伝統は継承するが縛られない。この、新しいモノ作りの姿勢がレクサスと旅先の共通点だ
V型8気筒5L自然吸気エンジンは巡航中は低い回転域で粛々とトルクを提供することに徹する。それが追い越しなどでアクセルペダルに乗せた右足に軽く力を込めれば瞬時のレスポンスで応え、心地よいビートとともに爽快な加速が始まる。大排気量自然吸気スポーツユニットならではの快感は、今もって堪らないものだ。
最初に記したように、今回は単に長距離を往くだけではなく、伝統と今を融合させた様々な場所、モノ、ヒトを追いかけてもみた。詳細は美しい写真とキャプションを参考にしていただくとして、LCが多様な風景に難なく溶け込んでいる様、解っていただけると思う。福島県立美術館のような今の建築と絡んでも、雨の大内宿でしっとり濡れそぼっていても、とても絵になる。伝統や歴史に、決して負けていない。
会津漆器の塗師一富に立ち寄り、きゅう漆(しつ)の冨樫孝男さんと話をすることもできた。会津塗とも呼ばれる伝統工芸品の工房。高校卒業後、この家業を継ぐことになった冨樫さんは輪島で修行させてくれることを条件に出したという。
「輪島塗が日本一で、会津塗は落ちると正直、そう思っていました。でも修行を終えて帰ってきて、改めて向き合うと『こんな良い技法があるんじゃないか』と気付かされて。徐々に、そうした伝統技法の復刻を始めたんです。 」
技法はかつて手掛けていた職人が居れば聞き、残っていなければ試行錯誤の上に再現したりしているという。しかも冨樫さんは、伝統を再現するだけでなく、それを土台とした新たな表現にも取り組んでいる。実際、出来上がった漆器は、どれも美しいというよりスタイリッシュと形容したくなる仕上がり。しかも独創的で、素人目にも漆器の新しい可能性を感じさせるものばかりだった。
「塗師は皆、正倉院の御物を見て勉強するんですが、私は海外の器に興味があって。ガラスでも焼き物でも、見れば『これは漆で出来るんじゃないか?』ってばかり考えています。 」
工房の隅には地球儀。冨樫さんはこれを見て世界に思いを巡らせているのだそうだ。