クルマ作りの思想が個性的なSUVを生む
ディーゼルで躍進するマツダのクルマ作りは、他とは異なる開発プロセスがあるという。いわゆるモデルベース開発(MBD)と呼ばれる手法だが、コンピュータが大量に使われる昨今のクルマは、従来の手法では迅速な開発が困難となってきている。マツダは経営が苦しい時期にコストを低減できるツールとしてMBDの実用化を目指していた。具体的にはクルマのさまざまな機能や性能を数式で紐解き、求める性能をモデル化し、徹底的にシミュレーションをすることで量産に辿り着く。例えばエンジンの場合、ECUを動かすプログラムは一千万行にも及ぶと言われているが、シミュレーションなくしてプログラムのバグを見出すことは困難なのだ。
MBDの実戦投入は、スカイアクティブ・テクノロジーがその代表格だが、CX-8の開発にMBDは大いに活用されたはずだ。MBDを用い、エンジン以外のダイナミクスにも着手、ゆえに単にCX-5のストレッチ版としてCX-8が完成したのではない。ベテランの評価ドライバーが手作業でチューニングした従来手法と、MBDで生み出したモデルに大きな差異はないことも確認されており、先に登場したGベクタリングもMBDで開発されたデバイスだ。
それにしても、マツダのクルマはいい意味で、どのモデルに乗っても同じ感覚がある。「ドアを開けて座り、ドア閉めてコクピットを確認。ドラポジを決めて……」とすべてに一貫性がある。だが450Nmのトルクを味わい深いものにするために、スロットルペダルのストロークをもう少し長くすれば、懐の深い加速感が得られると思った。この話はMBDの要求モデルの設定次第かもしれないから、人間の感覚を反映する作業は不可欠だろう。