清水和夫のDST

BMW X2 vs アウディQ2 、僅差の攻防を繰り広げたバイエルンの個性派コンパクトSUV対決【清水和夫のDST】#98-1/4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 98 SEASON.11:僅差の攻防を繰り広げたバイエルンの個性派コンパクトSUV対決

BMW X2 xDrive 20i Mスポーツ X vs アウディQ2 1.4 TFSIシリンダー・オンデマンド・スポーツ

ミニのFFプラットフォームを採用したBMW X2は、乗り心地こそややハードながら本家にも負けないシャープなハンドリング特性を持ち、ドライビングプレジャーの偏差値は高い。アウディQ2はMQBプラットフォームを用いた上質な乗り味とバランスのとれた完成度を誇るSUVだ。セグメントはX2の方がひとクラス上だが、Q2は運動性能で大健闘した。

市場のニーズに応える、時勢のドイツ流SUV

BMWはミニブランドを手にするまで、FFモデルには興味を持っていなかったようだが、エンジンを横に置くFF車は全長を伸ばさずキャビンのスペースを確保できるので、最近のユーザーニーズに応えることができる。FRモデル中心では、多くのユーザーを確保できないと悟ったのだろう。

そこでミニブランドで培ったFF車のノウハウを活かして、スペーシィなX2を開発。しかも走りに関しては、2Lエンジンのツーリングカーレースで、参戦していたFRの3シリーズよりも、FFのほうが速いことに気づいたのである。
コンセプトはスポーティな走りとスペーシィなパッケージであり、しかもX2と名乗るからにはAWDで武装している。FFベースのAWDがX2の駆動方式である。特に走りはゴーカートのようなハンドリングをウリとするミニのDNAが感じられる。

見た目はかなりデザインに凝っており、細部まで丁寧に仕立てたこだわりを感じる。エンジンは3シリーズと同じ2Lターボだが、X2のコンセプトに合わせて出力が調整されている。フラットな路面ではかなり快適な乗り心地を提供してくれる。タイヤの硬さも気にならないし、BMWらしい引き締まったライドフィールも感じられる。だが一方で、路面に段差がある一般道や、高速道路(首都高速)の繋ぎ目では20インチのランフラットタイヤの硬さが目立っていた。少し荒れた路面を走ると、いきなり乗り心地が悪くなり、路面環境による変化が気になった。

Q2はFFに割り切ったモデル

X2よりもワンサイズコンパクトなQ2はFFに割り切ったモデルだ。X2よりも軽いため、1.4Lターボでも2Lターボに負けないくらいの加速性能を持っている。タイヤも実用的な17インチを履くので、高速周回路の乗り心地はかなりよかった。タイヤとサスペンションのコンビネーションのバランスがよく、上質なライドフィールを作り上げている。乗り心地の項目があれば、オーバーオールでX2に肩を並べるレベルにある。ロールやピンチングといったバネ上のボディの姿勢変化はX2よりも少なく、サスペンションがしなやかでありながら、ダンピングが効いている。こうした作り込みの良さはアウディのクルマづくりの深みなのだろう。

エンジンはロングセラーの1.4Lターボだが、そろそろ刷新する必要があるかもしれない。メルセデスのC200は48Vのサブ電源を使って、1.5Lとは思えないパフォーマンスを実現している。DCTのデメリットは発進時のもたつきだが、そこをマイルドハイブリットでカバーしている。街中のストップ&ゴーを繰り返す場面でどうしても気になるのが、DCTのギアボックスなのだ。
Aクラスが市場投入されたことで、このセグメントは輸入車と国産車が入り乱れる激戦区となるだろう。選択の決め手は数値性能ではなく、乗り心地を含めたドライバビリティではないだろうか。

バランスに富んだQ2が善戦したものの、X2が勝利

点数の差はわずか1点。Q2が足りなかったもの。それはSトロニック(DCT)の発進時のもたつきと、ABS作動時の音や振動だ。プレミアムを謳うなら、ABS作動音にも気を配って欲しい。しかし、その点を除くと、Q2は走りやすくて、快適で、安心できる良きコンパクトSUVである。お父さんが大きなクルマを持っているなら、お母さんはQ2という選択もありではないか。


X2は20インチタイヤを履き、少々やり過ぎ感はあったが、インチダウンをすれば、乗り心地も変わってくるはずだ。人と違うファミリーカーを求めるならば、ショッピングリストに入れてもいい。

 

RESULT

予想に反して、その差はわずか1点。X2が辛勝

●アウディQ2 1.4 TFSI シリンダー・オンデマンド・スポーツ:14.5/20点
●ビー・エム・ダブリュー X2 xDrive 20i Mスポーツ X:15.5/20点

※通信簿は絶対評価なので比較した点数ではない。

リポート:清水和夫/K.Shimizu フォト:篠原晃一/K.Shinohara ル・ボラン 2019年4月号より転載
LE VOLANT web編集部

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