
アルファロメオは官能への訴えかけが巧みな情熱的なブランドである。まさにジュリアは気持ちを昂らせるが、新たに新世代ディーゼルを搭載してきた。果たして機能性こそ魅力となるディーゼルと、ブランドの価値は一致するのだろうか。そこで競合するミドルセダンと比較しつつ、それぞれの走りの味わいを確かめてみた。結果として明らかになったのは、いまや機能性一点張りではないことだ。
感覚に訴えかけてくるジュリアのエンジン
情緒性を重視するアルファロメオに、機能性が魅力のディーゼルエンジンはふさわしくないという先入観があった。ところが日本で知られていなかっただけで、アルファロメオは現在のクリーンディーゼルの基盤技術といえるコモンレール式燃料噴射ポンプを、フィアットグループの電装品サプライヤーと共同で1990年代に世界で初めて開発したメーカーなのだ。
しかも、ジュリアが積む2.2Lエンジンは超軽量なことが特徴となる新開発ユニット。このユニットはスポーツディーゼルを名乗るだけあり、アクセルを踏み込むと中回転域にかけてトルクの盛り上がり感がある。エンジン性能曲線で確かめると1750rpmから2200rpmまではフラットでその先は下降するが体感は異なるわけだ。やはり、アルファロメオは情緒性を重視するだけあり感覚への訴えかけが巧みだ。
さらに、アクセルを踏み続けるとディーゼルでありながらガソリンのように回転数によってパワーを稼ぐ実感が増す。そのため加速が伸びやかで、8速ATの制御もそうした特性に合わせ走行モードが「ノーマル」なら3800rpmで「ダイナミック」なら4000rpmでシフトアップを繰り返す。グォーンという感じで響くエンジン音も迫力がある。ただ、アイドリング時はカラカラという感じのエンジン音にベルト回りのノイズが重なり、少しばかり洗練度に欠ける。それでも、走り始めれば停止時にはアイドリングストップが働くから多くの場面でノイズは意識の外に置ける。
コーナーが連続する場面を駆けぬければ、ジュリアは一体感ある走りを実現してくれる。ステアリングを切り込むとスイッという感じで向きが変わり、サスペンションが引き締められすぎてはいないのでロール進行により操作の通りにクルマが反応していることがわかりやすい。あえてボディを動かすあたり、ドライバーに何を感じさせればいいのかをアルファ・ロメオはやはりよく知っている。
320dの新エンジンは2ステージターボを採用
BMWも、ドライバーへの誘いかけが巧みだ。新型3シリーズに追加された320dは低圧ターボと高圧ターボを直列で組み合わせる新開発の2Lエンジンを搭載する。そのため、幅広い回転域で最適なエンジン特性が獲得可能だ。実際に、アクセルを踏み込むと1500rpmから明らかなトルクの盛り上がり感があり、3500rpmを超えるとエンジンの鼓動にコーンという感じの吸気音が重なり聴覚を刺激してくる。
それだけに、アクセルを踏み続けその先を確かめてみたくなる。誘われるままに右足でペダルを床に押しつけ8速ATをマニュアル操作すると、タコメーターの針がゼブラゾーンが始まる5000rpmを指すまでブン回すことさえできる。従来型の320dが積むディーゼルでは、ここまでの刺激は望めなかった。
なおかつ、試乗車はMスポーツだったのでかなり引き締まったサスペンションを装備する。路面が荒れているとスプリングが硬く感じることもあるが、ダンパーのストロークはスムーズ。そのため、ゴツゴツはしていても不快な突き上げ感には結びつかない。こうした設定が、コーナリングではステアリング操作に対するダイレクトな応答性をもたらす。コーナー進入時に素早く大きく切り込めば、その通りにノーズがズバッという感じで向きを変え快感を呼ぶ。4WDシステムのxDriveを組み合わせるにもかかわらず前後重量配分は完全な50:50となり慣性モーメントが抑えられ、フロントへの駆動力配分も最少化されているだけにタイヤの旋回力がシッカリ確保できるからだ。
ジャガーXEは、日本市場への導入以来5年を迎えつつある。ところが、マイナーチェンジ直前のモデルであったにもかかわらず時間の経過をまったく感じさせず完成度に磨きをかけている。AWDシステムを組み合わせるものの、ステアリングの切れ味は超スムーズでありフロントに配分される駆動力の影響も受けていない。
サスペンションもスムーズに動き、荒れた路面を通過しても衝撃の角を削り落すような“いなし”方をする。ボディの剛性感が、デビュー当初より高くなったのではと思えるほどだ。そのため、ゴーッという感じのロードノイズを最小限に抑え込み、室内に響くことがないので走りの質感が高まる。
ジャガー・ランドローバーが自社開発しイギリスで生産する2Lのインジニウムエンジンは、周囲の流れに合わせながら加速しても8速ATを低回転域でシフトアップさせつつ、トルクの充実ぶりを実感させてくれる。こうした場面で振動が認められず、エンジン音も耳に届かない。また、停止時にアイドリングストップした後の再始動でも、ディーゼルで不満になりがちなブルッという振動を気にならない程度に抑制している。それでいて、アクセルを踏み込めば、走行モードがダイナミックならDレンジのままでも4200rpmまで引っ張れるので伸びのある加速が楽しめる。ATをマニュアル操作すれば、トップエンドで硬質なエンジン音が重なるものの低いギアなら4800rpmまで一気に吹け上がる。最高出力は同行モデルでは控えめだが、数値ほどの差を意識せずに済む。
