新生フィットはキャラを大きく変えた
ヤリスとは対称的に、フィットは徹底してBセグの洗練を追いかけている。試乗車がそのボディサイズを3ナンバーとし、かつサスストロークを多めに取った「クロスター」ということもあるが、特にホンダが「e:HEV」と銘打つ新型ハイブリッドのシームレスドライブは、新生フィットのキャラクターを大きく変えた。98psを発揮する1.5L直列3気筒エンジンは、ハイブリッドの弱点である高速巡航時の低負荷領域で直結になる以外、そのほとんどを発電機として過ごす。その走りは109psを発揮するモーターが主体となるが、滑らかな加速に合わせてエンジンが協調制御されるため、実際の運転感覚は上質なガソリン車を運転しているようだ。
面白いのは、シグナルGPでアッパーセグメントを出し抜けるほどの加速力を持ちながら、フィットを運転していると、先を争う気持ちがまったく起こらないこと。2モーター化で得たトルクは力強くも穏やかに制御され、柔軟な足まわりがそこにトーンを揃える。
カチッとしたところはまるでない。どこも尖っていないのに、なぜだか乗り続けたくなる不思議な乗り味。それこそホンダがEVへとつなぐ架け橋なのだろう。
簡素だがセンスの良い2本スポークのステアリング。小さくも機能的で見やすいモニターと、すっきりとしたインテリアのミニマル感も、この走りと共にフィットの時代性を鮮やかに表現している。
国産勢のようなハイブリッド機構も持たず、極めてオーソドックスに仕上げたBセグのコンパクト。しかしシトロエンの手にかかれば、大衆車は驚くほど面白くなる。