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【VWゴルフIV弾丸テスト】周囲の雑音に惑わされずに落ち着いて乗れる【VW GOLF FAN Vol.2】

※この記事は2004年12月に発売された「VW GOLF FAN Vol.2」から転載したものです。

Volkswagen GOLF Wagon GT

もし1台の車に長く乗ろうと考えるなら、モデル末期にあるクルマを選択するべきだ――。
よくいわれていることだが、これは真理。なぜなら、モデル初期にあった様々な問題点が解消され、熟成の域に達して、ほぼ不満のない仕上がりになっていること確実だからだ。いまなら、ゴルフIVのワゴンがそれにあたるはずだが、そのあたりを紅葉を求めてつつの弾丸テストでチェック!

ひとつの理想的完成型

ゴルフはV型にモデルチェンジを果たしたものの、ワゴンに関してはまだ当分型のまま継続される。今回の弾丸テストにはその高性能で豪華版のゴルフワゴンGTを引っ張り出してみた。
ゴルフのコンセプトを思い起こすと、外寸はコンパクトなままルーミーな室内を得る、という試みから高さ方向に余裕をもったデザインを採用している。当時はそのボクシーなハッチバックは異端でもあったが、ゴルフは時間と共にこれを主流にしてしまった。
しかしガラス面積の縦寸法が大きいスタイリングはチョロQ的でもあり、上が重い印象も拭えない。そこでキャビン部分をより長くすれば見た目にも安定する。これはまさにワゴンで実証された。ゴルフはワゴンの方がカッコイイと思うのはボクだけだろうか。

メーター類の夜間照明は、ご存知のように鮮やかなブルーとレッド。視認性はきわめて高い。

IV型はAピラーを湾曲させて全体に丸味をもった新世代に入ったが、V型のワゴンを見ていなからなんともいえないけれども、ワゴンはすーっと長いからこそカッコイイ部分もあり、それにはストレートなラインこそ特徴が強調される。このIV型ワゴンのスタイリングは歴代ゴルフの中でも傑作であり、ひとつの理想的完成型として後世に残せるものである。
走り出せばまさにゴルフ、なれ親しんできた世界の標準車という自然な感覚があり、予備知識なしでも昨日まで乗っていたクルマの感覚で操れることに、いまさらながら感心する。まったくの新型車にのるとどこかしら違和感を覚えるものだが、このクルマにはそれがない。モデル末期のクルマはそれなりに改良されており、NG領域の対策はすでに済ませてあるからかもしれない。
サイドミラーが大きくなってまともになったことも嬉しい。面積的に小振りだった初期型は視野範囲が狭く、斜めの合流などでヒャッとしたことなど、もう忘れてしまっていい。

ターボパワーに悪癖なく

今回の行く先は東北。赤や黄色の紅葉を求めて山野を走り回ればGTの動力性能も生かせるはずだ。借用時の満タン具合は不明だし、都内の通過などの渋滞は平均燃費を下げることにもなるので、東北道にのるまえにリセットの意味で給油する。

紅葉を求め、東北に向けて走り出したものの、山々はすでの初冬の趣。ただ弘前城を囲む公園は、まさに紅葉の真っ盛り。きわめて日本的な、美しい風景を堪能した。

朝5時20分に横浜を発ったものの、実はMカメラマンを迎えに行く時に池袋線で東北道に出たのはいいが、加平で下りるには右へ戻らなければいけないところを左にとってしまった。早朝の速い流れの中であれよあれよという間に下り損ない、結局外環状を回って常磐道に迂回した。これが失敗のもとで、三郷の料金所手前から通勤渋滞にはまってしまい加平までノロノロというか、まったく動かない時間もあった。それゆえ8.3km/Lは実用燃費としてもそれほど悪い数字ではなく、高速燃費に期待をつなぐ。
最初の給油は岩手山パーキング。盛岡を過ぎたあたりでポーンという警報音がして黄色いランプが点灯する。燃料タンク容量は55リッターゆえ、500kmを目安にしていたのでそろそろ給油しようと思っていたところだ。結果は10.6km/Lと期待したほど良くはない。ターボパワーをもってすれば、5速の100km/hで2500rpmは回し過ぎだ。もう少しハイギアードな設定でもいいかなと思うが、トップギアによる加速が問題となるドイツではこれで普通なのだろう。

