
BMWとの強固なパートナーシップで高性能かつエクスクルーシブなモデルを輩出するアルピナのフラッグシップサルーンが、7シリーズの進化に応じてフェイスリフト。これまで以上ともいえる洗練された走りと上質感を一般公道で味わってみた。
感嘆しつつ荒々しくない、アルピナが演出する刺激
BMW7シリーズは、大陸的なスケールでの“栄え”を狙ったマイナーチェンジで圧倒的な存在感を獲得した。一方で、そのデザインがアルピナの端正さを損なわないかという心配もあったが、実際にはかなりサマになっている。
そもそも、アルピナはBMWのMスポーツをベースにしていない。スポーティさだけではなく、ラグジャリーであることも重要な価値となるからだ。走りについても同様で、エンジンはMモデルに匹敵するパフォーマンスを実現し、サーキット走行もこなせるポテンシャルを備えるが、メインステージはあくまでも一般公道だ。
進化した7シリーズは走りの洗練度に磨きを掛けているが、B7は、そうした特徴をさらに際立たせ、乗り心地の快適さについては驚くほどだ。単にダンパーの減衰力を低めに保っているわけではなく、走行モードがコンフォートのままでもコーナリングを楽しむ速域が保てる。従来型で感じた路面のうねりを通過する際の縦揺れ(直後に収まる)も、この新型では気にならなくなっている。
走行モードがアダプティブならカメラで路面状態を検出し、ダンパーの減衰力を事前制御するだけに快適さは一段と向上。コーナー進入時にはステアリングを切り始める前にダンパーの減衰力がやや高めに移行し、ハンドリングの正確さが実感しやすくなる。それでいて、スタビライザーの可変制御も併用されるので減衰力に頼り切る必要がない。コーナリング中に路面の不整を通過しても、アウト側のサスペンションはストロークの余裕が確保されていて衝撃をしなやかに吸収する。
しかも、従来型で課題となっていた路面の継目で聞こえる「パカン」というタイヤの空洞共鳴音が軽減している。ただ、ビョーッというパターンノイズやゴーッというロードノイズが耳に届くことがある。意識すれば認められる程度だが、7シリーズよりは大きめなので対策を講じたいところだ。
誰もが納得する高い信頼性を獲得
それを除けば、優れた静粛性も確かめられる。4.4L V型8気筒ツインターボエンジンは、高速道路を100km/hで走行する際の回転数が8速1300rpmなので、パワーユニットのどんなノイズとも無縁でいられる。なおかつ、強大な最大トルクは800Nmと変わらないものの、低回転域では約30%上乗せされている。つまり、エンジン音が聞こえるような回転域までアクセルを踏み込むまでもなく、有り余る力強さが得られるということだ。
もちろん、アクセルを積極的に踏めばトルクは一気に上昇する。だが、それがカタマリになって飛び出すようなことがないあたりはアルピナの本領発揮といえる。思わずウォーッと感嘆の声をもらすほどの迫力がありつつ、荒々しくないという絶妙な刺激なのだ。アクセルを踏み続ければ、608psの最高出力に達する5500rpmまで一気に吹け上がる。そして、6000rpmまでは加速の勢いを維持。それでも、2速をキープすれば90km/h以下なので現実離れした速域にはならない。
走行モードがスポーツなら、4本出しのアルピナ・スポーツ・エキゾースト・システム内のバルブが開き、いかにも抜けがよさそうなコーンという快音を響かせる。だが、脈動音や破裂音を強調するといった過剰な演出をしないこともアルピナならではの特徴だ。
なおかつ、4WDシステムのALLRADを組み合わせるのでエンジンの比類なきパフォーマンスを確実に路面に伝える。新型B7はスポーティでいてラグジャリーであり、しかも一般路をメインステージにするモデルで最も大切な価値となる、誰もが納得する高い信頼性を獲得しているわけだ。
【Specification】BMWアルピナB7オールラッド
■車両本体価格(税込)=25,970,000円
■全長×全幅×全高=5268×1902×1491mm
■ホイールベース=3210mm
■トレッド=前1622、後1619mm
■車両重量=2175kg
■エンジン種類=V8DOHC32V+ツインターボ
■内径×行程=89.0×88.3mm
■総排気量=4395cc
■圧縮比=10.5
■最高出力=608ps(447kW)/550-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2000-5000rpm
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前ダブルウィッシュボーン/エア、後マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前255/40ZR20(8.5J)、後 295/35ZR20(10J)
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