
2010年の設立以来、毎年販売台数の新記録を更新し続けるマクラーレン。スポーツ、スーパー、およびアルティメットといったシリーズ展開で、全世界30のマーケットで販売されている。そんな中、2018 年における日本での販売台数は世界4位(2019 年6月現在は3位!)というヒットぶりだ。ここでは、マクラーレンの核となる、スーパーシリーズとスポーツシリーズを連れ出し、その魅力を探ってみる。
酸いも甘いも嚙み分けた大人のクルマ好きが
たどり着く究極のアンダーステートメント
マクラーレンは酸いも甘いもかみ分けたスポーツカー好事家が、最後の最後に辿り着く桃源郷のような存在だと思っている。
ポルシェ911の完成度に唸り、フェラーリのV8ミッドシップモデルに舌鼓を打ち、ランボルギーニのV12ミッドシップに歓喜した後に、さて次にいったいどこへ向かえば、自分の身体に染み込んだスポーツカーのパッションを満たしてくれるのか。そう考えた時に選択肢に挙がるのは、おそらくマクラーレンしかないだろう。

スポーツシリーズの第一弾となった570Sに採用されるカーボンファイバー製モノセルIIシャシーは、乗降を容易にするためにシルがより低くされたほか、マクラーレンを象徴するディヘドラルドアのデザインも見直されている。専用のサスペンションシステムにより、オープンロードでもサーキットでも高い操作性と洗練性を実現。3.8L V8ツインターボエンジンは、570psの最高出力と600Nmの最大トルクを発揮する。0-100km/h加速は3.2秒。
知名度の高さやブランド力や見目麗しいスタイリングや官能的サウンドなど、誰にでも分かりやすいスポーツカーがある程度の所有満足度を高めてくれるのは事実である。「やっぱ911ですよね!」「フェラーリ格好いいなあ!」「ランボルギーニ最高!」と声を掛けられるたびに、「自分は誰もが注目するスポーツカーを持っている」という自尊心の再確認が潜在的に行われるからだ。
マクラーレンはまだ、ポルシェやフェラーリやランボルギーニほど世間一般に知られていない。振り返る人がいたとしても、即座に車名を口にできる人数は限られるだろうし、ボディカラーが赤や黄色だったら「フェラーリの新型ですか?」と言われるかもしれない。つまり“外的好反応”は他のスポーツカーと比べたら期待薄である。この外的好反応も、最初の頃はちょっと気分がいいが、そのうち段々と面倒くさくなってくる。すると「周りの反応なんてどうでもいい。むしろそっとして置いて欲しい。そのほうがもっと純粋に運転を楽しめる」と思うようになる。ポルシェやフェラーリやランボルギーニと互角以上の性能を持ち、知る人ぞ知るというアンダーステートメント的ブランド力を有するクルマといったら、もうマクラーレンしかないというわけだ。ポルシェ/フェラーリ/ランボルギーニの販売台数でも世界上位に入る日本だから、マクラーレンが好調なのも当然なのである。
マクラーレン・オートモティブは1993 年に名車マクラーレンF1を限定生産で発表したが、量産型の製造・販売を本格的には開始したのは2010 年。翌年に誕生したのがマクラーレン12Cである。創業9年目の若い会社にもかかわらず、商品企画力や開発力はずば抜けており、12Cの後にも12Cスパイダー、P1、650S、650Sスパイダー、675LT、P1GTRと矢継ぎ早に市場へ投入。2015 年には待望のエントリーモデル、スポーツシリーズの570Sと540Sが加わった。そして2017 年、650Sの事実上の後継車となる720Sが誕生、翌年には720Sスパイダーもスーパーシリーズの仲間入りを果たした。
ちなみにマクラーレンのスポーツシリーズは600LT/570S/540C、スーパーシリーズは720S、アルティメットシリーズはセナGTR/スピードテール/P1GTRという分類がされていたが、今年発表となったマクラーレンGTは、これら3つのシリーズとはまた異なる位置付けのグランドツアラーだそうである。
主役はクルマではなくドライバー
今回借り出したのはスポーツシリーズの570Sクーペと、スーパーシリーズの720Sスパイダーである。570Sと720Sの違いはザックリ言えばエンジンとシャシー構造にある。
570Sの“モノセルII”はCFRP製のいわゆるバスタブ構造で、前後のバルクヘッドとキャビンのフロアが一体型となっている。重量はわずか75kgしかなく、ボディ中心部が極めて頑強な作りになっている。720Sは“モノケージII”と呼ばれ、570SのモノセルIIにAピラー/ルーフ/Cピラーまでが一体になったような構造が特徴である。720Sスパイダーはオープンなのでルーフの前後方向に伸びる部分が省かれているものの、追加の補強は必要なかったという。

