国内試乗

レクサスLCに息づく伝統と最先端テクノロジーの源を尋ねる旅/ニッポン再発見プロジェクト【第2回】

前回のニッポン再発見プロジェクト【第1回】「レクサスのフラッグシップ・クーペ&コンバーチブルで訪れる新しいニッポン」ではレクサスLCに宿るジャパンクリエイティブの真髄を探る旅を敢行。第2回目の今回では、その源を司るチーフエンジニアの武藤康史氏から話を聞くべく、LC500hクーペとLC500コンバーチブルの2台を連れ立ち、本拠地の豊田市まで旅をした。

【Driving Impression】ボディとパワートレインは組み合わせが実に悩ましい

新たにコンバーチブルが仲間に加わり、レクサスLCのラインナップがついに完成した。あえて完成という言葉を使ったのは、単に車種が追加されただけでなく、この機にクーペの位置付けも再定義されて、それぞれのキャラクターが一層明確化されたからだ。

第1回に続きナビゲーターを務めた島下泰久氏。5L自然吸気エンジンのコンバーチブルと3.5Lハイブリッドエンジンを積むクーペの2台を乗り比べながら豊田市を目指した。

LC500コンバーチブルは、ソフトトップを開けた状態はもちろん、閉じていても美しいスタイリングに目を奪われる。とりわけ特徴的なのは開口部が、横から見た時に前席の後ろ辺りでキックアップしていることだろう。

実はクーペのウインドーグラフィックスにならったこのラインが、オープン時にはサイドビューを2シーター的に軽快に見せている。一方、クローズ時にはここから一段高くなったトノカバーがキャビンを小さく見せる効果を発揮。何とも技アリのデザインなのである。

アルカンターラとフレアレッドのセミアニリン本革を使用したインテリア。主体的にクルマを操る喜びと受動的な安らぎが見事に両立されている。

このコンバーチブルボディに搭載されるパワートレインは、V型8気筒5L自然吸気エンジン+10速ATだけの設定となる。
「トップを開けて、そのリニアな吹け上がりと、それに呼応して響くサウンドを楽しいんでほしい」

そんなメッセージが聞こえたように感じられて、思わずルーフ開閉スイッチに手が伸びた。開閉時間は約15秒。50km/h以下なら走行中にも動作可能だから、開き切るより前に、クルマを発進させた。
想像通り、右足の一挙手一投足を逃さずに奏でられる澄んだエンジンサウンドが直接耳に届くオープンでの走りは最高の快感だ。剛性感高いボディ、シャシーがもたらす洗練された乗り味も相まって、速度を上げても、あるいはゆったり流しても、きわめて充足感の高い走りの世界に浸ることができる。

フロント245/40RF21、リア275/35RF21のランフラットタイヤ&鍛造アルミホイールを装着。今回の一部改良でサスペンションパーツの多くにアルミ素材が採用された。

続いてクーペのLC500hに乗り換えて走り出す。実は今回、クーペもバネ下の軽量化をはじめシャシーには大幅に改良が加えられており、意のままになる走りの感覚がさらに研ぎ澄まされている。特にリアがぴたりと落ち着いて、自信をもってステアリングを切り込んでいけるようになったのが、とても心地良い。

V型6気筒3.5Lエンジンと電気モーターを組み合わせたマルチステージハイブリッドユニットにも手が入れられ、特に低速域の電気モーターのピックアップが強調されている。その違いは明らかで、滑らかで力強い走りに一層の躍動感が加わったという印象だ。それでいて、必要のない場面では速やかにエンジンが停止し、電気モーターにより、先ほどまでとは一転、優雅と表現したくなる走りっぷりを披露する。都市を泳ぎ回る時には、この静けさ、滑らかさが嬉しい。
もちろん、その間にはクーペボディにV型8気筒5L自然吸気ユニットを組み合わせたLC500もある。三者三様のキャラクターが揃い、冒頭に書いたようについにLCのラインナップは完成に至ったと言っていいだろう。それにしても悩ましいのは、一体どのボディ、どのパワートレインを選ぶかということである。

フォト=岡村昌宏/M.Okamura(CROSSOVER) ルボラン2021年1月号より転載
島下泰久

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