
3列シートというと真っ先に思い浮かぶのはミニバンだ。その一方で、最近注目されているのは多人数が乗れる3列シートSUV。走りやデザインを諦めたくない、でも家族や友人とドライブを楽しみたい!話題の2モデルを集めて、使い勝手や居住性を比較してみた。
SUVの用途を拡大する3列シートに注目したい
メルセデス・ベンツが3列シートを備えるブランニューモデルのGLBを投入したことで、CセグメントのSUVに新たな価値が加わった。7人乗りが可能なプレミアム系の輸入車は、ランドローバーのディスカバリースポーツ(オプション)だけだったからだ。

MERCEDES-BENZ GLB200d/ファミリーSUVの主役になれる実力アリ。ボディ全幅は1835mmと大きすぎない割りに、広がり感のあるインパネ回りのデザインによりスペースの余裕が演出される。3列シートの身長制限は168cmだが平均的な体格の人が揃えば7名乗車も可能。3列シートを倒すと荷物スペースは500Lと十分だ。
ただ、フル7シーターとはいえない。GLBは大柄に見えるものの、DセグメントのSUVと比べればコンパクトだ。そのため、3列シートは身長169cm以下の乗員に制限されている。男性としては大柄なリポーターが試しに乗り込んだところ、ひざ回りのスペースはギリギリで確保できるが頭上スペースはゼロ以下だった。
このあたりのパッケージは、ディスカバリースポーツも同じだ。強引に乗り込むことはできるが、3列シートの姿勢は体育座りになってしまう。その一方で、3列シートを床に収納すれば広大に荷物スペースが確保される。2列シートのひざ回にも、スペースの十分な余裕を得ている。GLBの使い勝手にも大きな違いはない。
いずれにしろ、日常はファミリーユースに打ってつけのSUVといえる。さらに、お子さんの友達が3列シートに乗る。あるいは、お子さんが3列シートに、祖父母が2列シートに座るなど用途の拡大は見逃せない魅力となる。
走りはどうだろうか、今回の試乗車は両モデルともに2Lの直列4気筒ディーゼルターボを搭載する。GLBは、最大トルク320Nmを発揮。ディーゼルとしては控えめなスペックながら、市街地での性能に不満はない。アクセルを少し踏みぎみにするか走行モードがスポーツなら2000rpm台に乗せやすく、力強さの余裕が確かめられる。だが、際限なくあふれ出すようなトルクは期待できない。駆動方式がFFなので、刺激をともなうほどの強大なトルクは受け入れ難いのだろう。
高速道路では、8速100km/hで1500rpmとなる。速やかな追い越しをかける場面では、やはりアクセルを踏みぎみにする必要があり8速のままというわけにはいかず。アクセルをさらに踏み込むと、スムーズに4500rpmまで吹け上がるが加速が勢いづく実感はない。とはいうものの、GLBで走りの刺激を期待するなら最高出力224psを発揮する2Lの直列4気筒ガソリンターボを積む250 4マチック・スポーツが用意されている。
ファミリーならGLBスポーティさならディスコ
ディスカバリースポーツは最大トルク430Nmと頼もしく、Cセグメントとしてはヘビー級の車重が負担になることもない。9速ATをDに保つと早めのタイミングでシフトアップが繰り返され、60km/h以下で7速に入る。そのため、発進時以外は1000rpm台の前半で事足りる。

LAND ROVER DISCOVERY SPORT R-DYNAMIC SE D180/全モデルがAWDとなることにも注目したい。2020年モデルはインテリアにも手が加えられ最新のインターフェイスを導入し質感も向上している。シートはデザインがスポーティで前席はホールド性が高い。2列シートは座面の奥行きが浅いものの足下スペースは広い。3列シートの乗降性は少しばかり難儀だ。
しかも、ATをマニュアル操作して2000rpm以上を維持すると、アクセルを踏めば即応して刺激的な加速を開始する。そのままアクセルを踏み続けると最高出力は180psに達するだけに、高速道路の本線合流では4000rpmオーバーまで伸びのある加速を楽しませてくれる。
本線に入ってからは、95km/hを超えると9速に入る。制限速度以上にならないと8速のままということもなかった。9速100km/hで1500rpmとなる。
エンジン回転数はGLBも同じであり、両モデルともに一定速ならエンジン音が耳に届くことはない。ザラついた路面を通過する際に聞こえるロードノイズは音量が抑えられ、響くことがない音質としてもスッキリしていた。
とくに、ディスカバリースポーツはデビューこそ2014年と時間経過が長いが、2020年モデルはマイナーチェンジを実施。フェイスリフトに加えプラットフォームまで進化し、遮音性と制振性を改善し従来モデルと比べ静粛性が大幅に向上している。
サスペンションも進化し、ストロークが一段とスムーズになっている。路面のうねりを通過すると縦に揺れるのかと思うのもつかの間、ダンパーがボディの余計な動きをスッと減衰。ロールも適度であり、アングルがどんどん進行することがなくハンドリングの正確さを際立たせることに役立つ。
ただ、ステアリングの手応えが人工的で操舵力というより反力が強めに感じる。直進時も、節度というよりも中立付近を重めにしているのでステアリングの切れ味はよりスッキリさせたいところだ。
ブランニューモデルだけあり、GLBは快適な乗り心地を提供してくれる。メルセデス・ベンツのSUVは、荒れた路面で左右のタイヤにバラバラな振動が入る場面で直進状態でもボディが横に揺れるヘッドトスが気になりがちなのにそれが改善されている。
なおかつ、軽いとはいえない大径タイヤを履きながら、いかにもバネ下が重そうなドタドタというインパクトノイズを発することもない。衝撃の減衰も最適化され、ボディに振動が残らないことも快適な乗り心地に結びつく。ステアリングの切れ味もスムーズなだけに、ハンドリングの素直さが実感しやすい。試乗時はウェット路面であったにもかかわらず、ニュートラルな挙動を守るのでスタビリティにおいても好印象となる。
両モデルは、3列シートによりCセグメンドのSUV人気に追い風を吹かしそうだ。GLBは、ファミリーSUVとして主役になれる実力がある。ディスカバリースポーツは、走りの楽しさに加え洗練度にも磨きをかけてきた。
【Specification】MERCEDES-BENZ GLB 200d
■全長×全幅×全高=4640×1835×1700mm
■ホイールベース=2830mm
■車両重量=1740kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1949cc
■最高出力=150ps(110kW)/3400-4400rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1400-3200rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/55R18:235/55R18
■車両本体価格(税込)=5,120,000円
お問い合わせ
メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610
【Specification】LAND ROVER DISCOVERY SPORT R-DYNAMIC SE D180
■全長×全幅×全高=4610×1905×1725mm
■ホイールベース=2740mm
■車両重量=2120kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1999cc
■最高出力=180ps(132kW)/4000rpm
■最大トルク=430Nm(43.7kg-m)/1750-2500rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/55R19:235/55R19
■車両本体価格(税込)=6,600,000円
お問い合わせ
ジャガー・ランドローバー・ジャパン 0120-18-5568
【Another Choice】LEXUS RX 450Lh/レクサスRX 450Lh
3列シート仕様はデザインも伸びやかだ
RXはグローバルの販売台数でいえばレクサスのイチバン人気。3列シートを備える450hLはリアのオーバーハングを伸ばすことでスペースを確保するが広さとは無縁だ。2019年のマイナーチェンジで快適性が大幅に向上。