東北随一の絶景ロードでさまざまな雲海と出会う【磐梯吾妻スカイライン】
福島市郊外の高湯温泉と土湯峠を結ぶ磐梯吾妻スカイラインは、東北随一の絶景ロードと言っても言い過ぎではないだろう。全長約27kmにおよぶルートの大半は、奥羽山脈の稜線伝いに延びているため、車窓の左右どちらにも次々とすばらしい景色が現れてくる。しかも、中央分水嶺の稜線地帯は天気が変わりやすく、冬季閉鎖の直後(春)や直前(秋)などには雲海が発生することも多い。
土湯峠寄りには湖見峠や国見台、高湯温泉寄りにはつばくろ谷といった展望スペースが数多く整備されているため、雲海を眺めるにも都合がいい。雲の海から頂をのぞかせる磐梯山や安達太良山を仰いだり、福島盆地を埋め尽くす雲海を眼下したりと、変化に富んだ眺めを堪能できる。しかし、磐梯吾妻スカイラインのハイライトと言えば、やはり浄土平だろう。
このルートの中間付近、標高約1600mにある台地は、山岳信仰が盛んだった時代、やっと平坦な道程となることが極楽浄土のようだったことからその名が付いたという説がある。われわれの目には「浄土」と呼ぶには躊躇してしまうほど荒涼とした景観だが、見る者を惹きつけてやまない不思議な雰囲気に満ちている。
ときに福島盆地側から押し寄せてきた雲海は、スカイラインや浄土平を濃いガスの中に呑み込んでしまうことがある。そんな時は吾妻小富士に登ってみるといい。山頂の火口壁(お鉢巡り)からは、浄土平全体を覆いつくす雲海を眼下にできることもある。