2020年型GT-Rは求める価値のある1台だ
軽量化はバネ下のみならず上屋の側も顕著だ。ボンネットやトランクリッドに加えてルーフパネルやフロントフェンダーもカーボン材を使用、新骨格を使用したレカロ製シートなども加わり、13kg以上の減量を達成。前述のバネ下と合わせると前型=2017年型ニスモ比で30kg車重が軽くなったかたちだ。これに合わせてサスセットは大きく変更され、ダンパーレートを柔らかくしながらリアスプリングレートを固めるなど、車体前後の減衰特性を同調させながらクルマの動きをよりリニアなものとしたという。
他にもタービンブレードを最新解析により形状を高効率化して慣性質量を14.5%低減、タイヤのコンパウンドや設置面形状やパターンにも細かく手を加えコーナリングフォースを5%高めるなど、小変更は車体の隅々に及んでいる。ちなみに出力関係のスペックは標準車、ニスモ共に変わらない。
ニスモには、そのルックスから身構えるような手強さは一切ない。地上高関係に少しだけ注意していれば後は標準車同様に扱える。タービンイナーシャの改善もあってかトルクのピックアップは2017年型ニスモよりも若干向上しており、低回転域のフレキシビリティさえ標準車にほど近い印象だ。
そして驚くのが乗り心地だ。鋭利な凹凸に出くわさない限り、連続的なギャップ由来のピッチングや轍絡みのワンダリングなど、従来のGT-Rが苦手としていた場面でも見事に滑らかなライド感を示してくれる。もちろんバネ下の軽量化効果は劇的だが、軸ものの精度が高まったかのような印象は標準車でも感じていたことだ。
クローズドコースでの振る舞いでもやはり感じられるのは操作に対する応答精度が確実に向上したこと、加えてノーズの入りの軽さやブレーキのタッチや制動力の安定化も目に見える進化点として挙げられるだろう。パワーを確実に推進力に変えるトラクション能力や、スロットルコントロールと完全にシンクロしたパワーオーバーステアなど、GT-Rの美点はさらに磨きがかかり、もはや進化は頂点という納得感さえを抱いてしまうほどだ。12年に渡り一線級でい続けたこのアーキテクチャーの集大成として、2020年型GT-Rは求める価値のある1台だと思う。