清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number93 SEASON.10:欧州育ちのニッポンを代表するハッチバックがフランスの強敵に挑む
ルノー・メガーヌGT vs ホンダ・シビック・ハッチバック
FF車最速バトルを繰り広げているシビックとメガーヌ。新型シビック・タイプRがニュルブルクリンクで7分43秒のタイムを叩き出し、メガーヌRSを打ち負かしているが、実際のハンドリングはフランスのホットハッチのほうが暴れん坊だ。その弟分に相当するシビックハッチバックとメガーヌGTの代理対決が実現。欧州の雄に、日本の新鋭が挑む。

ともに切磋琢磨し続けるライバル同士の真っ向勝負
メガーヌとシビックはFF車世界最速の座をかけてニュルブルクリンクで壮絶なタイム争いを繰り広げている。9月現在では新型シビックのタイプRが7分43秒を記録、メガーヌRSを退けている。
世界共通のプラットフォームで開発された新型で、ようやくシビック・タイプRの存在感を示すことができたわけだが、先代までのシビックは、いち早く日本を抜け出し、グローバルカーとして成長してきたため、北米と中国、欧州と日本で異なるプラットフォームを採用してきた。日本はイギリス生産のタイプRのみを輸入し、フィット・ベースのプラットフォームにホットな2エンジンを詰め込んでいた。

新型シビックからは、日本で生産するセダンとハイブリット、英国から輸入するスタイルでハッチバックとタイプRを設定。今回テストしたのは、タイプRの弟分であるハッチバックである。
リアサスをマルチリンクで武装し、高速走行を得意とするハッチバックは、一般道でもとてもしなやかな乗り心地が印象的だ。テストコースを150km/h程度で走ると、徐々にドッシリ感が増してきて、ハイスピード領域でも乗りやすく、まさしくヨーロッパ生まれのハッチバックに仕立てられている。

ACCをセットすると加速時にCVT特有のラバーバンドフィールが顔をのぞかせるものの、実用性は高く、見た目はスポーティだが、重厚感のあるドライブフィールも好感が持てる。課題はCVTのダイレクト感アップに加え、もう少しハンドリング特性にも好感触が欲しいところだ。
メガーヌGTは伝統的なフランスのホットハッチの王道を行く
メガーヌGTは、ホットハッチとして、各部のチューニングの巧みさが際立っている。

リアサスペンションはトーションビームタイプだが、そのポテンシャルを高めるために、リアステアを採用。マルチリンクの採用はルノー日産にとって投資的に重かったのだろうが、トーションビームでも高速ステージはステアリングのレスポンスがシャープで、リアの安定性も高い。乗り心地はマルチリンクに及ばないが、ダンピングの特性が上手にフラットライドに奏功した。
テストディはほぼ終日雨だったので、リアタイヤの減り具合が余計気になったが、ESCとリアステアのおかげで、最低限の安定性は保たれていた。Uターンする時にはリアステアが逆位相に作用するため、ホイールベースが短くなったような取り回し感で小回りでき、実用性とホットハッチの走りをうまくミックスして、バランスさせている。エンジンはシビックよりも出力が高く、トランスミッションはデュアルクラッチゆえにダイレクト感があって、これだけでもクルマ好きには刺さりそうだ。

シビックは高速領域で初期ロールを感じるが、そこから踏ん張る感じ。一方のメガーヌGTはロールに一体感があって、ノーズの動きとマッチしている。これぞ、伝統的なフランスのホットハッチの王道——ファンな走りはやはり健在である。
ハイレベルな領域に棲むホットハッチのガチ勝負
評価点ではシビックに軍配が上がった。とはいえ、メガーヌのリアタイヤが5部山程度残っていたならば、どうなっていたかわからない。
シビックはCVTを採用するため、加速性能では不利だが、その一方で大切なのは官能評価。シビックはリアサスペンションを新設計するなど、足回りが見直されており、高速での直進安定性を重視して開発されたことが伝わってきた。ステアリングの操舵感は重めで、走りに重厚感がある。
メガーヌはタイヤの影響もあって、わずかな差でシビックに負けてしまったが、ハッチバックのコンクールならメガーヌは王者だろう。ピュアな走りが単純に楽しい。
RESULT
その差はわずかだがシビックがメガーヌを撃破!?
●ホンダ・シビック・ハッチバック:16.0/20点
●ルノー・メガーヌGT:15.0/20点