青森港のフェリー埠頭にて。大きな口を開けるフェリーの前にクルマを置いてみると、巨大な昆虫に襲われるようなシーンが出現。

ターボパワーは特に意識されるような悪癖はなく、初期のターボモデルに見られた吹き残りも減少した。インタークーラーとインテークマニホールドを繋ぐゴムパイプは、繊維質のメッシュで巻かれ膨らまないように対策してある。強いてターボの特性を感じるとすれば、加速してそろそろこの辺でシフトアップさせようと右足を緩める頃になっても、加速の勢いは衰えないから、ついついもう少し回してもいいかという気になってしまう点か。
これが右ゲートでマニュアルシフトしている時には、手の方が動くので低い回転帯でも使えるが、このATはDレンジに入れっぱなしでも痛痒はないので、全体を通じてみればエンジンブレーキを使用したい時以外はマニュアルでアップさせる機会は少なかった。

海岸はもう完全に冬景色。冷たい風が強く吹き、波も荒かった。砕け散る波のしぶきが頬にあたって、本当に寒かった。

小坂で東北道を下りる。12250円と高いが611kmで割ればkmあたり20円と割安にはなる。
十和田湖周辺はすでに紅葉の時期を終え、枝に葉はなく冬を待つ時期に入っていた。奥入瀬にも水はすくなく冬の渇水期状態。山の上では期待した紅葉は見られなかったが、里におりるとまだ銀杏などの黄色い樹木も目立った。初日は八甲田山を巡って青森泊まり。
ゴルフの長距離走行での美点はシートの座り心地がいいことだ。ランバーサポートの調整代も大きいし、座面の後傾斜角を始めとして基本的な構成がしっかりしている。したがって腰などの疲れはすくない。初日で850kmも走れればマシな方だろう。

ワゴンGTは遠くに行けば行くほど、そのよさが分かってくる。今回の東北への旅は、紅葉こそ十分に味わえなかったものの、ワゴンGTの実力を改めて知るよい機会となった。ターボの加速のよさはやはり運転をラクにするものであると、再認識した。

素直な旋回能力を発揮

2日目はもう一度八甲田山に登ってみる。昨夕は4時過ぎるとあたりは真っ暗だったが、夜来の雨も上がって高原の朝は冬でも気持ちいい。線画状態のブナ原生林でとりあえず季節感を撮り、そのまま黒石に下りて弘前にでる。
濡れた落ち葉の上でも、後輪荷重の大きいゴルフワゴンは、めったに滑ったりしない。ターボエンジンは冷気で一段とパワー感を強め、登り坂でもトップギアのままグイグイ登っていく。

ダッシュボードの景色もGTIと変わらない。GTというぐらいだから、ナビゲーションは標準にして欲しかったところ。5速のティプトロニックは完成の域に達しているもので、その作動に不満はない。

ちょっと太めと思われる245/45R17タイヤは、乗り心地的にややバネ下を重く感じる場面もあるが、ウエットグリップもまずまず良好で、地元ナンバーの4WDスポーティカーにもそれほど引けをとらない。ドライグリップはタイヤの貢献をより大きく感じる。このゴルフは登場初期にはサスペンション・ジオメトリーを取り違えて、ロール感が爪先立ったものとなり内輪の空転も早かったが、途中でロールセンターと重心高の関係が見直された結果、いまでは問題なく素直な旋回能力を発揮する。そんなこともあったナと思い出してみれば、このIV型ほどいろいろ変更されたモデルはないのではなかろうか。

室内装備は、GTIとほぼ同じレベル。シートもサイドの盛り上がりが強いスポーツシートとなる。足の速さやその荷室の容積、使い勝手のよさも考えれば、まさに理想的なリゾートエクスプレスだ。

このゴルフワゴンはいまや欠点らしき欠点を持たないが、唯一といってもいい不満点は、最近のVW車に共通するブレーキとアクセルを同時に踏むとエンジンが休止してしまう点だ。左足ブレーキの利点をここで説くスペースはないが、まさにコーナー手前で右足はアクセルペダルに乗せたまま、チョンと軽く左足でブレーキを踏むと、エンジンはアクセルペダルに反応しなくなってしまうのだ。これは右足のみのヒール・アンド・トーでも同じことで、ABを同時に踏むことを完全に拒否している。なぜこんな意地悪なことをするのか理解に苦しむ。加速して逃げられないから危険な状況に追い込むだけだと思われる。

