ハマったら手放せないDS3クロスバック
対するDS3クロスバックは、ぶっちぎりのフレンチ・アバンギャルドを貫く。乗り込んだ途端に漂ってくる甘いパフュームの香り。ふっかりと、しかしコシのある革シートに身を沈め、何度乗っても慣れないキラキラしたインテリアを眺めていると、まるで高級ブティックにいるような、少し肩身が狭い気持ちになる。
だが、走り出せばそんな違和感はすぐに消え失せ、その素晴らしい乗り味に心を奪われる。シトロエンよりも引き締められた、しかしプジョーよりもしなやかな足まわり。同じグループでの棲み分けには若干無理を感じていたが、これが他社との比較になると、明確に心地良い。その上で操舵応答性も、きちんと確保されている。
1.2L直列3気筒ターボは、細かくステップする8速ATによって低速から実用トルクを絞り出し、高速巡航ではそのスピードを快適に保ち続ける。ATにデュアルクラッチほどのキレ感はない。ハンドリングも鈍くはないが穏やかだから、DS3クロスバックの走りは一見退屈に思えるが、アベレージが上がるほどに身のこなしが軽やかになり、走りは楽しさと鋭さを増す。この点はフィアット500Xと同じくラテンの血だ。
深海魚のようなフロントマスクや、近づくだけでスーッと出て来るドアノブ。見た目やギミックに翻弄されると見失いそうだが、全高は1550mmと立体駐車場へのアクセスも唯一可能であり、都会派のスモールSUVとしてはよくまとまっている。つまりDS3クロスバックはそのアバンギャルドな見た目だけでなく、根の真面目さにギャップ萌えができる一台。ハマったら手放せなくなる、ブルーチーズのような魅力を持つ。
さてそんな3車を総評すると、どれもコンベンショナルなFWDであり、技術的な目新しさはないが、やはりそつないのはTクロス。荷室容量の大きさ、後席のスライドなどを加味したコスパは圧倒的で、かつ走りもまとまっている。
しかし輸入車を手に入れる、すなわち異文化を楽しむ醍醐味を考えると、ラテンの2台もとっても魅力的。ベタに行くなら500Xスポーツ、個人的にはDS3クロスバックのギャップに萌えた。