月刊イタフラ

【嶋田智之の月刊イタフラ】エンジニアに訊く「アルピーヌA110」開発エピソード

タイヤもA110専用に開発

【嶋田】そういえば、本国仕様にはタイヤに17インチと18インチというふたつの仕様がありますけど、どちらがよりクルマとのマッチングがいいんですか?

【バイヨン】「ピュアとレジェンド(日本仕様では“リネージ”)では車重に若干の違いがあるんですけど、実は17インチと18インチの違いも、そんなに強く体感できるものでもないんです。ベクトルは全く変わってないですから。開発は17インチでスタートして、それでクルマのパフォーマンスを作り上げ、後から18インチを加えることになったんです。その18インチのホイールとタイヤをクルマのパフォーマンスや性格にアジャストさせることに、かなり時間と手間がかかりました。特にタイヤはミシュランと共同開発した「パイロットスポーツ4(PS4)」なんですけど、A110の性格に合わせてキッチリと作り込んであるから、このような走りが可能になったんですけどね」

【嶋田】ということは、タイヤはA110の専用開発品で、ライフが来たら、同じ専用開発品に履き替えるのがベスト、ということですか?

【バイヨン】「そうですね。同じPS4であっても、リプレイスタイヤを使うと乗った感じが変わります。違うクルマになっちゃう感じですね。それくらいキッチリと作り込んであるので専用開発タイヤ以外は履かせないで欲しい、と個人的には思ってるくらいです」

【嶋田】ちなみにA110、どういう方に乗って欲しいですか?

【バイヨン】「スポーツカーに乗り慣れてる人。コーナリング性能を高めるために足がガチガチだったり、かなり高いスピードで走らないとクルマとして楽しくなかったり、そういうのに飽き飽きしてる人。そういう方々には特に試してみていただきたいです。……もちろん区別なく全ての人に楽しんでいただきたいというのが大前提ですけどね。というのも、A110は高速域はもちろん、低速域でもものすごく楽しめるクルマです。楽しさに簡単に辿り着ける。そこがひとつの素晴らしいポイントですから。
ちなみに、当初はこんなに速いクルマになる予定じゃなかったんですよ。最高速度250km/hというのは、リミッターで抑えた数値です。実は0-100km/h加速4.5秒というのはマーケティング的な理由で、同価格帯のライバルを考えるとそのくらいなければダメという目標設定でした。が、最高速は別。ボディの空力特性がよくて、望外に伸びちゃったんです。そういう領域にいかなくても充分に楽しいんですけどね」

【嶋田】最後に、日本のアルピーヌが好きな人へのメッセージをお願いします。

【バイヨン】「GTカーのようなポルシェ・ケイマンがあったり、もっとスパルタンなアルファ・ロメオ4Cやロータス・エキシージのようなスポーツカーはあるけど、毎日使えるクルマでありながらサーキットでも楽しめて、あらゆる場面でコントローラブル、つまり安全というクルマは、少なくともこの価格帯には他にはなく唯一。それがA110というクルマです。私たちは他にはないクルマを作りました。どうかそれを楽しんでいただきたいと思います」

フォト:山本佳吾 K.Yamamoto/嶋田智之/アルピーヌジャポン
嶋田智之

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