C3は軽快な走りとポップなデザイン、A1は小さな高級車
シリーズにSUVを持つ強みからだろう、C3のボディは全長が3995mmと潔いほどコンパクト。逆に全幅は1750mmとワイドで、ここに伝統のしなやかな足を組み合わせることによって、シトロエンならではなエアリーライドと高い運動性能を両立させている。
ふんわりしなやかな乗り心地でも操作感が緩慢にならないのは、足下の17インチタイヤが効いている。またそのサスペンションはロール量を大きく許すが、ダンパーが縮み始めからじわりと減衰力を発揮することで、操舵初期から高い応答性が得られている。
このしなやかだけれどスポーティなフットワークに抜群なマッチングを見せるのが、1.2Lの直列3気筒ターボだ。極低回転で発揮される203Nmの最大トルクは街中でのダッシュに貢献し、そのままアクセルを踏み込み続けると高回転までカラッと吹け上がる。小排気量ターボを巧みに制御し、高い実用性と走りの楽しさを両立する積極的な姿勢には、欧州の肉食系を強く感じさせられた。
フランス車の常かC3にもインフォテインメントの先進性はまるでない。しかしその軽快な走りとポップなデザインは、乗る者を元気にしてくれる。これこそが、いま一番必要な性能だとボクは思う。
しんがりを務めるアウディA1スポーツバックは、ハッキリ言えばクラス外。他の3台と比べるには価格も違えば、狙う領域も違うと、今回の相対比較で思い知らされた。VWグループの横置きアーキテクチャーを使う関係上、その根底にポロと同じ重心の高さやハイテンションスチールの突っ張り感を感じるものの、それでもやはりアウディの流儀に則ったA1は、「小さな高級車」だ。ステアリング周りの取り付け剛性がすこぶる高く、振動透過性もBセグの域を超えている。彫刻のような漆黒のインパネにバーチャルコクピットが収まる様子も、このセグメントでは独壇場の威厳がある。
1.5L直噴ターボの出力は150ps/250Nmと段違いにパワフルで、7速Sトロニックの素早いシフトワークがこれを無駄なく路面に伝える。しかしこのエンジンが持つ切れ味を存分に味わいたいなら、試乗車には装着されていなかったパドルシフトが必須だ。足まわりはスプリングレートが高めの印象で、操舵に対する反応はダイレクト。しかしそのボディは路面からの入力をきっちり受け止め、A1が小さいながらも高速ツアラーである印象を植え付ける。もし、他の3台にあと100万円足せばA1のようになるか? と問われたら、正直答えに戸惑う。そしてこれこそが、A1の立ち位置における答えだと思う。GRヤリスの発展性から考えれば、ヤリスが一番近い位置にいるだろうか。