ボクらのヤングタイマー列伝

ボクらのヤングタイマー列伝:第3回『いすゞ・ジェミニ』 ジウジアーロのデザインが当時のクルマ好きのハートをわしづかみ!

遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという、かつて小社WEBサイトでひっそり!? 連載していた伝説の連載が移転&復活! 当時は『ヤングタイマーもやっと列伝』ということでマニアックにお届けしていましたが、移転に伴い”もやっと”してない『ボクらのヤングタイマー列伝』に進化! 第3回はいすゞジェミニのスポーツモデルをピックアップです。

ボクらのヤングタイマー列伝第2回『ローバー75』の記事はコチラから

コーリン・チャップマンのイニシャル”ACBC”を刻んだエンブレムがクルマ好きのハートをわしづかみ!

世界有数のトラック、バスメーカーであるいすゞがかつて乗用車を作っていたことは、みなさんご存知のとおりです。他の国産車とは雰囲気が異なる車種が多く、今なお多くのファンを持っています。その中に1974年登場の初代ジェミニがあります。初代ジェミニはGMの世界戦略車『Tカー』のひとつで、”西”ドイツのオペル・カデットをメインにシボレー・シェベット、ポンティアック1000など数多くの兄弟車が存在。同様に世界中に点在するGM系企業に合わせて、カデットを下敷きにさまざまな車種を開発しようというプロジェクトから生まれました。いすゞは1971年にGMと資本提携していたため、ジェミニはオペル・カデットそのものと言えるクルマとなったのでした。

そして1985年、ジェミニは2代目へスイッチ。駆動方式もFRから横置きFFへと変わったほか、ボディサイズを縮小しCセグメントに相当する車種となりました。開発がいすゞ独自だったことも初代との大きな違いです。デザインはピアッツァに引き続きジョルジェット・ジウジアーロの手によるもので、ボディタイプは4ドアセダンと3ドアハッチバックが用意されましたが、セダンは同氏デザインのランチア・テーマ、3ドアは同じくピアッツァとの強い類似性を感じさせる飽きのこないクリーンで好ましいデザインとなっていました。当初搭載していたのは新開発の1.5リッターSOHCエンジンのみでしたが、デビュー半年後にはいすゞの伝統ともいえる1.5リッターディーゼル/ディーゼルターボエンジンが追加されています。

そして1986年、1.5リッターガソリンターボを搭載し内外装をオペルのチューンで名を馳せたイルムシャーが手がけた『イルムシャー』、そして1988年にはDOHC16バルブ化した1.6リッターエンジンを積み、かのロータスがサスペンションをチューンした『ZZハンドリング・バイ・ロータス』が登場、これ以降ジェミニは高性能小型車というイメージを一気に加速していきます。どちらもレカロシートやモモ製ステアリングを備え、しかもロータスはブリティッシュレーシンググリーンのボディにコーリン・チャップマンのイニシャル”ACBC”が刻まれたエンブレムが輝き、クルマ好きのハートをこれでもか! とわしづかみにしたのでした。余談ですが高校時代、国語の若い先生がこれに乗っていて、すでに欧州車にぞっこんだった僕たちクルマ好き高校生は、明らかに他の国産車と違うジェミニのアピアランス、そしてロータスの文字にメロメロにやられてしまったことを思い出します。

2代目ジェミニは年を経るに従ってセダンが販売のメインとなり、モータースポーツのベース車だった『イルムシャーR 』やハンドリング・バイ・ロータスの3ドアなどは台数が少ないながらも国産車では数少ないホットハッチの雰囲気もあります。そこで、今回はあえて3ドアをメインに描いてみることにしました!

カー・マガジン458号より転載

この記事を書いた人

遠藤イヅル

1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。

遠藤イヅル

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