メルセデス・ベンツ

メルセデスとビーエム、2台持つとしたらどんな組み合わせ?

メルセデスもBMWも、さまざまなカテゴリーでフルラインナップを揃えているブランド。家族用と自分用、ビジネス用とプライベート用など、できれば2台持てるのがクルマ好きの理想だろう。その日の気分に合わせて、クルマをチョイスできるなんてサイコー。とはいえ、メルセデスとビーエム、といったガチのライバルブランドで違うクルマを持つ人なんて、そうはいないはず。でも、ここは空想の世界。日頃から様々なモデルを試乗するジャーナリストだからこそ、興味深いチョイスをしてくれるはず。というわけで、なぜその2台を選んだのかを語っていただいた。

01 T.Kinoshita’s Choice/木下隆之・プレミアムというのはこういうことなのだ

選択の定義は「オンとオフ」「大と小」

これほど血湧き肉躍るフレーズも少ない。生粋のジャーマン崇拝者ならば、ドイツ2トップを複数所有する姿を想像して、神経をワクワクと昂らせるに違いないのだ。
今回、こんな夢のようなお題をいただき、さっそく空想の世界にどっぷりと浸ってみた。そしてまず選択の定義としたのは「オンとオフ」。「大と小」。「質実と楽しさ」。つまり、せっかくのクルマのある生活を華やかに彩るために、それぞれのブランドから隔たりのある2台をチョイスしようと企てたのである。「内燃機関とEV」の条件も加えた。
幸いメルセデスとBMWは、フルラインで魅力的なモデルを揃えているばかりか、そのどれもが個性的である。選択肢という意味で少数派のEVをどれか一台に決めてしまえば、武闘派モデルをメルセデスかBMWから選ぶのは容易いである。

BMW i3/レンジエクステンダーレンジ・エクステンダー装備車なら最大航続距離は466kmとなる。

ピンと頭に浮かんだのはi3である。搭載する電気モーターは、250Nmの最大トルクを絞り出す。レンジエクステンダーゆえに466kmもの航続距離が得られる。
出勤だけでなく、試乗会場への中距離移動もこなす。全長4020mmのサイズは期待通りにコンパクトである。つまり、日常の生活を彩るには都合がいい。条件に掲げた「EV」と「オン」、そして「小さいこと」も満たしている。
メルセデス初のEVであるEQCを考えてみたのだが、GLCの面影を引きずっているという点でリスト落ちした。EVとしての完成は高いものの、EV専用車として中途半端に思えたからだ。せっかくの2丁掛けの一台を選ぶならば、潔くEVらしさを突き詰めたモデルにしたかったのである。だからi3。

メルセデスAMG G63/GクラスにもAMGモデルに共通のパナメリカーナグリルを採用する。

一方のメルセデスは、内燃機関の権化であるAMG G63にすることに決めた。全長は4665mmであり、全高は1975mmもある。乗り込みには、ステップに足を掛けてからよじ登るという作業が求められる。
搭載するエンジンはV型8気筒4Lツインターボであり、最高出力は585psに達する。サバンナに生息する巨象の突進のような豪快な走り味である。日常の通勤には荷が重いぶん、休日をキラキラと彩る。山坂道では怒涛の加速を示すし、アドベンチャライズな遊びにも応えてくれる。つまり、「オフ」と「大」と、そして「楽しさ」を満たすことができるのである。
「i3」と「AMG G63」。「オンとオフ」。「大と小」。「質実と楽しさ」。つまり「内燃機関とEV」。
だが、個性豊かなモデルを優先してチョイスし一旦はその選択に自己満足してはみたものの、不思議な感情が湧き上がってきた。というのも、i3を生活圏で活用し、AMG G63で休日に弾けるためのツールとしてチョイスしたはずなのに、i3でワインディングを走り、G63で都内をクルーズするのもそれはそれで粋であることに気がついてしまったのだ。
i3が搭載するエンジンは……、というより発電機は直列2気筒である。というからさぞかし聞くに耐えぬ貧相なサウンドなのかと諦めていたら、そうとは感じさせぬサウンドが響く。しかも後輪駆動だというから、これ一台でいいじゃん、と企画の趣旨を忘れかけたのも事実。ドライビングプレジャーをもホンノリと味わえる。
AMG G63では、高級ホテルのエントランスに乗り付けるのも似合う。パリッとタキシードに身を包み、フォーマルな席でも相応しいというのだから悩みは深い。
選択した2台の立ち位置をそっくり180度ひっくり返してみても、華やかな生活に一点の曇りもないことが判明したのだ。
そう、メルセデスとBMWというジャーマン2トップは思わぬところで守備範囲の広さを披露したのである。
メルセデスとビーエムの2台持ちという夢の空想を羽ばたかせたら、プレミアムというのはこういうことなのだという凄みを再確認してしまった次第である。

 

ルボラン2020年8月号より転載
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CARSMEET web編集部

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