清水和夫のDST

フォルクス ワーゲン・パサート GTEアドバンス vs トヨタ・カムリ G レザーパッケージ、トヨタとVWのミディアムセダンが対峙!【清水和夫のDST】#86-1/4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number86(SEASON.9):世界をリードするトヨタとVWのミディアムセダン両雄が対峙する

フォルクス ワーゲン・パサート GTEアドバンス vs トヨタ・カムリ G レザーパッケージ

アメリカファーストで開発され、セダン人気が低調な中、日本でもフルモデルチェンジを受けたカムリ。北米でも生産されるが、日本製の右ハンドル仕様はハイブリッド化されて登場した。一方のパサートも北米市場で健闘するVWの中心的存在として屋台骨を支えるモデル。今回、カムリとの対戦を意識してPHEVを選択し、いざ日独ハイブリッドバトルの開幕である。

エンジンのカムリとシャシーのパサート

カムリとパサートの対決は、見どころがいくつもある。両車ともにハイブリッドモデルだが、パワートレインは大きく異なっている。それだけに注目しても興味深いが、トヨタとVW、両社の思想の違いが明確に反映されている。
カムリのハイブリッドシステムは2モーター方式だが、パサートは1モーターのプラグインシステム(バッテリー容量的には圧倒的にパサートが贅沢な使い方をしている)だ。エンジンは、カムリが急速燃焼を実現した高効率型の2・5直4の自然吸気ユニットを新導入したのに対し、パサートはお馴染みの1・4直4ターボとDSGを組み合わせている。視点をプラットフォームに移しても、カムリは新プラットフォームであるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を同クラスで初採用したが、パサートはゴルフで実績があるMQB(モデュレーン・クヴェア・ヴァウカステン=横置きエンジンのモジュールシャシー)を用いている。

まさに未来を目指したカムリと、コンサバを貫いたパサートという構図が見えてくるが、驚いたのは先代モデルから大幅に進化し、欧州車と戦える実力が備わったカムリの方だった。やはりTNGAの恩恵は大きいようで、ドライビングポジションが低く、気の利いたスポーツセダンに乗っているようなフィーリングに仕立てられていた。ややハンドリング性能を意識し過ぎているせいか、乗り心地は硬めなのが気にはなったが……、もちろんトピックはそれだけではない。

トヨタ新開発の2.5L直4は今のところ世界一の効率を誇る

新開発の2.5L直4は、マツダのスカイアクティブXにも負けないくらいの高効率なユニットだ。今のところ世界一の効率を誇っており、トヨタは大々的にPRしていないから地味な存在となっているが、コア技術となる急速燃焼はトヨタのガソリンエンジンのデファクトスタンダードとなるだろう。
この先進的エンジンに2モーターのハイブリッドシステムを組み合わせているので、パワートレインでは完全にカムリの勝利と言えそうだが、シャシー性能についてはもう少ししなやかさ(サスペンションとタイヤ)が欲しいと思った。スポーツカーのような運動性能は確かに魅力的に映るが、セダンだけに癒し系の乗り味も大切にして欲しいところだ。

逆にパサートGTEのシャシー性能、特にハンドリング特性は想像以上に好印象だったものの、1モーターのプラグインにはやや不満が残った。大容量バッテリーにフル充電すると、35km前後のEV走行が可能となるが、こまめに充電しないとその御利益に与れない。ちょこちょこ充電するなら、そこに気を取られてハンドリングの良さが希薄になってしまうように感じた。個人的には東京モーターショーで披露されたパサート・ディーゼルに注目している。洗練されたシャシー性能とディーゼルの組み合わせは理想的なセダンとなるかもしれない。

セダンのお手本であるパサートの実力に肉薄

スペックを見る限り、重量ハンデがあるパサートがどこまでカムリに喰らいつくのか興味があったが、タイヤの性能が大きく貢献し、プラグイン・ハイブリッドながらそのウェイトを苦にせず、素晴らしい走りを披露した。だが、カムリの奮闘も光る。パサートより安く、軽く、運動性能に優れている。新プラットフォームはVWのMQBに負けていない。タイヤに関してはブリヂストンにもっと頑張ってもらうしかないが、2.5Lのエンジンは世界一の熱効率を誇り、2モーター・ハイブリッドの伴侶として存在感を放っている。
点数ではウェットで差がついたが、カムリの健闘を讃えたい。

RESULT

世界のパサートに野心的に挑んだカムリの奮闘が光る
●トヨタ・カムリ Gレザーパッケージ:15/20点
●VWパサートGTEアドバンス:17/20点

リポート:清水和夫/K.Shimizu フォト:篠原晃一/K.Shinohara ル・ボラン 2018年1月号より転載

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