
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 66:SUV市場の真打ち対決!人気者同士の実力はいかに?
ポルシェ・マカン vs レクサスRX200t
TEST 02:ウェット旋回ブレーキテスト
テストの「方法」と「狙い」
ドライ路面からウェット路面に100km/h(±2%)で進入、半径40Rのカーブをフルブレーキングしながら曲がる。路面はハイドロプレーニングよりもウェットグリップが問われる水深5mmに設定。ABSやタイヤを含めたクルマの総合的なブレーキ性能と、シャシーの旋回性能(ラインが外に膨らむクルマは危険)をみる。
【参考データ】減速Gと横Gの平均値
マカンは減速Gと横Gが均等に配分された。ステアリングをきり込んだ瞬間に、ドライバーの意思を汲み取り、舵の利きを優先させるのだろう。RXはユーザー層にあわせてステアリングをあまり効かせられないのかもしれない。
旋回ブレーキはタイヤの摩擦力を縦と横、つまり止まる力と曲がる力に分散される。どう分散されるかはABS(電子制御)とステアリング系の剛性やジオメトリー特性などで決まる。横Gが低めなのでステアリングの利きが課題だ。
曲げるマカンと止めるRX。両車のブレーキ意思が明確に。
PORSCHE MACAN
●制動距離:47.0m(★★★★)
宇宙一利くブレーキを持つポルシェでもウェットの旋回ブレーキは油断できないテストだ。結果的にはライントレース性を重視したために、制動距離はRXよりも若干長くなってしまった。止まる性能を優先するか、ステアリングのライントレース性を優先するか──これは自動車メーカーの哲学が問われる。911やケイマンなら、その両立を狙えるが、基本設計がアウディQ5なので、どこまでポルシェの哲学を貫けるか、私も不安だった。結果は前述のとおりライントレース重視となった。制動距離が長くなっても、ステアリングの利きを重視した。直線制動ではRXよりも大きな制動力を示していたが、旋回ブレーキでは制動力を控えめにし、残ったタイヤのグリップ力を曲がるほうに振り分けている。1回目と2回目のロバスト性は合格だ。
LEXUS RX200t
●制動距離:44.5m(★★★☆)
背が高いSUVのプライオリティは横転事故などを起こさないダイナミクス性能。そのために先代までのRXはステアリングをきると舵が利かない方向にジオメトリーを設定していた。安定性とダイナミクスの両立が今までのRXではできていなかった。しかし、今回はエンジンマウントの位置をエンジンの重心近くで支持するように設計変更、シャシー性能が大幅に見直された。その結果、舵の利きと止まる性能がバランスよくなった。結果はマカンよりも一車線外側のラインをトレースしたが、重量のハンデを考慮すればやむを得ない。それよりも制動距離がマカンよりも短かったのは評価できる。ダイナミクスが確実に進化したと判断できるが、1回目と2回目のロバスト性では課題が残った。ステアリングを先行させると約20%制動距離が低下したのだ。