ヤリすぎ感さえあるC220dの強大なトルク
メルセデス・ベンツCクラスも、日本市場への導入以来5年が経過しているが、2018年にマイナーチェンジを実施。それに際して、C220dは新開発のエンジンを搭載している。従来型と比べ排気量が2.2Lから2Lとなったにもかかわらず、最高出力は24psも上乗せされ194psに到達。もはや、ディーゼルはトルク重視なのでパワーは二の次という一般論は過去の事実となったわけだ。
体感としても、アクセルを踏み続けると高回転域でパワーの頭打ちがなく最高出力を発揮する3800rpmを軽々と超える。そして、9速ATをDレンジにしたままでも4200rpmでシフトアップが繰り返される。しかも、いかにも爆発圧力が高そうな鼓動感があるエンジン音を響かせる。
むしろ、数値上の最大トルクは400Nmと従来型から変わらない。だが、低回転域でもアクセルを少し踏み足せば力強さの充実ぶりが確かめられ周囲の流れをリードできる。それどころか、走行モードを「スポーツ+」にすると2000rpmからトルクがカタマリになりドカッという感じで飛び出してくる。ただ、刺激的ではあるが少しばかりヤリすぎだ。
走りを楽しむ場面でも「スポーツ」が頃合いで、切れ味がスムーズなステアリングの手応えに少しだけ重さが加わる。コーナー進入時の応答性が正確であり、コーナリング中は4輪が路面をバランスよく接地する実感がある。メルセデス・ベンツは直進性を重視しているという一般論は間違いではないが、いまや山岳路を駆けぬける場面も得意としている。
プジョー508が積む2Lエンジンと組み合わせる新世代の8速ATは、なかなかに相性がよい。なぜかといえば、最大トルクの400Nmを発揮する回転数が2000rpmとディーゼルとしては高めなことに合わせ、市街地ではその直前を維持するシフト制御がされるからだ。それだけに、アクセルを踏みぎみにすれば力強さが速やかに立ち上がる。同行モデルが1000rpmの前半を保つことが多いため燃費への影響が気になるが、JC08モードではクラスの平均レベルは達成している。
508で特徴的なのは、ダンパーの減衰力を連続可変制御するアクティブサスペンションを備えることだ。走行モードが「コンフォート」なら、路面のうねりを通過する際にフワッという感じの縦揺れを起こすことがある。だが、次の瞬間にはそれが収まり乗り心地の快適さが印象に残る。しかも、走行モードを変えずに手応えがやや重めなステアリングを切り込みながらコーナーへ進入しても、ロールが大きすぎるといった横揺れを感じることもない。体を優しく包み込むようにフィットするシートを含め、いかにもフランス車らしいしなやかな乗り味が感覚に染み入ってくる。
いかがだろうか、ディーゼルは力強さや燃費などの機能性の高さが魅力となる。ただ、こうして乗り比べてみると、ブランドや国柄により特徴の感じさせ方が異なることが明らかになった。つまり、それだけ味わい深いわけだ。なおかつ感じ方は人それぞれなので、ぜひとも乗って確かめてほしい。
ALFA ROMEO GIULIA 2.2 TURBO DIESEL SUPER
【ENGINE】2.2Lディーゼルエンジンはステルヴィオ用よりも20psと20Nm控えめな190ps/450Nmを発生。WLTCモード燃費は17.2km/L。
【INTERIOR】2.2ターボ・ディーゼル・スーパーの装備内容はガソリン仕様の2.0ターボ・スーパーと共通。価格は556万円と、ガソリン車の13万円アップと上げ幅が小さいことも魅力。インテリアにはプレミアムレザーシート、ステッチ付のレザーインスツルメントパネル、harman/kardon製オーディオシステムを装備する。
【Specification】
■全長×全幅×全高=4645×1865×1435mm
■ホイールベース=2820mm
■車両重量=1600kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/2142cc
■最高出力=190ps(140kW)/3500rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1750rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/45R18:255/40R18
■車両本体価格(税込)=5,560,000円
【問い合わせ先】FCAジャパン0120-779-15
PEUGEOT 508 GT BlueHDi
【ENGINE】177ps/400Nmを発揮する2L直4ディーゼルを搭載。WLTCモードは16.9km/L。パドルシフトを備えた8速ATと組み合わせる。
【INTERIOR】インテリアはドライビングのためのインターフェイスとしてi-Cockpitをさらに進化させた次世代型となり使い勝手を向上。試乗車にはナッパレザーシート、サンルーフ、ナイトビジョン、フルパークアシスト&360°ビジョンなど最上級のオプションを集約した「フルパッケージオプション」が装備されていた。
