国内試乗

【嶋田智之の月刊イタフラ】世界イチ退屈しないSUV「アルファ ロメオ・ステルヴィオ」

スポーツカーのように軽やか

このカーズミートウェブのハギワラ編集長による「あんたはヒトとして軽々しいんだから、ル・ボランの“月刊イタフラ”みたいに軽い調子で書きなさいよ」っていう業務命令が目の前に横たわってるので、本来の僕自身のキャラとはぜんぜん違うのですがこれも仕事です。今回も軽々し……いや、軽やかにいきますよー、ライトウエイト・スポーツカーのごとく軽快に。

軽やかといえば、今回のお題はアルファ・ロメオ・ステルヴィオ、です。「えっ? ステルヴィオはライトウエイト・スポーツカーなんかじゃないじゃん!」「車重が1.8トンあるSUVでしょーに!」という声には「おっしゃるとーり!」とお答えするしかありません。でもね、ステルヴィオってば、まるでスポーツカーみたいに軽やかに曲がってくれちゃうんですよ。僕はそこにイッパツでやられちゃいました。初めて走らせたときには「えー!?」ってホントに声が出ちゃったほど。しかも今では累計では軽く3000kmを超える距離を試乗してるというのに、もっと走りたいと感じてるくらい楽しいのです。

そのめちゃめちゃファンなハンドリングを生み出してる源となってるのは、“ジョルジオ”と呼ばれるプラットフォーム。……聞いたことありません? そうです。“曲がるセダン”として定評のある「ジュリア」と同じプラットフォームを使ってるのです。フロントがダブルウィッシュボーン、リアがバーチカル・ロッド付きマルチリンクのサスペンションもストローク量こそ違えど基本的には同じ“アルファ・リンク”だし、2820mmのホイールベースも一緒。全高がジュリアより245mm高く、着座位置も190mm高く、最低地上高が65mm高いので、クルマの動きをバランスさせるためにトレッドはフロントが+54mm の1610mm、リアが+29mm の1650mmとワイドになってますが、50対50という前後重量配分も「12.0対1」という並みのスポーツカーよりクイックなステアリングギア比も、ジュリアと全く同一です。ついでにいうなら、エンジンフードやドアパネル、リアゲートなど、可能な限りアルミ素材を使ってるところも、カーボンファイバー製のプロペラシャフトを使ってるところも、ジュリアと同じだったりします。

ボディサイズは全長4690×全幅1905×全高1680mm。そして車両重量は1810kg。マツダCX-5よりほんの少し大きく、ボルボXC60とほぼ同じくらい、ですね。それを速度に乗せるためのエンジンは、1995ccの直列4気筒のマルチエア+ツインスクロール・ターボ。最高出力は280ps/5250rpm、最大トルクは400Nm/2250rpm。そうです。ジュリアでいうならパフォーマンスで4気筒ターボの最上級にあたるヴェローチェのパワーユニットがそのまま移植されています。トランスミッションは8速ATで、これまた変速比までヴェローチェと同じです。唯一、最終減速比のみ3.150/3.150から3.730/3.730へと変わってますが、それはセダンより140kg重いSUVの車体をなるべく遜色なく加速させるための、いわばバランスどりでしょうね。静止状態から100km/hまでの加速タイムはジュリア・ヴェローチェの5.2秒に対して5.7秒とほぼ瞬き2回分の違いですから、いいセンいってるじゃん! って思います。フツーに走って全く不満がないというか、わりと爽快なレベルですからね、この数値。

でも、このエンジンとトランスミッションの組み合わせの美点、そこがイチバンってわけじゃないんです。美味しいのは2000あたりから4500回転あたりまで、ずっと400Nmの最大値に近いトルクを湧き出し続ける逞しさと、5250回転のピークに向かって直線的に伸びていくパワーのハーモニー。上までギュンギュン回して「イェーイ! 興奮しちゃうぜー!」ってなタイプのエンジンじゃないんですけど、その美味しいところを上手く使い切れるようにトランスミッションがプログラムされてるおかげで、上の方まで回さなくても充分に速いし充分に気持ちいいんです。昔のアルファのエンジンように吠えたり鳴いたりはしないけど、いわゆるダウンサイジング系のターボユニットにしては吹け上がっていくときのサウンドも小気味いいから、あんまり回ってないっていう感じもなくて、回転計を見て「あれ? まだこんなとこ(回転数)?」と意外に感じることもあるくらい。パフォーマンス的にもフィーリング的にも不満はなく、なかなか楽しいエンジンなのです。そういう数値なんか気にしないでいるのがいい、っていうことなんでしょうね。

 

キミってSUVだよねぇ?

