S660をベースにクラシカルなスタイリングへカスタマイズ!
ホンダアクセスが2016年の東京オートサロンに出展した「S660ネオクラシックコンセプト」は、レトロでキュートなスタイルで人気を博していた。それをもとに誕生したのが今回紹介する「S660ネオクラシックキット」である。これはユーズドカー装着を想定するという珍しいパーツキットなのだ。

S660ネオクラシックは、フェンダー、フロントバンパー、ヘッドライト、グリル、フロントフードを交換することでノーマルとは全く異なる雰囲気に。丸型のヘッドライトは’67年に発売された「N360」を彷彿とさせる。なお、エンジンやインテリアに変更点はない。
クルマ好きである以上、走らせて楽しいクルマに乗りたいものだ。そして、できることならありふれたクルマでなく、自分の個性や好みをほんのりと匂わせることのできるクルマに乗りたい。世界で最もミニマムなミッドシップスポーツカーであるホンダS660は、そういう意味ではまさにうってつけの存在だと思う。発案から市販に至るまでの開発に従事した人達の熱く深いストーリー。唯一無二の存在感。実際にドライブしたときの爽快なフィール。車体や排気量の小ささからすれば意外なほどのコーナリングスピード。クルマ好きとして気持ちを素直にシンクロさせられる要素がたくさんある。スポーツギアとしても日々の気分転換の相棒としても、実に気持ちよくつきあえる1台なのだ。
そのS660を素材にしてホンダの純正アクセサリーメーカーであるホンダアクセスが手を入れた、“S660ネオクラシック”。それがなかなか面白い。日本の歴史的な名車であるS600/S800あたりを連想させる、丸型ヘッドランプの柔らかな顔つき。オリジナルのS660よりもクーペらしい塊感を見せる、ルーフからテールへの意匠。どことなく懐かしさを感じさせる、丸形テールランプを持つリア周り。シャープな雰囲気のS660から全く別のクルマへと変貌を遂げている。懐かしいような新しいような、何ともいえないなごやかさに心惹かれる。
希少性の高さからくる満足感は、かなり高いはずだ
このスタイリングは、2016年の東京オートサロンで公開されて話題となった“S660ネオクラシックコンセプト”のデザインを、ほぼそのまま再現したもの。あえて分類するならボディキット装着車ということになるのだろうが、その構成は単純にキットだとかドレスアップパーツとはいい切れないほど大掛かりだ。何しろドアとソフトトップを除く全てのボディパネル、エクステリアパーツを交換することになるからだ。
けれど、さすがはメーカー系の仕事。外板パーツ全交換であるにも関わらず、それらは車検証の記載事項変更や構造変更検査が不要な箇所であるため、法的な手続きは一切不要。さらには寸法や重量などもオリジナルとほとんど変わらない。走らせてみて、ハンドリングも含めてひとつの違和感もなく“S660ってやっぱり楽しいな”と感じられたのは、だからなのだ。アフターマーケットのカスタマイズでは、こうはいかない。
ちなみにS660はボディパネルの交換を想定して作られているわけじゃないから、パーツ単体での販売はなく、ホンダのユーズドカーを扱うホンダユーテックの運営によるオートテラス城北(埼玉県)、オートテラス鈴鹿東(三重県)、オートテラス筑紫野(福岡県)のいずれかにS660を持ち込んでキットを組み込んでもらう必要がある。また、その3店舗だけで扱うキット組み込み済みの認定中古車を購入する、という方法で入手することもできる。
価格は未塗装のFRP製ボディパーツと灯火類で構成されるキットが129万6000円。さらに組み込み工賃と塗装代がおよそ80-90万円ほどだという。ベース車には別に200万円ほどの予算が必要になるわけだから、そういう意味ではハードルが低いとはいえないが、それでもこの何ともいえず優しく柔らかい独特の雰囲気や、同じクルマとはまずすれ違うことのない希少性が自分のものになる満足感は、かなり高いはず。都内を走らせて、とりわけ大人の男性と若い女性達の「おっ?」というような興味深げな視線が、ちょっと照れくさくはあったけれど??。
【Specification】HONDA ACCESS S660 NeoClassic
■全長×全幅×全高=3395×1475×1180mm
■ホイールベース=2285mm
■車両重量=850kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/658cc
■最高出力=64ps(47kW)/6000rpm
■最大トルク=104Nm(10.6kg-m)/2600rpm
■トランスミッション=CVT
■サスペンション=前後ストラット
■ブレーキ=前後ディスク
■タイヤサイズ=前165/55R15、後195/45R16
■車両本体価格(税込)=2,185,920円(HONDA S660α)
■S660 Neo Classic KIT=1,296,000円

リアデザインは、なだらかな曲線を描くファストバックスタイルに。ボディパーツは、樹脂にガラス繊維を練り込んだFRP製となる。また、パーツは無塗装のため好みのカラーに塗装できるほか、アルミホイールやデカール、エンブレムなどと合わせ、カスタマイズ可能だ。
【取材協力】
ホンダアクセス 0120-663521 https://www.honda.co.jp/ACCESS/