軽量で極めて強度に優れたモノケージII-Sのカーボンファイバー製のコア部分には、ロールオーバー・プロテクション・システム(ROPS)を一体化。特許取得の新たなカーボンファイバールーフシステムは電動式で、開閉時間はわずか11秒。50km/hまでであれば走行時の開閉も可能だ。4L V8ツインターボエンジンは、720psの最高出力と770Nmの最大トルクを発生。0-100km/h加速は720Sクーペと同様の2.9秒をマーク。
エンジンは570Sが3.8LのV8ツインターボ、720Sが4LのV8ツインターボで、車名の数値がそれぞれ最高出力を示している。車検証によれば、570Sは前軸重610kg:後軸重840kg(計1450kg)、720Sスパイダーが同620kg:850kg(計1470kg)。ミッドシップなのでリアが若干重いものの後輪にしっかりと荷重かかかって最適なトラクションを得やすい。いずれにせよ、どちらも1500kg以内に抑えているのは流石である。
加速感は当然のことながら720Sのほうが力強く実際の速度上昇も早いものの、ペダルに対するレスポンスやパワーデリバリーの感触は両車に大差がない。右足の動きと後輪のトラクションのかかり具合が、まるで直接つながっているかのようにシンクロしており、わずかな動きにも踏み込む速度にもきちんと反応する。それでいて適度な踏力が必要だから、ナーバスで扱いにくいということもない。
このダイレクト感は操縦性でも感じる。目で見た視覚情報がいったん脳に送られてから両手に伝えられてステアリングをさばき、するとタイヤが動きコーナーリングフォースが立ち上がって車体が向きを変え始める。この一連の流れが実にスムーズで、途中でリズムが乱されることなくまさに思う通りにクルマが動くのである。もっと微細なコントロールがしてみたくなったらハンドリングモード/パワートレインモードをそれぞれいじってみればいい。570Sならノーマル/スポーツ/トラック、720Sならコンフォート/スポーツ/トラックから好みのセッティングを選択できる。
720Sはそのままサーキットへ向かいレースに参戦してもどうにかなるくらいのポテンシャルを持つ。570Sはオンロードで最高のパフォーマンスが引き出せる。いずれも、あくまでも主役はクルマではなくドライバーであり、意に背いたりおせっかいなサポートは絶対にしない。純粋に運転が楽しめる。これこそが、マクラーレンの真骨頂なのである。
【SPECIFICATION】MCLAREN 570S COUPE
■全長×全幅×全高=4530×2095×1202mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1313kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/3799cc
■最高出力=570ps(419kw)/7500rpm
■最大トルク=600Nm(61.2kg-m)/5000-6500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/35R19:285/35R20
■車両本体価格(税込)=26,725,000円〜
【SPECIFICATION】 MCLAREN 720S SPIDER
■全長×全幅×全高=4543×2059×1196mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1332kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/3994cc
■最高出力=720ps(527kw)/7500rpm
■最大トルク=770Nm(78.5kg-m)/5000-6500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/35R19:305/30R20
■車両本体価格(税込)=37,888,000円〜
新たなるヒットを予感させる新世代の
グランドツアラー「マクラーレンGT」が登場
第4のシリーズとなるマクラーレンGTが登場した。ヨーロッパ大陸横断も可能とする伝統的なグランドツアラーの特性を持ちながらも、さらなる軽量化とスピード、そしてドライバーとクルマとの一体感の向上と利便性を実現したというこのモデル、ガラス張り縦開きのリアテールゲートの下には、なんとバッグやスキー板、ゴルフクラブなどが収納できるラゲッジスペースを用意する。GTシリーズが新たな顧客層を獲得するのは間違いない!?
【問い合わせ先】
マクラーレン東京 03-6438-1963
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