ちなみにエンジンフードを開けてビックリ。このエンジンは見事にフロントミッドシップに、それもかなり低い位置にレイアウトされてるのです。でもって、エンジンのアウトプットは、“Q4システム”と呼ばれるアルファ独自のオンデマンド式AWD機構を通じて路面に伝えられます。これ、簡単にいっちゃうと普段は後輪駆動として機能し、後輪が滑ったり空転したりすると前輪に最大50%の駆動力が配分される仕組みです。これまたジュリアのヴェローチェに設定されてるQ4システムと同じもので、それが何を意味するかっていうと、砂利道を想定して開発されたというより、もっぱらバロッコのサーキットを念入りに走り込んで開発されたモノだってことなのです。もちろん多少の砂利道や低μ路とかでも威力を発揮してくれるでしょうけど、それはオマケみたいなもので、コーナーを速く安定して走り抜けることを第一義とする4WDなのですよね。こういうプロファイルからも、いかにこれまでのSUVの概念から飛び出してるSUVなのか、何となく想像できますよね?

でも、そんなことを知らなかったとしても、走らせてみたらイッパツでわかっちゃうよ。「キミってSUVだよねぇ?」と思わずクチに出しちゃうかも知れません。何せステアリングを操作した瞬間、間髪入れずにクルマが向きを変えはじめるのです。反応がめちゃくちゃシャープ。それもそのはず、前述の通りステアリングギア比までジュリアと同じなのです。フツーのセダンで18:1とか17:1、ちょっとスポーティなクルマで15:1とか14:1あたりだっちゅーに、パリンパリンのスポーツカー並みの12:1。ハンドリングやコーナリング・パフォーマンスはこのレシオだけで決まるってわけじゃないですけど、反応の良さを示す大きな目安であることは確か。しかもステルヴィオ、ジュリア同様、サスペンションがこのクイックさを綺麗に活かせるセットアップになってるのです。わずかなロールを感じさせながら、スパッ! ヒラッ! って感じで、唖然としちゃうぐらい快くコーナーを縫って走れちゃう。アンダーステアって何? ってな勢いで。

もちろんステルヴィオにも物理の法則は作用しますから、走らせ方によってはアンダーステアを“出すこともできる”し、荷重と横Gとタイヤのグリップのバランスを超えればリア・タイヤがグリップを失いもします。でも、そうした動きは笑っちゃうぐらいハッキリと身体に伝わってきて解りやすいし、後ろが滑って「おっ!」と思ったときにはフロント・タイヤがトラクションを受け持って安定方向に引き戻そうとしてくれるから、ちっとも怖いことはありません。むしろそうした性質を活かしてワインディングロードを元気よく走ったりすると、楽しいのなんのって!

最近のSUVは押し並べてちゃんと曲がるように作られてるけれど、こんなにも“曲がる”という行為を満喫できるSUVは、こんなにも“曲がる”という行為に気持ちよさを感じられるSUVは、他にはありません。これはSUVの姿をしたスポーツカー。キレッキレ! です。

もちろんジュリアよりも室内は広々としてるし、荷物も積めます。乗り心地に関しても、他にもっと快適だったり優しい乗り味を持つSUVはいくらだってあるけど、このクルマだって楽勝で及第点。東京~神戸間もその逆も、途中で給油のために、それも意識的にサービスエリアに入った以外、全くノンストップで……なんてこともやりましたけど、疲れも軽かったです。ちゃんと“SUVとしても”しっかり機能してくれるのです……っていう表現は変かな? でも、そんな感じです。

人も乗せたい、荷物も積みたい、ライフスタイルがプアなものじゃないことををそれとなく示したい……などなど、SUVを選ぶ理由というのはいくつもあるわけですけど、そうしたモロモロに“スポーティな走りを堪能したい”という項目をちっとも無理なく付け加えられるのが、このアルファロメオ・ステルヴィオというクルマなのです。そういう意味では、世界で最も退屈しないSUVといえるかも知れませんね。

 

ALFA ROMEO STELVIO FIRST EDITION

【Specification】■全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm■ホイールベース=2820mm■車両重量=1810kg■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1995cc■最高出力=280ps(206kW)/5250rpm■最大トルク=400Nm(40.8kgm)/2250rpm■トランスミッション=8速AT■サスペンション(F:R)=ダブルウィッシュボーン:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=255/45R20:255/45R20■車両本体価格=6,890,000円

アルファ ロメオ ジャパン http://www.alfaromeo-jp.com/

フォト:山本佳吾 K.Yamamoto
嶋田智之

AUTHOR

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

注目の記事
注目の記事

RANKING