飛ばすほどに輝きを増す500Xスポーツ
機能面では素晴らしくまとまっているTクロスだが、インテリアはちょっとばかり子供っぽい。ドイツ人のカラーセンスには本当に驚かされるけど、黒みがかったオレンジ(やブルー)のインパネは、毎日接するにはかなり若作りだ。
そんな気持ちを察したかのように、フィアット500Xは室内をスタイリッシュにまとめていた。これぞ輸入車を買う醍醐味! といえる、美しい仕上がりである。基本造形は標準モデルと共通だが、「スポーツ」はダッシュボードをダークグレーにカラーリング。それだけでファニーな印象が、グッと大人っぽくなる。
スポーツサスを備える乗り味は3車中でもっともがっしり・どっしり。ステアリング応答性には“ため”がなくスポーティだ。筆者は標準仕様の柔らかくも奥深いロードホールディング性能にフィアットらしさを強く感じるのだが、一般的にはこの方がイタリア車をイメージしやすいかもしれない。
1.3L直列3気筒ターボは今回一番の力持ちだが、1440kgの車重と6速のギアリングが影響しているのだろう、出足はやや鈍め。低速域ではタイヤの転がりの良さを利用して、そつなく速度を乗せて行く走り方が主体となる。
しかし、いざアクセルを踏み込めば、ターボブーストとともにエンジンが高回転まで回り、俄然走りが楽しくなる。飛ばすほどにしなやかささ出てくる足まわり。この安定感にはもっとパワーが欲しくなり、500Xにアバルト仕様があったらいいのに! と思った。
スポーティな外見と走りを得たことで、500Xの魅力はより明確になった。この“大きなチンクェチェント”を元気に、そしてスマートに転がせば、毎日を前のめりに生きられそうな気がする。