ドイツの競合に対抗する走りとは?
個人的には、スカイアクティブXよりもマツダ3の操縦性に興味を抱いた。ばね上を適度にスムーズに動かして、操舵応答遅れなく旋回姿勢まで持っていく過渡領域での挙動が昔のメルセデスにちょっと似ているからだ。マツダの実験部はメルセデスのW124を試験車として購入し、徹底的な分析を行っている。
「その成果がようやく少し反映できたのがマツダ3です」とエンジニアが言っていたのは本当だった。メルセデスほどもっさりしておらず、でも正確で安定志向で無駄のない挙動は、ドライバーがステアリングを切る時に安心感を与える。単なる模倣ではなく、マツダ独自の味として成立させている点は好感が持てた。
前回のフルモデルチェンジで飛躍的に良くなったAクラスは、操縦と動力性能のバランスもよく、装備内容などを含む商品力も高い。ただし、ご自慢の先進安全装備であるレーダーセーフティはオプションなので、これだけを付けても400万円を超えてしまう。1.3Lの5ドアハッチバックの価格としては肌感覚でちょっと高い。
走る/曲がる/止まるの基本性能に関しては、期待を裏切る反応はまったくなくいい塩梅にまとめられている。日常の使用範囲内でエンジンや操縦性や乗り心地に対する不満はほとんどないだろう。誰が乗っても(価格を除けば)そこそこ満足するに違いない。
いっぽうで、万人から同じ評価を受けないだろうと想像できるのが118iである。後席にも大人がきちんと座れるパッケージやインテリアの質感、安全装備を標準とした良心的価格設定など、高く評価するべきポイントは多い。少し首を傾けたのは操縦性。とにかく“頭がよく入る”のだけれど、それに最後まで慣れなかった。
ステアリングを切ると間髪入れずにノーズが動いて旋回姿勢に持ち込もうとする。特にフロントタイヤの横力の発生が速く、例えばコーナーの入口で制動してからターンインという行程で、フロントに荷重が移動してピッチ方向の動きが発生するのとほぼ同時にロールも起こる、そんな感じである。FRの操縦性のお手本のように言われてきたBMWが手掛けたFFの118iの操縦性をこのような味付けにしたというのは分からなくもないけれど、自分は不自然な感覚を抱いてしまった。
そつのない仕上がりのAクラスと、場面によってはAクラスより昔のメルセデス風とも言えるマツダ3、そして斬新な試みの1シリーズ。何より今回感銘を受けたのは、ドイツの競合と同じ土俵に堂々と日本車が上がっているというその事実だった。