清水和夫のDST

メルセデス・ベンツ C220d vs フォルクスワーゲン パサート、使ってよし! 走ってよし! の実力派セダン対決【清水和夫のDST】#69-1/4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safty Test)

Number 69(SEASON.5):使ってよし! 走ってよし! の実力派セダン対決

メルセデス・ベンツ C220d アバンギャルド vs フォルクスワーゲン パサート TSIハイライン

日本でもっとも売れているセダンはトヨタ・クラウンだが、その多くは法人需要。二番目はなんとメルセデス・ベンツCクラスで、今回はセダンの王道を歩むCクラスにディーゼルを搭載したC220dと、フォルクスワーゲン・パサートを比較してみた。MQBプラットフォームのパサートはCクラスよりも安価だが、セダンとしての機能性は充実している。DSTは今回で一旦幕を閉じるが、有終の美となる名勝負が繰り広げられた!

深化・熟成した2.2L4気筒ディーゼルを搭載するC220d

過去に連載していた『NAVI』時代のDSTで、初めてメルセデス・ベンツ190をテストした時には感動を覚えた。その完璧なダイナミック性能を体感したとき、思わず「宇宙一」という言葉が口をついて出てしまったほどだ。そんな190をルーツに持つだけに、4代目Cクラスはメルセデスの現行ラインナップの中でも格別のダイナミック性能を備えていると信じてテストに臨んだ。

しかし、メルセデスといえどもタイヤが偏摩耗していては、手も足も出ないことが明らかになった。特にウェット旋回ブレーキでは本領を発揮できずに終わってしまった。だが、ダブルレーンチェンジで見せた完璧なESPのチューニングには、依然としてライバルメーカーが見習うべき点は多くある。
いわば、そこには独自の安全思想が徹底して貫かれていて、理念が現実の性能と完璧に一致している。タイヤの溝が残っていたら……と悔いは残るが、まだ使えるレベルの残溝なので、減ったタイヤでの性能もメルセデスの実力の範疇と考えることにしよう。
やはり気になるのはディーゼルエンジンだ。フォルクスワーゲンのスキャンダルが日本市場にどう影響するかが懸念されたが、マツダがディーゼルのイメージアップに貢献しているからか、思ったほど影響はなかったと感じる。
そう、世界中でディーゼル技術はどんどん進化しているのだ。この記事を書いているのは、新型Eクラスの新世代ディーゼルを試乗してきたばかりのタイミングなので、Cクラスに搭載される2.2Lディーゼルが音や振動面でやや古く感じてしまったのは事実だが、Cクラスのディーゼルはとても実用的で、加速もトルキーで頼もしい。現行モデルから9速のトルコンATが採用されたことで、高速走行ではエンジンの回転数が下がり燃費も改善されている。テストコースで試すと130km/hくらいにならないと9速には入らないが、いったん入ってしまえば100km/hでのクルーズが可能だ。東京から福島までの往路では20km/Lの好燃費も記録している。
また、Cクラスはドライバーアシスト機能にも世界屈指のテクノロジーが採用されている。テストコースで体験できたのはACCとレーンキープ。前者はスイッチが扱いやすく、後者は電動パワーステアリングとESPのブレーキ制御の緻密な連携により完璧なレーンキープを可能にしてくれる。

随所に見られたパサートの底ヂカラ

一方のパサートは、各項目の合計点数ではCクラスよりも高い結果となり、アッパーミドルサルーンの平均値以上のダイナミック性能を有しているといえる。ハンドリングも素直でスポーティだ。乗り心地もよく快適な走りが味わえるが、Cクラスと比べると高速走行中の風切り音がやや気になった。現行モデルはエッジの効いた新デザインで登場したが、ノイズ面では課題が残されている。
パサートでもっとも感心したのは、ドライバーアシスト機能のレーンキープだ。電動パワーステアリングのアシストが明確で、自動的にレーンの中央にガイドしてくれる。逸脱しそうになるとしっかりと元の位置に戻してくれ、インフォメーションも正確。スポーティな走りへの順応性もいい。
価格は100万円ほど違うが、2台のダイナミック性能に大きな差はなかった。その意味では、パサートが善戦したといえるだろう。

 

Result

価格の違いを踏まえるとパサートの実力は高評価
●メルセデス・ベンツ C220d:13/20点
●フォルクスワーゲン パサート:13.5/20点

 

リポート:清水和夫 フォト:篠原晃一 ル・ボラン 2016年6月号より転載
LE VOLANT web編集部

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