新世代パワートレインで活発かつ若々しい印象に
ロングセラーモデルのフィアット500が持つポップな世界観を踏襲しつつ、広い居住空間の使い勝手に優れたモデルとして人気のクロスオーバーがフェイスリフト。見かけだけでは分からないその進化ポイントを、公道試乗でチェックしてみよう。
少し眼力が強くなって引き締まったような感じ……かな? と、パッと見ではそれくらいで、派手には変わった印象のない、新しいフィアット500X。けれど今回のマイナーチェンジでは、実は色々なところに手が入ってる。目元がクッキリしているのは、ヘッドランプユニットの中にあるデイタイムライトが、昨今の“500”のロゴと同じように円形の上下の輪郭を強調したものになったから。何となく逞しく思えるのは、前後のバンパーがラフな道での走行を連想させるタフなデザインに変わったから。フロントのドライビングランプがデイタイムライト同様“( )”の字を強調したものとなったこと、リアコンビネーションランプも上下分割でセンターがボディ同色に抜けていることなども、“あれ? 変わった?”と思わせる新しい要素。それでも2014年にデビューして以来の、500Xならではの雰囲気が妙な方向に崩れていたりはしない。そのあたりのさじ加減、フィアットは本当に上手いなぁ、と思う。
インテリアの方はエクステリア以上に変わった印象が薄いのだが、メーターナセルの中のレイアウト変更など、いくつかアップデートされており、装備類についてはデュアルゾーン式のオートエアコンやフロントのシートヒーター、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応したタッチパネル式インフォテインメントシステム、リアカメラ、衝突被害軽減ブレーキ付前面衝突警報や車線逸脱警報などの安全装備が全車に標準装備となる。上級の500Xクロスでは、クルーズコントロールがアダプティブ式、シートがレザーとなり、シフトパドル、ブラインドスポットモニター、フロントパーキングセンサーが備わる。全体的に充実した印象だ。が、チンクエチェント同様、ダッシュパネルがボディ同色となる独特の雰囲気は変わらずで、無理に安っぽい高級感のようなものを演出しない独特の雰囲気のよさは健在。世界観は護られている。
ならば、最も大きく代わったのはどこか。それはパワーユニットである。オールアルミ製の1.3Lターボエンジンは、“ファイアフライ”と呼ばれるフィアット・パワートレイン・テクノロジー謹製の新世代ユニット。これまでと異なる燃焼室形状に対する考え方を採り入れたりマルチエアをさらに進化させたりすることで、この500X用としては従来の1.4Lマルチエアターボより11 ps増の151ps、40Nm増の270Nmを発揮している。