モデルカーズ

一発逆転を狙うも爆死!君は知っているか?「1963年型スチュードベーカー・アバンティ」をAMT製プラモで学ぶ【モデルカーズ】

THE珍車!間に合わなかった救世主

アメリカの独立系メーカーとしてAMCと並び1950年代を生き延びたスチュードベーカーだったが、1960年代に入るとその苦境も段々と深刻なものになってきた。そんな中、1962年4月に同社が発表したのが、斬新なスタイリングのアバンティである。これは、前年に社長に就任したシャーウッド・エグバートの、「より斬新なクルマ造りをしていかなければ生き残れない」という持論のもと、彼のスケッチを元に、レイモンド・ローウィのデザイン事務所がスタイリングを仕上げて生み出されたモデルだ。ちなみにエグバートは1963年に癌のため社長を辞任、6年後に逝去している。

【画像20枚】美しく仕上げられたアバンティの全貌はコチラから!

アバンティの発売は製造上の問題から遅れ、1963年型としてのリリースとなった。その性格としては豪華な4人乗りGTだが、パクストン製スーパーチャージャー付きエンジンを用意し、前輪にアメリカ車初のディスクブレーキを採用するなど、スポーツ性についても本格志向である。シャシーはラーク・コンバーチブルのものを流用、ホイールベースを113インチ(2870mm)から109インチ(2769mm)に縮め、ファイバーグラス製ボディを架装。エンジンは289-cid(4.7L)のみで240hp仕様が標準、スーパーチャージャー付きは290hpとなる。

ウェイブするウェストラインとウェッジシェイプ、セミファストバックなどが特徴の不思議な感覚のスタイリングは大いに注目を集め、アバンティの受注は好調だったが、生産・販売が追いつかなかったのが痛かったようだ。前述のようにそのリリースには色々と不手際があり、例えば1962年のインディ500ペースカーに選ばれたものの、車両の仕上げをそれに間に合わせることが出来ず、代役にラーク・コンバーチブルを立てて凌ぐという有様で、これによりプロモーションの一大好機を逸したと言われている。

こうしてアバンティは思うような販売成績を上げることが出来ず、翌1964年型を最後にわずか2年で生産終了となった。生産台数は1963年型が3834台、1964年型が809台とされている。1964年型ではライトベゼルが四角形に変更されているが、うち約60台は前年と同じ円形のライトベゼルを装着しているなど、明確な区切りがないようだ。エンジンの設定は前年のまま2種類があったが、304.5-cid(5L)のスーパーチャージャー付き(335hp)を搭載した個体が9台生産されている。

独特なスタイルにはやはり根強い人気があったのだろう、1965年からは、商標権やプレス一式などを譲り受けたアバンティ・コーポレーションが全く同じ内容のアバンティⅡの販売を開始したが、その一方で本家スチュードベーカーは1966年に自動車の生産を終了している。アバンティⅡはその後も基本的イメージを受け継ぎつつ生産を続け、シャシーやエンジンに現代的なモディファイを施されたり、4ドアをラインナップしたり、車名をアバンティ単体に戻したり(生産母体の変更に伴う)などの変化がありつつ、2006年まで販売された。

AMTのキットをボックスストックで制作
こうして2年のみで姿を消したスチュードベーカー・オリジナルのアバンティだが、AMTからしっかりとプラモデル化されている。オリジナルは1965年にリリースされたもので(キットNo.2064)、1967年に2ndパッケージとして再販(2364)、1974年の再販は”モダン・クラシック”シリーズであった(T413)。その後は1981年にレズニー版のレジー・ジャクソン・シリーズ(PK4181)、1989年にはディスプレイ台やペン立てのついたプレステージ・シリーズ(6872)で出ている。近いところでは2000年にも再販されたほか(30268)、今年(2022年)夏にも再リリースが予定されている。

ボディはその特異なスタイリングを見事に再現していると言えよう。ルーフ内側中央には、センターピラーを延長したロールケージのようなモールドがある。ボディ剛性を高める構造が再現されているのである。キットの大きな特徴は、左右ドアも開閉可能なこと。1960年代のAMTには、いくつかこのような構成を持ったキットがあった。1957年型フォードや1958年型インパラなどがそれで、メルセデス300SLに至ってはトランクも開閉可能だった。

作例では、その開閉機構をそのまま活かして制作。パーツの精度は上々で、少しの摺り合わせで開閉が可能だった。前輪はステアするようになっていて、これも可動するよう制作。タイロッドの取り付けは、懐かしき焼き止め方式だった。塗装は取り付け後に行ったが支障はない。ただし、ステアの角度が浅いのは残念。ホイールベース、車高、トレッドなどは特に調整せずキットのままだ。

前後バンパーやホイール、ヘッドライトなどのメッキパーツは仕上がりを左右する重要な部分だが、残念ながらバリや傷が目立った。一度メッキを剥がして下地を整えたあと、業者による再メッキ加工を施してある。テールおよびストップランプのハウジングもメッキパーツだが、ボディとの隙間が見苦しく、メッキを剥離して先にボディに取り付け隙間を埋め、最後にメタルックを貼って仕上げた。

ボディカラーはアバンティ・ゴールドと呼ばれるもので、所謂ベージュのメタリック。正確な色調は不明だが、「Collectible Automobile」創刊号に掲載されていたレストア済み車両を参考に調色してみた。クレオスのC8シルバーにアクセルSのイエロー、レッドを加えて基本のベージュメタリックを作り、微量のブラックでトーンを落とす。インテリアも同色で塗ってつや消しコートしてある。エンジンはパイピングやパーツ追加をせずに組み立てたが、ボックスストックでもこの仕上がりになる。

作例制作=畔蒜幸雄/フォト=羽田 洋 modelcars vol.138より再構成のうえ転載

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