ニューモデル

ランボルギーニの最新作「ウラカンSTO」はGT3マシン直系のロードゴーイングレーサー?

「ランボルギーニ・ウラカンSTO」は「スーパートロフェオEVO」や「GT3」のレーシングDNAを受け継ぐ公道走行可能なスーパースポーツ

11月19日、アウトモビリ・ランボルギーニはウラカン・シリーズのニューモデル「ウラカンSTO(Super Trofeo Omologata)」を発表した。カスタマーへのデリバリーは2021年の春以降で、日本での予定販売価格は37,500,000円(税別)だ。

ウラカンSTOは、ワンメイクレース用マシン「ウラカン・スーパートロフェオEVO」と、デイトナ24時間レースで3連覇、セブリング12時間レースで2連覇した「ウラカンEVO GT3」のレースカーとしての伝統を受け継いだ公道走行可能なスーパースポーツカー。

パワートレインは、640ps/565Nmを発揮する自然吸気式の5.2L V型10気筒エンジンと7速DCT(LDF)の組み合わせで、後輪を駆動する。パフォーマンスデータは、0-100km/h加速タイムが3.0秒、0-200km/h加速が9.0秒、最高速は310km/hと発表された。

同社のステファノ・ドメニカリCEOは、このたびの発表に祭し、次のようにコメントしている。
「ウラカンSTOは、ランボルギーニ・スクアドラコルセ(同社のモータースポーツ部門)の伝統を最も純粋に受け継いだモデルで、ウラカン・スーパートロフェオEVOのテクノロジーが踏襲され、デイトナ24時間レース3連覇という記録を打ち立てたウラカンEVO GT3の経験が活かされています」

一方、マウリツィオ・レッジャーニCTO(チーフ・テクニカル・オフィサー)はこのモデルを次のように紹介している。
「ウラカンSTOは絶妙なバランス、軽量、優れた空力性能のスーパースポーツカーの興奮を余すことなく発揮し、スーパートロフェオとまったく同じフィーリングと高揚感を届けます。世界で最もタフなサーキットにも完璧に対応できるセットアップを備えながら、公道走行できるように作られています。ウラカンSTOには、スーパートロフェオとGT3の両方の経験から得られた幅広い技術と知識をさらに洗練し、盛り込みました。日常的な走りのなかでもレースドライバーさながらのエモーションを体感でき、ラップレコードを記録できる実力を持った公道仕様のランボルギーニ製スーパースポーツカーです」

フロントボンネット、フェンダー、フロントバンパーはひとつのコンポーネントとして一体化されている。これが同社のエンジニアたちが生み出した「Cofango(コファンゴ)」だ。cofano(イタリア語でボンネット)とparafango(同フェンダー)を合わせ、フロントバンパーも組み込んだコファンゴは、「ミウラ」や最近では「セスト・エレメント」に見られる手法。軽量化につながるだけでなく、モータースポーツでは時間節約を図れる特徴として知られている。

フロントボンネットに新しく設けられたエアダクトは、中央のラジエーターへの気流を増やし、エンジン冷却効率を高めると同時に、ダウンフォースも発生させる。コファンゴは、新しく設計されたアンダーボディとリヤディフューザーへと気流を導くフロントスプリッターも備えている。

コファンゴは、気流をフロントフェンダーの上に押し上げるような形状になっている。フロントフェンダーにはルーバーがあり、ホイールハウスから抜ける気流を最大化して内側の圧力を低減すると同時に、フロントのダウンフォースを増大させる。コファンゴのサイドの形状は、気流が前輪を迂回するように導くため、ドラッグの低減にも寄与している。

スーパートロフェオEVOに基づく新しいリヤフェンダーは、車両のフロントエリアを削減してドラッグを低減しながら、リヤのダウンフォースを高めて総合的な空力性能を向上させている。リヤフェンダーに組み込まれているNACAエアインテークは、エンジンのエアインテークとして機能。ダクトを短くすることで圧力損失を3割削減している。

リヤのボンネットには、ボンネット内側の空冷効率を向上させるためのエアスクープが設けられた。リヤボンネットのフレームに組み込まれた専用のエアディフレクターが、エンジンと排気口の温度調整の必要に合わせてシュノーケルからの大量の気流を導く。

リヤボンネットと一体となったシャークフィンは、STOの動的性能を高めるパーツだ。とくにコーナリングでその力を発揮し、ヨー角の気流が入ってくるコーナーなどで、フィンの両側でそれぞれ異なるレベルの圧力を発生させることにより、ヨー安定性が向上。フィンはウィングへの気流を整える役割も果たし、コーナリング時のウイング効率も高める。

手動で簡単に調整できる、新しいリヤウイングのエアロ設定によりサーキットの特性に合わせて空力バランスとドラッグが最適化できる。ウィングはシングルスロットで2枚の翼面から構成され、前部の翼面を3つの位置に回転してダウンフォースを増大できる。前部と後部の翼面の間の隙間を狭めると、翼面の上側の圧縮が増し、前部の翼面の下側で、より強くて広い吸引効果が発生する。こうして、車体の空力バランスを最大13%変えることができ、STOをさまざまなドライビングスタイルやドライビングコンディションに適応させることが可能だ。

