エンジン車の価値も巧みに受け継ぐ
本誌主催のEV:LIFEは、東京と神戸で開催している展示提案イベントだ。多くの集客があり、EVに対する関心は確実に高くなっている。ただ、課題はある。急速充電設備を増やすとか、普通充電を集合住宅で可能にするとか。もちろん、電力そのものの安定供給も重要課題だ。
【写真8枚】感動的に快適なのに圧倒的な速さが楽しめるe-tronGTクワトロを写真で見る
一方で、EVは話題に事欠かない。続々と最新モデルが投入され、軽自動車のサクラとekクロスEVは好調な受注実績を重ねている。しかも、欧州のEVは高性能化と走行距離で激戦を展開中だ。
アウディe-tronGTは、まさに激戦真っ只中のモデルだ。前後のモーターはシステム出力530psを発揮し、走行距離はフル充電で534km(WLTCモード)に達する。だが、EVとしての高性能ぶりを強調しないあたりがいかにもアウディらしい。
試乗車はオプションのe-tronスポーツサウンドを装備していたので走行モードがダイナミックなら加速時に電子音が生成される。コンフォートなら電子音は控えめ、エフィシェンシーでは生成されない。ところが、それぞれの違いはわずかだ。ダイナミックの電子音はエンジン音と明らかに異なるが、EVならではの新たな世界観を確立するまでには至っていない。
むしろ、あえてそうしているのだろう。エンジン車に乗り続けてきたとしても、違和感なしに受け入れられるはずだ。それでいて、数値上の性能がそのまま速さとして実感できる。ローンチコントロールを作動させない限り、モーターが瞬時に最大トルクを発揮することが可能でもそれがカタマリで飛び出したりはしない。リアのモーターには2速ミッションが組み合わされるので、過激にならない範囲で鋭い出足と伸びのある加速を両立させている。
EVらしさといえば、静粛性の高さも特長。走行モードがエフィシェンシーなら、モーターは音を発することがない。空力性能を重視するアウディらしく、高速域を含め風切り音は最小限となる。ただ、タイヤが発するビョーッという感じの空洞共鳴音(タイヤ内の空気振動)が気になることもある。
さらに、低重心化により基本性能が向上することもEVならではといえる。だが、体感としてはエンジン車の高性能モデルを走らせているようだ。走行モードがダイナミックなら、ダンパーの減衰力が高めの領域で維持され適度に引き締まった設定となる。ステアリング操作に対する応答性にダイレクト感があり、ボディの姿勢変化が抑え込まれている。
e-tronGTの走りはエンジン車とは異なる。だが、EVの特徴を最大限に活用しているかといえばそうでもない。エンジン車の価値も巧みに受け継いでいる。
【SPECIFICATION】アウディe-tron GTクワトロ
■全長×全幅×全高=4990×1965×1415mm
■ホイールベース=2900mm
■車両重量=2280kg
■モーター最高出力=530ps(390kW)
■モーター最大トルク=640Nm(65.3kg-m)
■トランスミッション=1速固定式
■サスペンション(F:R)=ウイッシュボーン:ウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=ディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/55R19:275/45R19
■車両本体価格(税込)=13,990,000円
■問い合わせ先=アウディジャパン ☎0120-598-106