
※この記事は2007年6月に発売された「VW GOLF FAN Vol.12」から転載されたものです。
FUN! II GOLF リフレッシュ大作戦
’90 GOLF GLi
前号で報告したように、大阪・堺のペイントプレースKomで全塗装したことで、この’90年式のゴルフGLiはまるで新車のような輝きを取り戻した。が、これですべてが終わったわけではない。今回はその後に実施した、最後の仕上げというべきところをお伝えしよう。
そうして余りある魅力がこのクルマにはある!
長期放置車を起こして、それが安心して使えるようになるまでには、ある程度の期間と走行距離を必要とする――。
これは、最初に車検整備をしてもらったスピニングガレージの田中さんにいわれていたことだ。実際、このGLiは、“快適性を取り戻す”という企画のために向かった関西への途上、ハブベアリングから音を出し始め、結局、堺のスコットで新品に交換する作業を行なってもらっている。
改めて、確かにそうした心構えでなければならないと認識したのは、堺のペイントプレースKomでの全塗装を終えた、意気揚々の帰途。エンジンの回転を上げてしまえばそれほどでもないが、アイドリング時には、エンジンルームからゴロゴロ音がかなり聞こえてくるようになったのだ。
そこで向かったのが、名古屋のスズキワークス。音の出所を鈴木さんに探ってもらうと、それはダイナモのベアリングが原因だった。周期にムラが出たため振動となり、それが増幅され、ゴロゴロ音となっていた。今回もまたベアリングが原因ということは、とりわけ長期放置車の場合、ベアリングの類は遅かれ早かれ交換しなければならない部品と考えたほうがいいよう。いずれにしても、走り始めてしばらくは、なにがあっても驚かない、心の余裕が求められるというわけである。
IIならば、長期放置車であってもまだ楽しめる
ちょっと気になっていたスピーカーのビビリを、町田のスピニングガレージでボッシュマン社製の新品に交換した後は、この赤のGLi、本当にもうなにもいうことはなくなった。当然、日常的に走らせるようになったのだが、そうこうしているうちに再確認したのは、このゴルフIIというクルマのボディサイズのよさ、3速ATも含めた使い勝手のよさだ。
住宅街の入り組んだ狭い道路であっても取り回しに苦労することはなく、まさに古典的といえる3速ATも意外にスムーズなシフトアップで、3速に留まる分、シフトショックを感じる回数も少ない。まさにシティカーというに相応しい特性を示す。
タウンユースでは、いまなおまったく不満のない性能を持つのだ。IIはいま、ライト旧車、ヴィンテージ的に捉えられつつあって、静かなるブームとなりつつあるが、それはこの現代にも通用する実用性あってこそだろうと考えられる。
さて、IIならば、たとえ長期放置車であっても、こうすればまだまだ使えて楽しめるということは理解していただけただろうか。もちろん、少なからずコストもかかって、時に忍耐も要するが、このクルマにはそうして余りある魅力があるように思えるのである。
リポート:小倉正樹/フォト:谷瀬 弘 水野孔男