お馴染みの1.8リッター・ターボ。デビュー当時は小さな問題がいくつかあったが、それも全部が解決されて、現在は実に気持ちのよいエンジンとなっている。

弘前城はケヤキの葉が落ちて、まさに秋景色、そして紅葉の真っ赤な背景で撮ることもできた。鰺が沢を経て千畳敷でお昼。雨は結局降ったり止んだりで、この時は風も強くよこなぐりの雨。先に昼食をすませる。そこから五能線と並走しながら海岸線を走り、ちょっと寒風山をロケハンしてから2日目は秋田泊。この日の移動は300km弱。
明日に備えて男鹿で給油。471.9km走って9.7km/Lは、高速道をほとんど含まず、山間部や一般道主体の燃費としてはまずまず良好と思われる。
翌朝は晴天。窓から見える空は青い。しかし寒風山の上空には真っ黒な雲が覆っている。ともかく登って山頂で雲の晴れるまで待つ。待った甲斐あってそのうち男鹿半島の先端、入道崎あたりの海岸線が見えてくる。しかし山形方向の鳥海山は見えない。能代方向に見えるはずの白神山地も雲の中に入ったままだ。結局晴れ間待ちの撮影で寒風山には2時間半ほどいたが、温度計での外気は3度〜5度はあったものの、海から吹き抜ける風はつめたくマイナスかと思えたほどだった。

ラゲッジスペースは、上段の通常の状態で460Lで、リアシートをダブルフォールディング式に倒せば、1470Lの大容量を得ることができる。荷室フロアもほぼフラットになり、使い勝手はよい。

山をおりて昼食後、秋田北から秋田自動車道にのる。東北道は山間部を走るルートであり、横風安定性は特に注目すべき特性だが、くだんのロールセンターの改善はここでも効果を発揮、直進中にステアリングに感じる横Gはほとんど皆無だった。また太めのタイヤもこうした微小域の入力に対して、外乱のない頼もしさを発揮してくれる。そして空力重心が後ろにあるワゴンボディももちろん安定性に寄与している。
淡々と帰路をたどり500kmを目処に安積Pで給油する。ここまでの燃費は11.0km/Lと今回の最高値をマーク。やはりそれほど目覚ましい燃費は記録しえなかった。秋田北から浦和までの料金は1万2100円。往路の小坂までの料金とほとんど同じだ。
そして都内の一般道を少し走って横浜までの293kmは10.7km/Lと、テスト開始初期にくらべると確実に上昇傾向にあったから、慣らしが進行すればもう少し向上すると思われる。今回の旅、合計1966.3kmの総平均燃費は10.3km/となった。

225/45R17サイズはややオーバークオリテイで、乗り心地にも悪影響を及ぼすのではないかと心配したが、ワゴンGTは予想外にコイツをちゃんと履きこなしていた。

落ち着いて乗れるクルマ

ゴルフワゴンを総括すると、特別に感激したり、瞠目に値する項目はないけれども、少なくとも不満な点はないし、全体としての好感度は高い。長く付き合うことになる実用ワゴンは、もう変更されることもなさそうな評価の定まった、こうした熟成されたモデル末期の型こそ狙い目であり、次はどう変わるかといった周囲の雑音に惑わされずに、落ちついて乗れるのではないだろうか。

近い将来に登場ののワゴンはもちろん魅力的だろうが、長くつきあうことを前提とする実用ワゴンの選択ということで考えるなら、こののワゴンは狙い目。ゴルフを見て、「のほうがよかったな」なんて思う人には、の新車を手に入れるチャンスはもう残り少なくなっているとお伝えしてきたい。

【specifications】
VOLKSWAGEN GOLF WAGON GT
■全長×全幅×全高=4400×1735×1480mm
■ホイールベース=2515mm
■トレッド(前/後)=1515/1495mm
■車両重量=1410kg
■最小回転半径=5.1m
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=AUM/直4DOHC20V+ターボ
■内径×行程=81.0×86.4mm
■総排気量=1780cc
■圧縮比=9.5
■最高出力=150ps(110kW)/5700rpm
■最大トルク=21.4kg-m(210Nm)/1750-4600rpm
■燃料タンク容量=55L
■10・15モード燃費=10.4km/L
■ミッション形式=5速AT
■変速比=(1)3.801(2)2.131(3)1.364(4)0.935(5)0.685(R)2.970(F)4.445
■サスペンション形式=前ストラット&コイル、後トレーリングアーム&コイル
■ブレーキ=前Vディスク/後ディスク
■タイヤ(ホイール)=225/45R17(7J)
■東京標準現金価格=3,192,000円

 

リポート:笹目二朗/フォト:水野孔男

 

VW GOLF FAN Vol.2から転載
LE VOLANT web編集部

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