
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number91(SEASON.10):Sクラスや7シリーズと比肩する!? ジャパンプレミアムサルーンの実力
ホンダ・レジェンド・ハイブリッドEX vs レクサスLS500h Fスポーツ
ホンダ・レジェンドとレクサスLSは日本が誇る高級サルーンの代表格だ。今回のテスト車両はともにハイブリッドモデルで、先進的でありながら強力なライバルたちに対しても実に独創的でユニークなテクノロジーを持つ個性派。世界目線で見るとアドバンテージはLS500hにあるように思えるが、意外な結果が待っていた。
世界に誇れる独自の技術、高級サルーンの日本車対決
ホンダ・レジェンドとレクサスLS500h。ユニークな電動化を果たした高級サルーンだ。日本車はモノマネが上手いと、揶揄された時代からすると想像もつかないくらい、その独創的なシステムは世界に誇れるレベルにある。
レジェンドに搭載されているのは、フロントにひとつ、リアアクスルの左右にふたつのモーターを配置したスポーツハイブリッドSH-AWDだ。電動4駆でありながら、旋回性能もモーターでアシストできるのが特徴である。3モーターはパワーユニットとしてだけでなく、駆動のトルク配分、旋回アシストを同時に制御しているわけだが、ビッグマイナーチェンジで、システムの熟成が躍進。世間一般ではやや年寄り臭い?イメージで捉えられているレジェンドではあるが、技術の中身は実に先進的なのである。
加えて、ボンディング技術でボディ剛性が高められており、それでいてガチガチのスポーツカーのようなサスペンションではないから、ロールとヨーの出方がとても自然だ。
自然吸気のマルチシリンダーに、7速DCTが組み合わされ、ハイブリッドシステム自体も燃費重視型ではないため、パドルシフトを操作して走るとかなり楽しめる。もちろん高級サルーンらしい、上質な乗り心地も備わっている。スポーティでセクシーなグランドツアラーとして、想像以上の実力派なのである。
レクサスは高級サルーンとしての意地を感じさせる高品質さ
レクサスLSは、日本を代表する高級サルーンとして、世界の強豪を相手に戦うために、新プラットフォームで開発されたグローバルカーだ。日本ではショーファー的な使われ方が多いが、新型は先進の運転支援技術などを搭載し、ドライバーズカーとして生まれ変わった。従来のショーファーカーとしての乗り心地を重視する手法をそのままに、ダイナミクスを追求したが、結果は両得にならなかった。新開発のV6ターボを積むガソリン仕様もラインナップされるが、今回はハイブリッド仕様のFスポーツをテストした。
低速域ではモーター主導で走るものの、比較的すぐにエンジンが始動するハイブリッドシステムだが、高速周回路の走りは高級車然とした乗り心地で、先代と違ってかなりスポーティだった。テスト車両に装着されていた20インチのランフラットタイヤは、テストコースの路面の微妙な凸凹をシビアに拾ってくるので、他のグレードでは感じないような硬さを感じてしまったが、これは個体の問題かもしれない。個人的には、新開発のV6ターボが気になる存在であり、機会があればガソリン仕様のLS500もDSTで試してみたいところだ。
インテリアの作り込みはメルセデスやBMWも舌を巻くほどの仕上げの良さを感じさせた。動的な性能では負けても、この分野では譲らないというか、譲れない意地のようなハイクオリティを漂わせていた。
ボディ剛性と電子デバイス、タイヤの性能が大きく影響
テスト全体を通して、レジェンドの健闘が目立った。その運動性能は確実に進化していたし、ミシュラン製タイヤの優れたウェット性能を含め、モーターベクタリングの効力が大きく、先代モデルよりもかなり洗練度が増した印象だ。
一方のLS500hは、最上級車としてのラグジャリー性とスポーツ性のバランスに苦労した感じが見て取れた。トランクスペースの関係でランフラットタイヤを履くこともあり、ウェット性能が物足りなかったのは残念だ。また車両重量に対するステアリング系のダイレクト感も希薄で、退屈な高級サルーンからの脱皮を狙ったが、結果はもう一歩だった。
RESULT
ラグジャリー性とスポーツ性を両立したレジェンドが大健闘
●レクサス LS500h F Sport:14.5/20点
●ホンダ・レジェンド Hybrid EX:16/20点