平屋建て、敷地面積は約54坪。インナーテラスを設けたアイデア満載の家
施主のIさんは、コンクリートの家に憧れていた。家そのものが主張しすぎず、家族をはじめ、クルマや家具、雑貨など、あらゆるものの入れ物とでもいうべき”箱”然としたたたずまい――そんなコンクリートの家を建てたかったという。
しかし、RC造は比較的高くなりがち。予算の観点から、Iさんも一度はあきらめた。ところが、軽い気持ちで相談に行った「一級建築士事務所 瑛月草雨」が狭小とローコストのエキスパートだったのだ。色々と話していくうちに、やり方次第で、自分達の予算でもRCの家はつくれるということがわかったのだった。
【写真6枚】ユニークな間取りのガレージハウス。
そうしてできたI邸。平屋建てとはいえ、敷地面積は約54坪で決して狭小ではない。ガレージはあるし、裏には芝生の庭も設けられた。シャッターの前には、半露天ながらクルマをもう一台止めることもでき、余裕のある外構といえそうだ。
屋内の間取りは個性的だが、ある意味でシンプルだ。中央にインナーテラスがあり、その四面を囲むように4つの部屋がある。この4つの空間には仕切るドアというものがなく、空間自体はつながっているのだが、一方でそれぞれが大きく異なった表情に仕上げられている。
ガレージと4つのシンプルな空間がある家
まず玄関を入ると、そこがリビングダイニングだ。前面接道に面しているので、道行く人の視線をカットしつつも、陽光や外の景色が取り込めるように上部に控えめな窓が設けられた。そして時計回りに角を曲がった先がキッチン。奥様の希望で、ステンレス製のプロ用の厨房設備が選ばれた。ここで料理をする奥様の立ち位置は、いってみれば通路にあたることになる。
その次の角を曲がると寝室。ここは家の裏側にあたる。インナーテラスに向かって大きな開口が開いており、また芝生の裏庭にも面した岩崎邸で最も心地よく、解放的な空間といえるだろう。最後の部屋は”みんなの書斎”だ。この部屋はガレージにも接していて、愛車を眺められるようにと、小窓も設けられている。ここは家族みんなが並んで机に向かい、いつも家族が一緒にいるということを実感する空間になっているのだ。
外観こそシンプルな形だが、その内側の居住空間のデザインには、家族の快適で仲のよい暮らしぶりを熟考したアイデアがつまっている。I邸はそんなガレージハウスであった。