【Specification】
■全長×全幅×全高=4750×1860×1420mm
■ホイールベース=2800mm
■車両重量=1630kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1997cc
■最高出力=177ps(130kW)/3750rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/45ZR18:235/45ZR18
■車両本体価格(税込)=4,920,000円
【問い合わせ先】プジョー・シトロエン・ジャポン0120-840-240
JAGUAR XE R-SPORT DIESEL AWD
【ENGINE】インジニウムと名付けられたオールアルミ製の2Lエンジンは、パフォーマンスと効率性を両立する。JC08モード燃費は16.4km/L。
【INTERIOR】今回の試乗車は2018年モデルで、スタイリッシュかつラグジャリーな雰囲気のコクピットは、タッチスクリーン式の10.2インチ・ワイドディスプレイが備わる。スマートフォン連動のコネクティビティ機能も標準装備だ。歩行者検知機能が付いた自動緊急ブレーキなど、先進の運転機能も充実している。
【Specification】
■全長×全幅×全高=4680×1850×1415mm
■ホイールベース=2835mm
■車両重量=1740kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1999cc
■最高出力=180ps(132kW)/4000rpm
■最大トルク=430Nm(43.9kg-m)/1750-2500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:インテグラルリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/45R18:245/40R18
■車両本体価格(税込)=6,150,000円
【問い合わせ先】ジャガー・ランドローバー・ジャパン0120-050-689
MERCEDES-BENZ C220d AVANTGARDE
【ENGINE】Eクラスにも搭載する2Lディーゼルは、従来型を凌駕する194ps/400Nmを発生。JC08モード燃費は18.9km/L。
【INTERIOR】2018年のマイナーチェンジでは、約6500カ所におよぶ部品改良のほか、パワートレインやテレマティクス、安全支援機能などが大幅に刷新された。インテリアは12.3インチのCクラス専用デザイン「コクピットディスプレイ」のほか、ダッシュボード中央にはワイドディスプレイを装備する。
【Specification】
■全長×全幅×全高=4690×1810×1425mm
■ホイールベース=2840mm
■車両重量=1640kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1949cc
■最高出力=194ps(143kW)/3800rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1600-2800rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=4リンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/50R17:225/50R17
■車両本体価格(税込)=5,860,000円
【問い合わせ先】ヤナセ渋谷支店/メルセデス・ベンツ渋谷03-5468-531
BMW 320d xDRIVE M SPORT
【ENGINE】新型3シリーズの2L直4ディーゼルエンジンには、BMW初の低回転域と高回転域で切り替わる2ステージターボシステムを採用。
【INTERIOR】新型3シリーズは運転支援システムを筆頭にハードウエアも全面刷新された。インパネの基本レイアウトは従来型と変わらないが10.25インチのコントロールディスプレイが従来型より低い位置にマウントされる。ホイールベースの延長やボディサイズの拡大により後席スペースも従来型より広くなっている。
【Specification】
■全長×全幅×全高=4715×1825×1440mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=1810kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1995cc
■最高出力=190ps(140kW)/4000rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1750rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/40R18:255/40R18
■車両本体価格(税込)=6,290,000円
【問い合わせ先】BMWジャパン0120-269-437