPSMなど電子制御の緻密さに驚かされた。加速減速で示すPDKの正確無比なギアダウンの素晴らしさは各メディアで絶賛されているが、その理由はあまり明らかにされていない。おそらくギアボックスのクラッチ制御とエンジンの回転(トルク)制御が素晴らしくハーモナイズしていて、シフトアップもダウンも変速ショックがほとんどない。トルクコンバーターを使っていないが、このショックレスな変速はエンジンの回転数同期が完璧になされているからである。
マカンはアウディQ5と一部の部品は共用しているが、ハードウェアの性能を引き出し、緻密に正確無比で制御するのはポルシェのオンリーワンの技術ではないだろうか。対するRXの次の課題は多段化ATとその制御の緻密さだろう。マカンにはGTSまで登場し、オプションでエアサスペンションも用意される。その走りはV6ターボなら911カレラを追いかけることもできるほどだ。
RESULT
RXは弱点を克服。マカンは安定の実力を発揮
●ポルシェ・マカン:16.5/20点
●レクサスRX200t:13.0/20点