これら専用設計のボディパネルを採用したことで、クラス最高レベルのダウンフォースと、後輪駆動車として最高の空力バランスを達成。コーナリング性能の向上に大きく貢献する、優れた空力負荷を実現している。全体的な空力効率37%向上したほか、「ウラカン・ペルフォルマンテ」に比べてダウンフォースは53%アップと大幅に増大している。なお、ボディパネルには75%にカーボンファイバーを採用。複雑な構造を1枚のパーツで構成することによって強度を高めながら、結合部分がないことで軽量化を図っている。そんなウラカンSTOの乾燥重量は1339kgを実現。この重量はウラカン・ペルフォルマンテよりさらに43kg軽い。なお、ボディの軽量化には、ウラカン・ペルフォルマンテより20%軽いウインドスクリーンやマグネシウムホイールの採用も寄与している。

20インチのマグネシウムホイールには、専用のブリヂストン・ポテンザ・タイヤを組み合わせる。タイヤはロード用とサーキット志向の2種類が用意され、どちらも革新的なコンパウンドを使用。細かく調整された接地効率で走りの精度を高め、幅広い路面温度でグリップを向上させている。

ブレーキはブレンボ製CCR-Mで、フォーミュラ1での応用を基に素材の専門知識を活用する優れた耐久性を実現。フロント用が390×34mm、リヤ用が360×28mmのディスクは従来のCCBに比べ4倍の熱伝導率で、ストレス耐性は60%高く、最大制動力は25%、減速性能は7%向上している。この結果、あらゆるドライビングコンディションで安定したブレーキ性能が期待できる。ブレーキングはスポーティな感覚で自在に調節でき、サーキットでの使用に最適だ。なお、100-0km/h制動距離は30.0mと発表された。

走行モードは「STO」「Trofeo」「Pioggia」の3つを設定。デフォルトのSTOモードでは、ロード走行とカーブの多い道路を楽しめる。LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)は、あらゆる路面コンディションを想定して最適化され、サスペンションはロード向けに設定される。ESC(横滑り防止装置)をオフにすれば、ドライバーへのサポートを得ながら、走る楽しみを満喫できる。

Trofeoモードでは、全システムがドライ状態のアスファルトで最高のラップタイムを出せるように最適化される。LDVIは、ESCオンではストレート用に、ESCオフではラップタイム計測用に、専用トルクベクタリングとパフォーマンストラクションコントロール戦略を展開する。

そしてPiaggio(雨)モードでは、トラクションコントロール、トルクベクタリング、RWS、ABSがウェット状態のアスファルト向けに最適化される。トラクションコントロールとブレーキシステムはグリップ損失とエンジンのトルクカットを最小限に抑えるように調整され、LDVIシステムではウェット状態で必要なトルクを発揮するように精密な予測を駆使。トルクベクタリングはグリップの低いコンディションを考慮し、より良いコーナリングを保証する一方で、サスペンションはグリップを最大化し、荷重伝達をよりスムーズに行なえるように設定される。

インテリアは、エクステリアの軽量化を反映したものになっている。コックピット全体を通してカーボンファイバーが豊富に使用され、スポーツシートもフルカーボンファイバー製だ。ランボルギーニのカーボンスキンが使用されたアルカンターラ仕上げの内装、カーペットの代わりにカーボンファイバー製となるフロアマットに加え、フルカーボンファイバー製で軽量化されたドアパネルの開閉にはドアラッチが使用される。

リヤアーチと4点式シートベルトに、ヘルメットを収納するために設計されたフロントトランクが、ウラカンSTOのレーシングDNAを強く感じさせる。リヤアーチは技術パートナーのアクラポビッチ社と共同開発した高級チタン合金製で、従来のステンレス製に比べて40%軽量化されている。

新しいHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)では、タッチスクリーンでドライビングモード、LDVI、タイヤ空気圧、ブレーキ温度を含む機能を操作できる。常時接続のコネクテッド・テレメトリーシステムでは、サーキットでの運転パフォーマンスをモニタリング、記録し、ランボルギーニUNICAアプリでデータを分析できる。

このウラカンSTOも、充実したアドペルソナム・プログラムでエクステリア、インテリアともにフルカスタマイズが可能だ。ペイントやトリムに数限りないオプションが用意されているだけでなく、レーススタイルのビニールも選択できる。思い思いの色とデザインでスターティンググリッドに並ぶスーパートロフェオEVOのように、STOもカラーリングをパーソナライズすることを想定されたデザインになっている。ちなみに、初公開時のBlu LaufeyとArancio Celiforniaのカラーリング(写真)は、ウラカンSTOの若々しくスポーティなレーシングスピリットを表したものだ。

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